2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
20K00995
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Research Institution | National Museum of Japanese History |
Principal Investigator |
仁藤 敦史 国立歴史民俗博物館, 大学共同利用機関等の部局等, 教授 (30218234)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 古代荘園 / 額田寺 / 栄山寺 / 倉印 / 国印 |
Outline of Annual Research Achievements |
第2年度は,新型コロナ蔓延による移動の制約が緩和された時期に、10月24~26日と12月25~27日の2回のフィールドワークを実施することができた。それ以外についても,概ね当初の計画どおりに計画を進めることができた。 まず研究史整理は,額安寺領および栄山寺関係の先行研究論文のリスト化を前提に,主要なものを集成した。さらに、内容の検討もおこない、重要な論点の整理をおこなった。その成果の一部は、歴博共同研究の研究会において発表をおこなった。額田寺伽藍並条里図の非破壊分析と麻布の科学的分析については,8月16日・17日および2月22日・3月1日に歴博島津美子氏らの協力を得て,電子顕微鏡による非破壊調査を実施した。西岡虎之助氏による模写ですでに確認されていた56個所以外に、さらに多くの影印の痕跡が残されていることを確認し、具体的な押印個所の正確な位置を計測した。特に絵図左端については、明確に端辺を超えて国印が捺されていることも確認され,布の切断面の検討を加味するならば、本来はさらに大きな図面、あるいは文書的な形式であった可能性も指摘できた。 条里坪付け情報については,坪単位の開発情報の集成を完了し,条里ごとの経年的変化の検討をおこなった。寺領認定の周辺への拡大傾向を把握することができ、とりわけ藤原武智麻呂の墓域内(東西十五町・南北十五町)が、その後の栄山寺領において重要な経営拠点となっており、国司に対する認定の重要な根拠として用いられた可能性が指摘できた。 歴博共同研究と合同のフィールドワークおよびZOOM会議において、古代・中世研究者から多くの助言を受けた。来年度は、吉野川南岸の河南条里についても検討を深化させたい。研究成果としては中公新書『藤原仲麻呂』中央公論新社、二〇二一年において、藤原仲麻呂と栄山寺との関係を考察した。研究協力者として服部一隆・中島皓輝氏をお願いした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
第二年度の実績は、初年度に予定していたフィールドワークを二回実施することができ、寺領文書と現地の景観をつぶさに確認することができた。さらに、現地地図やグーグルアースだけでなく、地理情報ソフトによる情報の集積も開始することができた。これらにより、藤原武智麻呂の墓域と文書に記載された寺領との対応関係について見通しを得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
フィールドワークについては、新型コロナの状況が落ち着いている時期に実施し、栄山寺領とりわけ河南条里の形成過程について考察を深めたい。また染織についての専門家を研究協力者として招き、額田寺図の作成過程についての知見を深める。国立歴史民俗博物館の館蔵資料型共同研究とも連携し、中世史研究者による知見を得る。栄山寺開発状況の見通しを得る。
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Causes of Carryover |
初年度に現地調査ができなかった分の旅費。フィールドワークの旅費に使用する予定。
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Research Products
(4 results)
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[Book] 藤原仲麻呂2021
Author(s)
仁藤敦史
Total Pages
256
Publisher
中央公論新社
ISBN
978-4-12-102648-4