2021 Fiscal Year Research-status Report
古代~中世荘園史の再構築―土地証文の継承と荘園形成の実態解明―
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20K00959
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
鎌倉 佐保 東京都立大学, 人文科学研究科, 教授 (60468824)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 荘園 / 開発領主 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は昨年度に引き続き(1)土地証文・荘園関係文書の作成・継承の実態解明のための文書目録等の収集、(2)「開発領主」関係史料の分析と「開発領主」の実態解明のための史料の収集をおこない、さらに(3)収集した史料の分析をおこなった。 (1)については、昨年度収集をおこなった平安末~鎌倉期に作成された荘園文書目録・注文類について、さらに調査・収集をおこない、データベースを充実させた。 (2)については、昨年度に引き続き①平安期の荘官が所持した文書の調査・確認と分析、②「開発領主」文言のある史料の収集と分析、③「開発領主」の由緒を語る相承系図の調査・収集と分析をおこなった。 さらに(3)上記史料の分析を含め、史料上の「開発領主」と研究概念としての“開発領主”、そして開発領主の実態について、史料の整理と分析をおこなった。開発領主および開発領主相承系図については、肥後国鹿子木荘、若狭国前河荘、若狭国馬背・竹浪浦、近江国柏原荘、播磨国矢野荘別名下司海老名氏、肥後国詫摩氏、日向国野辺氏、周防国八代荘公文、などの事例について分析を進めた。 これら「開発領主」の具体像、「開発領主」の由緒について分析を行った結果、史料上の「開発領主」用語は、いずれも鎌倉後期以降の裁判で自らの所領知行の正当性を示すために使用された訴訟用語であること、そこで語られた由緒は11~12世紀段階の「開発」の実態を表すものではないことを明らかにし、「開発領主」という用語によって11~12世紀段階の開発者の実態や、荘園形成を説明づけることはできないことを明らかにした。あわせて高等学校日本史教科書の“開発領主”概念の説明と、荘園に関する記述の変遷について明らかにし、問題点と課題を明確にした。以上の成果の一部は、2021年11月21日学芸大学史学会大会にて発表した(「「開発領主」と荘園の形成―荘園をどう教えるか―」)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
史料の原本調査および現地調査について、予定していた時期にCOVID-19 の感染が拡大したことで中止せざるを得ず、調査を実施できなかった。史料調査については、刊本および写真帳にておこなったが、原本調査が必要なものについては、進められなかったため、遅れが生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
調査については、感染防止の対策をとって可能な限り実施する予定だが、史料原本調査・現地調査が十分実施できない場合も、史料分析を中心に研究を進める。
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Causes of Carryover |
COVID-19感染拡大により史料原本調査・現地調査が実施できなかったため。次年度に調査を実施する予定である。
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Research Products
(1 results)