2021 Fiscal Year Research-status Report
地域における神話的古代出雲像形成とその歴史的性格の研究
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20K00982
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
大日方 克己 島根大学, 学術研究院人文社会科学系, 教授 (80221860)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 国引 / ヤマタノオロチ / 内山真龍 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度も新型コロナ感染症の影響で、県外への調査出張がほとんどできなかった。そのため2020年度に引き続き文献史資料調査と、島根県内の神話由来地踏査を進めた。とくに①「国引詞章」と②斐伊川ヤマタノオロチ言説の資料収集と分析、現地踏査を重点におこない、あわせて③『出雲風土記解』形成過程を明らかにするために、内山真龍一行の出雲旅行の詳細な分析を進めた。 ①については、近代、日露戦争~昭和戦前期において古事記神話と「国引詞章」をあわせた「日本神話」の再構成が進められ、韓国併合以降の日本の対外的膨張と重ね合わせて、「出雲」の国引が、国引による「日本」の拡大へと再話され、小学校の国定国語教科書を通じて教え込まれていく過程を明らかにし、「近代教科書と再話される「国引神話」」(研究ノート)として公表した。あわせてそのなかで、昭和戦前期において島根県内で編纂された、いくつかの小学校の郷土読本では、地域の神話由来地も説明し、学校教育の中で神話的古代像と地域空間が教えこまれることが期待されていたことも指摘した。 ②については、神話比定地の現地踏査とともに、①と同様に近代における言説展開の資料収集も進めた。これらの神話由来地の形成は、中世後期16世紀前半の『天淵八岐叉大蛇記』『雲州樋河上天淵記』まで遡ることは確実であり、中世のスサノオ、ヤマチノオロチ神話と密接にかかわっていたことは明らかである。その具体的な分析を進めていく必要性を改めて確認した。 ③については、一行の一人山下政嗣の旅日記『筑紫日記』(未翻刻史料)の翻刻を行うとともに、真龍自身の『出雲日記』、高林方朗の『弥久毛乃道草』とあわせて、調査旅行の全貌を明らかにする作業を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
新型コロナ感染症による行動制限のため、県外出張ができなかったこと、および、研究課題を遂行するために多くのことをしなければならないことが明らかになってきたため、当初の予定のむなかから①「国引神話」②「ヤマタノオロチ神話」神話空間と、③内山真龍の『出雲風土記解』を基軸に、風土記由来地の調査と比定の過程の解明に重点を絞る修正を行っているため、当初の計画全体に対する進捗状況としては遅れていると判断した。ただし、軌道修正したなかでは、おおむね順調という判断も可能である。
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Strategy for Future Research Activity |
研究実績の概要、進捗状況で示した①~③を重点に進め、それぞれの神話言説の展開とその現地比定がどのように進められていったのを明らかにし、研究課題の達成をめざしたい。
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Causes of Carryover |
前年度に引き続き、新型コロナ感染症の拡大による移動制限のため出張ができなくなり、当初計画されていた旅費の支出がなくなったことが、最大の理由である。今年度は、移動制限も緩和されてきているため、調査出張旅費、資料収集費に使用する計画である。
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Research Products
(1 results)