2021 Fiscal Year Research-status Report
「独立」ビルマの民衆と日本軍:切り崩される占領体制
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20K00979
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Research Institution | Kyoto University of Education |
Principal Investigator |
武島 良成 京都教育大学, 教育学部, 准教授 (30379060)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ビルマ / 太平洋戦争 / 日本軍 / バモオ / タキン党 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、4年計画の2年目として、引き続き日本占領期のビルマに関わる史資料の収集に努め、ネイティブのチェックを受けながら読解を進め、論文も積極的に執筆した。史資料の収集については、コロナ禍および政治的混乱のため、ミャンマーに行くことはできず、日本国内で行うことになった。読解については、特にバモオ政府の当時の広報紙(『バマ・キッ』)を読み進め、1943~1944年初期の情勢の理解を深めた。 論文については、『日本占領期ビルマにおけるタキン・トゥンオウッ、タキン・バセインの闘争』(『東南アジア 歴史と文化』50)、「泰緬鉄道へのビルマ人建設奉仕隊(レッヨン・タッ)の動員」(『京都教育大学紀要』140)を発表した、さらに、「バモオ政府(ビルマ)の仏舎利寄遷(1944年)」(『歴史の理論と教育』156)、「太平洋戦争と東南アジア占領」(『日本史研究』718)が印刷中であり、「バモオ小伝」(『グレーゾーンと帝国』(仮題))の原稿が最終チェック中である。 本研究では、東南アジアを占領した日本軍が、現地側の強い抵抗の前に、妥協を重ねたという視点を重視している。本年度は、1943年8月のビルマ「独立」後の、大東亜会議の頃のバモオと日本の攻防について特に深められた。バモオが「大東亜共同宣言」を宣伝で終わらせないために各国代表からなる委員会の設置を提唱したことや、東条首相がバモオの抗議を受けてビルマ方面軍を叱責したことなどが大きな発見である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
1年目に続いて論文を2本発表することができた。のみならず、3本が印刷中もしくは掲載が決定している。それに続く研究についても、多くの着想を得ており、順次論文にする予定である(大東亜会議でのバモオ、バモオ一族の政治動員、シャン連合州の割譲をめぐる駆け引きなど)。ミャンマーでの資料調査はできなかったが、全体として計画以上に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
コロナ禍に加え、ミャンマーで軍事クーデターが起こり、同地への渡航は難しくなっている。そのため、日本国内での史資料の収集や、入手した史料の読解に力を入れることになる。史料の読解は、バモオ政府の広報紙(『バマ・キッ』)やミャンマー国立公文書局の行政文書の読み込みに重点を置く。
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Causes of Carryover |
コロナ禍と軍事クーデターによりミャンマーでの史料調査ができず、代わりに日本での資料収集と読解に力を入れた。それでもなお若干の余りが出たので、その分を国内での史料調査などに充てる予定である。今年度はビルマ語資料の読解チェックについて、振り込みに時間がかかることもあり別の資金でネイティブに依頼したが、次年度は本事業で行うことも考慮している。
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