2020 Fiscal Year Research-status Report
The Moneyers in long-eleventh century England and their places in Europe
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20K01041
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
鶴島 博和 熊本大学, 大学院教育学研究科, 名誉教授 (20188642)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 銭貨製造人 / 11世紀 / イングランド / 『ドゥームデイ・ブック』 / Early Medieval Coin / 通貨システム / 中世ヨーロッパ経済 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、11世紀のイングランドにおける銭貨製造人の実態を解明することで、ヨーロッパにおいて王権によってもっとも通貨統制が実現され、銀貨の品位と質が高く保証されたイングランドの通貨システムを明らかにすることで、中世ヨーロッパ経済を解明することにある。 史料としてケンブリッジ大学附属フィッツウィリアム博物館の貨幣データベースCorpus of Early Medieval Coin Finds(EMC)と『ドゥームデイ・ブック』を用いた。EMCは同博物館が収蔵するコインを核に作り上げられたオンラインデータベースである。11世紀のイングランドの銀貨は定期的に王権によってデザインの更新が行われたが、裏にかならずそのコインを製造した銭貨製造人の名前と製造場所(Mint)が打刻されていた。一方で、『ドゥームデイ・ブック』は1086年にイングランド王国のほぼ全域で実施された審問調査の報告書で、ここに納めれらた情報は膨大で、中世イングランド史研究を行う場合には必須の史料の位置にある。そしてここには、1066年頃を中心にして1086年までのイングランド人の地域有力者が州、都市、荘園ごとに記載されていて、彼らの土地の保有状況や富、社会的・支配関係がある程度解明できる。しかし、銭貨製造との関係が記載されないために製造人かどうかの確認が困難な場合が多い。 それで、この二つの史料とさらには傍系の史料を突き合わせて、名前と所在地をキーにして、銭貨製造人を同定し、当時の銭貨製造人の社会的地位や富、支配関係などを明らするする。これまでの事例をあげればロンドンのDeorman、カンタベリのSiredなどがおり、その成果は、論文などで公開し上記の目的に応えてきた。現在進めている作業はこの事例を可能な限り増やして研究の所期の目的達成することである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
これまでの科研費研究は、夏場にイングランドに出向き、かの地で、史料調査、文献調査、そして共同研究者との議論を重ねて論点を明らかにして国際学会等で報告し、帰国してから論文を作成して発表するというシステムで行ってきた。しかし、昨年度新型コロナウィルスのため渡航がかなわず、このシステムは崩壊した。入手できる文献ではオリジナルという視点からも不十分である。また、昨年度報告予定であったリーズ国際中世学会の鶴島報告分は2022年に延期された。今年10月締め切りだったNew Cambridge History of Britain vol. 1.に掲載を依頼された論文も締め切りが来年度9月に延期されたりで、学界全体の動きが鈍化していることも大きな要因である。
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Strategy for Future Research Activity |
Corpus of Early Medieval Coin Findsと『ドゥームデイ・ブック』の二つの史料と傍系の史料を突き合わせて、名前と所在地をキーにして、銭貨製造人を同定し、当時の銭貨製造人の社会的地位や富、支配関係などを明らする作業をこれまで通りに進める。そして確認した事例を可能な限り増やして研究の所期の目的達成に努める。この結果は今年度中に上梓される予定の拙著に反映する。 また、これまでの現時点の研究作業は、今年の『岩波講座世界歴史』と来年度以降のNew Cambridge History of Britainで公開する予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルスが発生して、海外渡航に制限がかかり、イギリスやポルトガル入国が不可能となり、研究経費執行上もっとも重要であった海外出張研究が不可能となったためにこれを翌年度に回して研究の円滑化を図った。
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