2021 Fiscal Year Research-status Report
古代キリスト教殉教伝承の継承と中世ヨーロッパにおけるアイデンティティ構築の解明
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20K01044
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
大谷 哲 東海大学, 文学部, 講師 (50637246)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 殉教 / ローマ帝国 / キリスト教会 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、古代ローマ帝政初期のキリスト教会において形成された殉教者崇敬伝承が、古代末期ローマ辺境地区および初期中世の「周縁的」ヨーロッパ社会において伝承され、新たな地域的殉教者崇敬と歴史認識を生み出す過程を明らかにすることである。 そこで本研究では各事例における歴史史料テキストの形成過程を、テキストが生み出された地域・時代の情勢と対応させつつ分析し、歴史叙述形成と殉教者崇敬の興隆、新たな歴史認識の受容の姿の関連を解明することを試みている。 本年度は、古代末期から初期中世にかけて継承された初期キリスト教教会の歴史認識基盤となる、古代のキリスト教徒の叙述内容と実際の歴史上の事件の関係を解明するため、1~2世紀のエルサレム周辺におけるキリスト教会の指導体制とこれに関する歴史叙述史料を分析し、殉教に関する歴史叙述の分析の有効性を確認した。中世キリスト教社会のアイデンティティ形成にも関係するこうした分析について、「初期エルサレム教会の指導体制とダビデの系譜」と題し国内学会で発表した。これについては論文化を予定している。 また、中世期におけるキリスト教会の殉教者崇敬と歴史認識研究の一例として、ローマ皇帝コンスタンティヌスの対ペルシア政策についての歴史叙述が後世のキリスト教徒によって変化させらる過程を分析し、国際学会で報告した。同学会で受けたアドバイスに沿い、研究のさらなる精緻化をはかっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の方針の妥当性を確認するため、2020 年10 月に韓国ソウルで開催される予定であった国際学会The 12th China-Japan-Korea Symposium on Ancient European History: War, Peace and Hegemony in Antiquity での報告が内定していたが、新型コロナウィルスの世界的蔓延を受け、同国際学会は2021年度に延期となった。そのため2020年度に生じた研究方針の確認の遅れについては、同国際学会が2021年11月にオンライン開催されたことを受け、進捗状況を改善できた。しかしながら、2022年度開催予定であった国際学会Asia-Pacific Early Christian Studies Societyは2023年度にシンガポールでの開催まで延期されることとなり、本研究の成果を国際水準で確認することにいささか遅れが生じている。次年度の国際学会報告と論文化で進捗改竄をはかりたい。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度に開催予定の国際学会に参加を予定していたが、新型コロナウィルスの蔓延に伴い、2023年度に延期が決定された。そのため、オンラインでの研究集会参加を新たに検討している。これにより、研究状況の経過報告等を行い、研究計画の妥当性を逐次確認しようと考えている。また、2023年に延期された国際学会報告の準備も同時に行っていく。本年度は昨年度にオンラインで実施した国内学会発表の内容を論文化していく。
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Causes of Carryover |
2021年度は新型コロナウィルスの世界的蔓延の影響を受け、年度内に開催が予定されていた国際研究集会が延期された。また、2020年開催予定であった国際学会は2021年度にオンライン開催となり、2021年度に研究報告を行った国内学会も同様にオンライン開催となったため、2021年度は旅費を使用しなかった。次年度使用額として残した予算については、英語論文に対する校閲費用として予定している。
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