2021 Fiscal Year Research-status Report
Reconstruction of the History of Japan's Opening: Analysis of International Rivalries over the "Frame" of Opening
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20K00996
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Research Institution | National Museum of Japanese History |
Principal Investigator |
福岡 万里子 国立歴史民俗博物館, 大学共同利用機関等の部局等, 准教授 (50740651)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 通商条約 / ジョン・バウリング / タウンゼント・ハリス / 19世紀 / 貿易と外交 / 主権の所在 / 日本認識 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は主に、研究課題に関する論文1本をほぼ完成させるとともに(①)、次にまとめるべき論文1本について、史料調査を行った上で、研究会において論文構想報告を行った(②)。 ①の論文は、昨年度、『国立歴史民俗博物館研究報告』特集号「近世近代転換期東アジアの外交と通商-海域世界の秩序変動(仮)」の一論文として投稿した「米使ハリスの1856年対シャム条約交渉-バウリングの経験との比較から」である。これについて、2名の研究者の査読意見を受け、特に19世紀前半における英国や米国のアジア貿易の環境変化について追加的な文献調査の上で大幅な加筆を行い、表題を「バウリングとの比較からみるハリスの対シャム条約交渉-19世紀前半アジアの貿易構造変化と外交」と変更した上で再提出した。筆者が編集代表を務める上記論集の一論文として、遠からず刊行される予定である。同論文は、1855・56年のバウリングとハリスの対シャム条約交渉を英米の一次史料を用いて詳細に再構成し両者を比較考察したもので、英米の使節へのシャム王室の差別的待遇の様相を明らかにし、その経験がハリスの対日外交に及ぼした影響を展望した。新たな対シャム条約を必要とした英米の事情も併せて概観し、日本開国史の前提条件をアジア大の視点から理解するための知見を提供する論考になると思われる。 ②の論文は、「誰が主権を有するのか?-幕末駐日外交官の日本認識と外交1858-62(仮)」というもので、昨年度までのハリスの発信書翰群の調査成果と、今年度に調査を進めた英公使オールコックや蘭代表クルチウスの対日外交関係史料からの知見をもとに、準備を進めている。次年度、所属する学会の特集論集の一論文として投稿予定である。同論考は、幕府の国内政治上の地位や朝廷・諸藩との関係についての西洋駐日外交官の認識のギャップが彼らの対日外交に与えていた影響を読み解くものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度も、新型コロナウィルスの流行継続により、海外での史料収集は行えない状況が続いた。こうした中で、昨年度に引き続き、既に複写データを入手済みの史料群の活用を進めるとともに、横浜開港資料館での史料収集を複数回行い、またイギリスやオランダの国立公文書館のウェブサイトが提供するオンラインでの史料公開や史料複写サービスも利用しつつ、調査と論文執筆を進めた。論文執筆に必要な文献で、オンラインで注文可能なものは、積極的に入手し、執筆のため活用した。昨年度に引き続き、海外の業者への翻刻外注も利用した。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、まず上記2本の論文を確実に刊行まで至らせたい。と同時に、2019年冬に「米国初代駐日総領事ハリスのアジア諸港における外国人居留地人脈―珠江デルタ地帯・寧波・上海を中心に―」として学会報告を行いつつ、未だ論文化し得ていない素材があり、これの論文執筆を早めの段階で行いたい。その後、1858年の通商条約調印へ向けた米使ハリスと蘭使クルチウスの競合という、本研究課題の一つの中核となる問題について、米蘭日の史料の調査を進め、論文執筆を行っていきたい。
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Research Products
(5 results)