2022 Fiscal Year Research-status Report
Reconstruction of the History of Japan's Opening: Analysis of International Rivalries over the "Frame" of Opening
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20K00996
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Research Institution | National Museum of Japanese History |
Principal Investigator |
福岡 万里子 国立歴史民俗博物館, 大学共同利用機関等の部局等, 准教授 (50740651)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 東アジア国際関係史 / バウリング / ハリス / 条約勅許 / 主権者 / 批准 / 日本開国史 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、本研究課題の遂行の一環として、報告者の責任編集による論文集を刊行し、また学術雑誌において問題提起的な含意も含む実証論文を発表した。 前者の論文集は「近世近代転換期東アジア国際関係史の再検討-日本・中国・シャムの相互比較から-」と題したもので、報告者が所属機関において行った同名の共同研究の成果論文集でもある。報告者自身は「バウリングとの比較からみるハリスの対シャム条約交渉-19世紀前半アジアの貿易構造変化と外交」と題する論考を執筆し、日本の「開国のかたち」を決定づけたハリスの来日前におけるシャム(タイ)での条約交渉を、有名なバウリングの対シャム交渉と比較して考察することでその特質を究明し、後のハリスの対日外交にとって持った意味を考察した。論集はこの他、18~19世紀の中国・日本・シャム・朝鮮をめぐる国際関係を脱一国史的な視野から問い直す諸論考を収め、研究蓄積が比較的薄い近世近代転換期のアジア海域史を考察する試みとして、意義ある成果になり得たのではないかと思われる。 後者の論文は、「日本の主権者は誰なのか-幕末駐日外交官の日本認識と外交1858~1862」と題し、徳川将軍と天皇という、江戸時代の独特な二元的政治体制が、近代西洋の条約体制と接してその周縁に組み込まれた際に生じた、外交官の日本認識と外交の間の相互影響関係に焦点を当てた。すなわち同論文では、安政五ヵ国条約が無勅許で調印されたという幕末政治外交史上周知の事実関係が、西洋外交団側では同時代的に認知されず、その認識の有無が西洋列強の対日外交に水面下で重大な影響を及ぼしていた実態を明らかにした。その成果は、明治維新期日本の政治外交史理解にも波及効果を持ち得ると考えられる。 この他今年度、駐日オランダ大使館において本研究課題に関連する2度の研究報告を行い、また本課題に間接的に関係する英語の共著論文も刊行に至った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度は当初、前年度に既に取り組みつつあった上記の二つの研究成果を完成し刊行した上で、未刊行の研究成果を一つとりまとめて投稿・発表し、その上で、1858年の通商条約調印へ向けた米使ハリスと蘭使クルチウスの競合という、本研究課題の本丸とも言うべき問題について、関係史料の調査を行った上で論文執筆に取りかかれればと思っていた。しかし所属機関の諸用務と併行する中で、論文集の準備と刊行は予想以上に時間と労力を要し、またもう一つの論文も、細部を詰めて完成度を高めるために、同様に時間がかかった。加えて今年度後半は、オランダ大使館での2度の研究発表について急きょ依頼を受けそれに対応したほか、コロナ後初めての海外出張用務が生じ、また幕末の日本外交史に関する概説論考の執筆依頼もあり、それらに取り組む中で、上記の次の課題は先送りせざるを得なかった。しかしながら、これらの諸課題に丁寧に取り組むことで、本研究課題に関連しても様々な新たな発見があり、それは今後に向けた大きな収穫となったと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は所属機関の博物館の近代展示リニューアル事業で重要な時期に入る。報告者は幕末明治前期の対外関係に関する展示コーナーを担当するので、その作業は本課題にも深く関係することになる。加えて、所属機関でこれまで関与してきた共同研究の関係で、ペリー来航期における徳川政権の儒学者の外交への関わりについて論文や史料紹介をまとめる予定である。その後次年度の後半、可能な限り、「米国初代駐日総領事ハリスのアジア諸港における外国人居留地人脈」のテーマで未刊行の研究成果を形にするとともに、1858年の通商条約調印へ向けた米使ハリスと蘭使クルチウスの競合という研究主題に取り組みたい。ただし従事する幾つかの共同研究や今後の研究計画の関係で、それよりも早期の完成・発表を要する主題が幾つか想定されており、それらを優先する可能性もある。なお念頭に置いている主題はいずれも本研究課題に間接・直接的に関係するものであり、その取り組みを通じて、本研究課題の推進にも資することとなるものと考える。
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Research Products
(7 results)