2023 Fiscal Year Annual Research Report
芸娼妓紹介業と娼妓・芸妓の性と生についての実証的研究
Project/Area Number |
20K00970
|
Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
人見 佐知子 近畿大学, 文芸学部, 准教授 (00457029)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 公娼制度 / 娼妓 / 芸妓 / 性売買 / 周旋業者 / 貸座敷 / 遊廓 |
Outline of Annual Research Achievements |
2023年度は、前年度に引きつづき近代日本の公娼制度についての一次史料の収集と分析をすすめ、成果の一部を活字化するとともに学会・研究会等で発表した。 (1)周旋業者(芸娼妓紹介人)の経営実態について、前年度学会で報告した内容をもとに、論文として発表した。具体的には、金沢市の周旋業者が作成した「芸娼妓紹介簿」をもちいて、被紹介女性の属性、紹介先との関係、共同紹介人を手がかりとした周旋方法を検討するとともに、周旋業者にあてた女性の手紙から周旋業者と娼妓・芸妓の関係について考察を加えることで、近代日本の公娼制度下の性買売管理・支配の特徴について言及した。また、周旋業者が利益をあげる仕組みについても周旋業者の帳簿をもちいて検討し、周旋業者が被紹介女性に金銭を貸し付けて利子収入を得ていたこと、また金銭貸付がさらなる身売りや住み替えにつながっていたこと、金銭貸付を介して周旋業者が家族の生活に深く介入し、そのため女性が自分の意思で周旋業者との関係を断ち切ることを困難にしていたことなどを明らかにした。 (2)貸座敷業者が作成した史料から、1920年代の待遇改善や公娼制度改革の内実を検討する学会報告をおこなった。本報告では、とくに貸座敷業者の収益構造に注目することで、前借金精算の実態から待遇改善や公娼制度改革の歴史的意味を検討した前稿をさらに掘り下げることを目指した。 (3)地方行財政における性買売依存の実態について、石川県および金沢市を事例に検討した。 期間全体を通じて、一次史料から近代日本の公娼制度下の性買売の歴史的実態を明らかにするという課題を着実に進展させることができた。
|
Research Products
(5 results)