2020 Fiscal Year Research-status Report
Research on the manuscripts of "Taiki" from the viewpoint of historical materials studies
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20K00943
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
白根 靖大 中央大学, 文学部, 教授 (80250653)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 台記 / 写本研究 / 保延二年記 / 狩野文庫 / 図書寮文庫 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は『台記』の諸写本を比較検討し、各写本の継承性などを明らかにすることによって、『台記』写本の類型化と系統化を図るものである。一年目の今年度は、諸機関に現存する写本を撮影・複写して収集し、体裁や書式および字句や記述等の異同を精査した。具体的には、『台記』保延二年記について、宮内庁書陵部図書寮文庫・東京大学史料編纂所・東京大学総合図書館・筑波大学附属図書館の各機関より、写真撮影やスキャニングによるカラー写真またはデジタル画像(一部モノクロ画像も含む)を入手し、前述の異同を中心に比較検討を行った。 このうち、宮内庁書陵部図書寮文庫所蔵の広幡本と日野本は、字配りや字句・記述の異同などから、東北大学附属図書館狩野文庫所蔵の保延二年記と同じ類型とみなすことができる。また、東京大学史料編纂所所蔵の徳大寺本は、引用史料の字句・記述の異同から狩野本・広幡本・日野本との親近性を看取できる。一方、筑波大学附属図書館所蔵本と東京大学総合図書館所蔵本の中で、類似性・共通性のあるものを見出したほか、筑波大学附属図書館所蔵本の一つが国立公文書館内閣文庫所蔵本の一つ(坊城本)を継承していることを確認できた。 現存する『台記』保延二年記の諸写本は、宮内庁書陵部図書寮文庫所蔵の伏見宮本を祖本とし、それを転写した国立公文書館内閣文庫所蔵の賀茂清茂書写本から派生した。派生した諸写本については、賀茂清茂書写本→万里小路本→坊城本→八条本という系統が指摘されているのに対し、類似する写本が見つかっていなかった狩野本は類型化・系統化が難しい状況にあった。既述の成果はそうした状況に展望を開く意義を有するものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルス感染症蔓延の影響で、史料所蔵機関における閲覧調査が困難な状況が続いたため、写真またはデジタル画像で入手した写本を精査するにとどまった。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウイルス感染症蔓延の影響が続く場合、他の史料所蔵機関に現存する諸写本についても、保延二年記の画像を写真またはデジタル画像で入手して精査を進める。感染状況の好転により史料所蔵機関における閲覧調査が可能となったら、各機関を訪れて現物を直接閲覧し精査を行う。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症蔓延の影響で、史料所蔵機関における閲覧調査が困難な状況が続いたため、旅費の執行ができなかった。次年度、史料所蔵機関における閲覧調査が可能となったら、旅費として使用する予定である。
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