2021 Fiscal Year Research-status Report
山口県域の銅生産・銅銭鋳造関係古代出土文字資料を用いた政治・社会的地域特質の解明
Project/Area Number |
20K00960
|
Research Institution | Kyoto Prefectural University |
Principal Investigator |
竹内 亮 京都府立大学, 文学部, 特任准教授 (10403320)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山本 崇 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 都城発掘調査部, 室長 (00359449)
黒羽 亮太 山口大学, 人文学部, 講師 (90867392)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 木簡 / 長登銅山跡 / 長門鋳銭司跡 / 周防鋳銭司跡 / 赤外線 / 出土史料 / 出土銭貨 / 官営工房 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の第2年目に当たる令和3年度は、美祢市・山口市等における現地調査を伴う研究を実施した。美祢市では、美祢市文化財保護課のご協力により、長登銅山文化交流館・長登銅山跡整理室における長登銅山跡出土木簡の現物調査を実施した。長登銅山跡ではこれまでに800点以上の木簡が出土しており、そのうち300点近くについては保存処理が完了しているが、その他の木簡は水漬けのまま保管されている。本年度は、保存処理済木簡とともに水漬木簡の調査を実施し、木簡の状態や墨書の残存状況などについて観察を行った。また、山口県埋蔵文化財センターの発掘調査により古代の銅製錬工房跡が良好な状態で出土した於福金山遺跡の発掘調査現場を見学した。山口市では、山口市教育委員会と山口大学の共催によるシンポジウム「古代テクノポリス山口の実像」に参加し、周防鋳銭司跡、長門鋳銭所跡、長登銅山跡など山口県域における古代銅生産・銅銭鋳造関係遺跡の発掘調査に関する最新成果の一端を学んだ。また、山口市文化財保護課が開催した鋳銭司郷土館企画展「周防鋳銭司と古代の鋳銭」を見学し、周防鋳銭司跡ほかの発掘調査により出土した遺物等を観察した。本研究に関わる本年度の研究成果としては、九世紀の史料に記された年間鋳銭額に関する通説に再検討を迫った「鋳銭額からみた周防鋳銭司の展開」、出土文字資料集成の精度高次化および効果的作成手法開発を課題として作成した『奈良県出土墨書刻書土器・文字瓦集成』、延暦年間から貞観年間頃までの貨幣鋳造機関の変遷を概観した「八~九世紀の貨幣鋳造機関」などがある。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、新型コロナウィルス感染拡大に伴う緊急事態宣言等の予期しない事態により、山口県域への出張調査が思うように実施できなかった。また、長登銅山跡出土木簡については、今年度調査での観察によるとかなり時間をかけて丁寧に現物調査を実施していく必要があると感じられた。今後は、調査計画や本研究の目標も含めて全般的に再検討し、研究計画の練り直しを図りたい。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究では、山口県域の銅生産・銅銭鋳造関係遺跡から出土した木簡の調査成果にもとづいて史料集成を作成し、古代の周防・長門両国における政治・社会的地域特質を解明するという目標を立てていた。これらの遺跡の中でも特に多数の木簡が出土した長登銅山跡については、本研究の採択期間内に木簡全点調査を完了させて成果を完成させるのが難しい見通しになりつつある。今後は、調査にご協力いただいている木簡所蔵機関の美祢市文化財保護課とも協議した上で、木簡調査の目標設定について再検討していきたい。
|
Causes of Carryover |
本年度は、新型コロナウィルス感染拡大に伴う緊急事態宣言等の予期しない事態により出張が思うように実施できなかった。次年度以降、感染状況が落ち着けば、山口県域への調査出張旅費として次年度使用額を使いたい。また、本研究の目標の一つとして計画している史料集成の発行や発送にかかる費用が相当の額になると見込まれるため、次年度使用額はそれらの用途にも充当したい。
|