2022 Fiscal Year Research-status Report
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20K00978
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
高橋 美貴 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (90282970)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 大介 東北大学, 災害科学国際研究所, 准教授 (50374872)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 流域史 / 鉄・砂鉄 / 土砂 / 森林 / 河川 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は、主に次の3つの研究活動を行った。 1.2022年度は前年度に引き続き新型コロナウイルス感染拡大の影響を考慮し、当初予定していた仙台藩領における史料整理・撮影は見合わせたものの、9月15-18日に仙台および岩手県一関市において、研究分担者・佐藤大介氏、連携して調査を進めているジョン・ダミコ氏(イェール大学大学院生)らと、巡見・見学・資料閲覧・打ち合わせを実施した。とくに一関市大東町の砂鉄川たたら製鉄学習館で実施された「たたら製鉄」の実演・展示の見学では、伝統的な製鉄技法を目の前で体感し、関係者から話を聞く機会を得、研究のイメージ作りのために大きな糧となった。また、このときの巡見・見学を踏まえ、11月5日には佐藤大介氏のほか調査地となっている一関市大東町芦東山記念館学芸員・張基純氏と、今後の史料調査方針についてオンラインで相談を行った。 2.年間を通して、近世の分析対象地域で大肝入を務めた岩手県一関市大原町『鳥畑家文書』の分析を行った。また、佐藤大介氏は、同市藤沢町の商家であった皆川家の日記の翻刻史料として、佐藤大介・青葉山古文書の会編『丸吉皆川家日誌 幕末維新編』(東北大学災害科学国際研究所、2023年3月)を刊行した。 3.研究論文としては、佐藤大介「被災史料・被災地と向き合い続けて考えたこと‐宮城での活動の経験から‐」(『日本歴史学協会会報』37、2022年6月)を得た。また、高橋美貴・佐藤大介「近世東北における土砂流出・堆積問題と流域‐近世後期の仙台藩領を事例として‐」を『日本史研究』に投稿し掲載が決定した(掲載号未定)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初計画では仙台藩領における史料整理・収集を進めることを予定していたが、2020-21年度にかけての新型コロナウイルス感染拡大の影響による移動などの自粛のため、調査フィールでの概要調査や個人宅への訪問、密な状態での史料撮影などを伴う調査、対面でのミーティングなどを控えたため、進捗に遅れが生じた。 そのかわりに、この間、すでに入手していた史料データの分析を進めてもおり、2022年度は高橋美貴・佐藤大介「近世東北における土砂流出・堆積問題と流域‐近世後期の仙台藩領を事例として‐」を『日本史研究』に投稿し掲載が決定した(掲載号未定)。また、佐藤大介氏は「被災史料・被災地と向き合い続けて考えたこと‐宮城での活動の経験から‐」(『日本歴史学協会会報』37、2022年6月)を発表するとともに、佐藤大介・青葉山古文書の会編『丸吉皆川家日誌 幕末維新編』(東北大学災害科学国際研究所、2023年3月)を刊行した。したがって、新型コロナウイルスの影響で史料撮影を含む調査には「やや遅れ」が残るものの(進捗状況の区分を「やや遅れている」とはしたのはこのためである)、研究成果の公表では相応の成果を得たといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究は、主に次の2点を意識して進めたい。 第一に、研究代表者・分担者連名論文の掲載が決定したことから、分析対象地域を事例とした連名論文をさらにもう1本執筆することを期し、研究発表と投稿を目指したい。本科研の元々の主な作業計画は、分析対象地域における近世史料の概要調査・発掘と写真データの収集に置いていたが、新型コロナウイルスの影響によってそれらの作業に遅れが生じていること、また今夏に第9波の発生を予想する向きもあるなど予断を許さない状況であることを踏まえ、研究成果の公表を目指した作業を優先的に進め、本科研申請期間中に成果を積み増すことを目指したい。なお、報告については、2024年3月には京都大学人文科学研究所(「生きる営みと環境問題班」)で本科研に関わる研究成果の報告を予定している。 第二に、科研最終年度となり、研究期間終了を睨むと、新たな史料群の発掘や調査に着手することに危険性を感じ始めてもいる。本科研期間終了に伴い調査を途中で放棄することになれば、無責任となりかねないためである。そこで、調査対象地域における史料の所在・概要調査や情報収集(具体的には、本科研研究フィールドで史料収集拠点となっている芦東山記念館での情報収集など)を進めつつ、研究期間内で終了しうることが見込まれる史料群があればその撮影を進めることにしたい。また、一関市博物館に所蔵されている『鳥畑家文書』の撮影漏れ分や未撮影分のフォローも検討したい。
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Causes of Carryover |
2020-2021年度の新型コロナウイルス感染拡大に伴い、都県間をめぐる移動や集団での調査を自粛したことより、当初予定していた移動を伴う調査・移動をとりやめ、すでに入手していた史料データや刊行資料の分析に基づく研究論文・報告書の作成やオンラインによるミーティングに計画を変更したことによるものである。2022年度は、9月15-18日に仙台および岩手県一関市において、密を避けつつ巡見・見学・資料閲覧・打ち合わせを実施できたが、調査フィールでの個人宅への訪問や密な状態での史料撮影などを伴う調査は避けた。2023年度は、今夏に第9波の発生を予想する向きもあるなどいまだ予断を許さない状況であることを踏まえ、論文の執筆・投稿などによる成果の積み増しを優先して進めたい。とともに、第9波の発生如何と本科研期間の終了を睨みながら、調査対象地域における史料の所在・概要調査や情報収集(具体的には、本科研研究フィールドである史料収集拠点となっている芦東山記念館での情報収集など)を進めつつ、研究期間内で終了しうることが見込まれる史料群があればその撮影を進めることにしたい。
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Research Products
(2 results)