2023 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20K00967
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Research Institution | Bukkyo University |
Principal Investigator |
麓 慎一 佛教大学, 歴史学部, 教授 (30261259)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 樺太 / 沖縄 / アヘン戦争 / ウルルン島 / ロシア / イギリス / 千島列島 |
Outline of Annual Research Achievements |
主要な研究実績としては 東シベリア総督コルサコフの「サハリン島の支配に関する活動と現在の概況」を考察したことである。この考察によってサハリン島の国境および領海(海洋秩序)の問題とアイヌの統治問題が分かち難く結びついていたことを解明できた。この考察は2024年度の『佛教大学歴史学部論集』に投稿予定である。 これを踏まえて三つの点を明らかにできた。第一は、日本の国境と領海(海洋秩序)の再編における多様な国家の関与である。第二は、多様な国家による国境と領海(海洋秩序)の再編が相互に参照されていたことである。第三は、世界史的な対立および東アジアの国際関係の変容と日本の国境や領海(海洋秩序)の再編との関係である。 第一では次の点が重要である。琉球国は、天保15年以降にフランス船やイギリス船の来航によってその国境と領海(海洋秩序)を明確にすることが求められた。琉球国は、フランス船などの来航がアヘン戦争による清国の弱体化によるもの、と捉えており、国境と領海(海洋秩序)の再編が欧米列強と中国の対立によって惹起されていたことを理解していた。 第二では次の点が重要である。「竹島」(ウルルン島)の放棄は、近世後期における領土と領海(海洋秩序)の放棄の先例として認識され、千島列島のウルップ島の放棄を正当化する論拠になっていた。また、樺太の国境の問題においても「竹島」(ウルルン島)の放棄の事例が参照されていた。このように領土と領海(海洋秩序)の放棄は、多様な国家との領土と領海(海洋秩序)をめぐるそれを参照しながら行われていた。 第三では次の点が重要である。日本における領土と領海(海洋秩序)の画定を規定していたのは、基本的には英露対立という世界史的な対立と露清関係の変容という東アジアの国際関係の変容であったが、両者の結節点に日本が位置していたことである。 以上の三点が研究実績である。
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Research Products
(1 results)