2022 Fiscal Year Annual Research Report
日本中世の地域秩序および地域政治史の展開に関する研究-播磨国を中心に-
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20K00981
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
市澤 哲 神戸大学, 人文学研究科, 教授 (30251862)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 日本史 / 日本中世史 / 地域史 |
Outline of Annual Research Achievements |
中世成立期に地域社会を支えた主体、及びその関係性を概念化した「国内名士」を導きの糸として、播磨国を素材に14世紀の地域政治史の担い手となるアクターの様態を検討した。本研究の成果は、以下の2点にまとめられる。 ①広域のアクターが結合して起こす悪党事件のメカニズムについて、大部荘、平野荘の悪党事件をもとに検討した。その結果、所務を預かる代官が悪党化するパターンに注目し、彼らが所務をめぐって百姓、荘園領主と対立した際、所務代官であるがゆえに交通を介して築き得た他地域アクターと結合して、悪党行為を引き起こす過程が明らかになった。そして、当時東大寺は地頭が悪党を地頭代として登用したことを非難したが、実態は所務を預かるが故に地頭代は悪党化したと逆に考えるべきという見通しを得た。さらに、広域の勢力が糾合されることを特徴とする悪党事件が消滅していく背景には、所務を預かる代官に替わって荘園外の有徳人たちが台頭し、かつて代官を務めていたアクターたちが広域の人間関係の構築する機会を奪われていくという背景が想定できるのではないかという仮説を得た。 ②播磨国守護赤松氏の諸家の構成と赤松氏被官となった播磨国国人の関係について、その展開を播磨国に大きな影響をもたらした政治的事件(嘉吉の乱、赤松大河内家と山名氏の対抗、山名氏の播磨領国化、赤松氏の復権の前提となる長禄の神璽奪還)を通じて検討した。作業はまだ進行中であるが、中世後期に守護家の内部で重きをなしていく被官の軌跡を、播磨国、中央政局の都鄙にわたって、嘉吉の乱以前からうっすらではあるが見通すことができつつある。早期にレポートとして公表できるようさらに作業を進めたい。 総じて、事例発掘的な研究となったが、所務の遂行がつくり出す関係など、14世紀の地域政治史を考える際に留意すべき点をいくつか提示できたと考える。
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