2023 Fiscal Year Research-status Report
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20K00973
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Research Institution | Kyushu Sangyo University |
Principal Investigator |
末松 剛 九州産業大学, 地域共創学部, 教授 (20336077)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 即位式 / 絵図 / 儀式書 / 高御座 |
Outline of Annual Research Achievements |
即位式絵図および即位式に関する文献に基づいた論考として、2022年に同志社大学人文科学研究所主催公開講演会のブックレットに「即位式絵図にみる宮廷儀礼の世界」と題する報告をしている。2021年、2022年にそれぞれ共著所収の論考として「即位式における高御座登壇の再検討」「平安時代の即位式における外弁公卿について」を発表してきた。これらはいずれも、参列者の装束に着目し、それらを有職故実とくに服飾故実の視点から分析することで、即位式の現場と歴史的変遷を政治史の展開と絡めつつ読解した内容である。 そして本年度は、後述のように一年を通じて実りある史料調査を行うことのできた年であったが、学会発表・論考においても、9月に「即位式絵図をめぐる諸問題―紫宸殿上の後見をめぐって―」と題する口頭報告を同志社大学の研究会で行い、12月には学術雑誌に依頼原稿として論考「宮廷儀礼史における藤原道長-即位式における高御座登壇をめぐって-」を発表することができた。これらはいずれも平安時代の即位式に関する研究論文である。 近世即位式の絵図読解のためには、文献も合わせて理解しておかねばならず、前近代を通じて即位式の動向を文献を通じて抑えることになる。その実績をふまえ、あらためて平安期の記事をみつめることで得られた読解を、本科研課題の期間を通じて論じることができている。 なお3月には日本史研究会例会「藤原頼通政権を考える」に報告者の一人として登壇し「宮廷儀礼史における藤原頼通」と題する報告を行っている。その内容は『日本史研究』特集号として刊行される予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年8月から10月末にかけて、勤務先で国内研修の機会を得、研修課題を本科研課題としたことで、東京を中心に各史料所蔵機関(国立公文書館、宮内庁書陵部、尊経閣文庫など)において継続して調査を行うことができた。とくに研修先である東京大学史料編纂所に在籍したことで、東京大学総合図書館など、学内の史料を直接調査できたことは、大きな収穫であった。 また、国文学研究資料館のデータベースを活用して、『国書総目録』以外に即位式絵図や関係文献を所蔵する機関を知ることができた。盛岡、津、和歌山というこれまで把握していなかった史料の所在を確認し、研修期間のため速やかに調査できた点も、大きな収穫である。 調査は主に、許可されれば自前のデジタルカメラで撮影し、そうでない場合はデータの頒布を受けたり、史料の特徴を筆記したりして対応した。 大まかな傾向はつかめているので、これらをどのように報告書にまとめるか、とくに挿図として掲載可能なものを選択し、所蔵機関とも相談の上、実りある報告書に仕上げることが、最終年度の課題である。コロナ禍で出張もままならない1年目からスタートしたが、本格的に年間を通じて調査ができた1年であった。
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Strategy for Future Research Activity |
複数の研究機関・史料所蔵機関で調査を行い、近世即位式絵図に関する知見を得ることができた。わずかであるが購入する形で入手した史料もある。それらを体系的に整理して、江戸時代の即位式の変遷とリンクさせながら、即位式絵図の動向を史料学的研究として報告書にまとめることが、一年延長した最終年度の課題である。 コロナ禍のため調査に出向くこともできないスタートからであったが、直近の2年間で得られた知見を中心に、学術成果としてとりまとめたい。所蔵機関との調整を要するが、図版を多用した読解を、論述できればと考えている。そのことによって絵図の歴史史料としての魅力、記録資料としての有用性を示すことが、史料学的研究としての課題であると考えている。
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Causes of Carryover |
本課題は1年目からコロナ禍に見舞われ、出張調査もままならないところからのスタートであった。3年目にいくらか有益な調査を行うことができ、研究成果として口頭報告や論考を執筆することができた。そして4年目に勤務先の国内研究と課題を重ねることで、初めて一年を通じて調査活動を行うことができ、また全国的に活動範囲を広げることもできた。 そこで最終年度を一年延長し、残りの調査もさることながら、図版を多用した報告書の作成に注力したい。図版掲載にあたっては複数の史料所蔵機関とのやりとりが、調査とは別に必要となることから、延長期間をとって取り組むことにした。
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Research Products
(3 results)