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2021 Fiscal Year Research-status Report

総力戦と女子職業教育―第一次世界大戦期ロシアの家族・教育とジェンダー

Research Project

Project/Area Number 20K01061
Research InstitutionKitasato University

Principal Investigator

畠山 禎  北里大学, 一般教育部, 教授 (60400438)

Project Period (FY) 2020-04-01 – 2024-03-31
Keywordsロシア帝国 / 「大改革」 / 第一次世界大戦 / ジェンダー / 教育 / 職業教育 / ロシア技術協会
Outline of Annual Research Achievements

2021年度はロシア技術協会の女子職業教育事業に焦点を当てた。1870年代~1900年代、ロシアの論壇では女子中等普通教育機関・女子職業教育機関の教育目的・内容と卒業生の進路が議題となる。ロシア技術協会が主催した「ロシア技術・教育活動家大会」女子職業教育部会でも多くの報告や討論がこの問題に言及した。
部会報告と討論を読み解き、以下の知見を得た。第一に、19世紀半ばの「大改革」以降、とくに一九世紀末において、産業発展や広大なロシアの開発、社会インフラの整備に必要な人材を養成するという新しい時代の要請に応えるべく、インテリゲンツィアとくに男性教育活動家が女子職業教育の拡充をめざした。その際、男性教育活動家は従来の性別役割分業規範を崩さずに、公的領域と家内領域における女性の役割を新たに規定しようとした。第二に、教育活動家は総じて社会移動の手段という学校教育の一側面を重視せず、出身身分・階層に応じた教育を生徒に教授すべきだと考えていた。ユダヤ人学校の教育実践に関する報告等を除いて、エスニックマイノリティに触れた報告はごくわずかにすぎず、辺境の非ロシア人に職業教育(とその中に組み込まれた家族・ジェンダー規範)を浸透させようとする動きは鈍かった。ヨーロッパの先進的な教育経験をロシアに移入し、それをロシア(中央部の)社会経済に合わせてカスタマイズすることに教育活動家は意識を集中させていた。ヨーロッパとの対抗からロシア・ナショナリズムへと向かう動きもみられた。
ただし、第一次世界大戦期については、ロシア連邦で史料調査が実施できなかったため考察の対象外となった。
研究結果の一部を、第5回「中央ユーラシアのムスリムと家族・規範」研究会で「帝政末期ロシアの家庭重視イデオロギーと女子職業教育」として発表した。本年度はその他に、ロシア・ソ連ドイツ系住民の歴史を論じた最新研究について書評を執筆した。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

3: Progress in research has been slightly delayed.

Reason

当初の計画では、本年度はロシア連邦サンクトペテルブルクにて2~3週間程度、民間技術教育団体の女子職業運動に関する文献を調査する予定だった。具体的には、ロシア国立歴史古文書館やロシア国民図書館に所蔵されている、第一次世界大戦期のロシア技術協会に関する史料を対象としていた。また、前年度の研究課題(第一次大戦期のロシア帝国政府や臨時政府による女子職業教育政策)についても調査するはずだった。しかし、新型コロナ感染症拡大やロシアによるウクライナ侵攻のため実施を断念せざるを得なかった。
そのような状況をふまえ本年度は、科研費での研究開始前にロシアやフィンランドで収集した、19世紀末から第一次世界大戦前までに関する史料に依拠して研究を実施した。そして、女子中等普通教育機関・女子職業教育機関卒業生の進路をめぐる議論を分析し、帝政末ロシアの家族・教育領域で主張されたジェンダー規範をある程度解明することができた。研究結果の一部を研究会で報告したほか、論文(北村陽子編『ジェンダーと職業教育の比較社会史』(仮題)、昭和堂、所収)として発表する予定である。ただし、第一次世界大戦期のジェンダー規範については考察できなかった。以上の理由から、2021年度までの進捗状況を「やや遅れている」と評価した。

Strategy for Future Research Activity

「5.研究実績の概要」でも述べたように、本研究はロシアやウクライナの図書館や古文書館でロシア帝国政府やロシア二月革命後の臨時政府による女子職業教育政策、民間団体の女子職業教育運動に関する史料を調査し、教育事業の構想・実践において語られた言説からジェンダー規範を析出するという方法をとっている。しかし、前年度に引き続き本年度も新型コロナ感染拡大の影響から国内外の研究機関(ロシア国立歴史古文書館、ロシア国民図書館、北海道大学付属図書館など)での文献調査が実施できなかった。そのため、科研費での研究開始前にロシアやフィンランドで収集した史料や本科研費で購入した近現代ロシア社会史・ジェンダー史関係図書(洋書・和書)に依拠して、研究を実施した。
当初計画では2022年度、ウクライナ共和国キーウ(キエフ)の国立キエフ州古文書館で2~3週間程度、文献調査を実施し、女子農業教育・家政教育活動家の著作を読み解いてその思想を明らかにしたり女子農業教育・家政教育団体の教育事業を特徴づけることになっている。しかし、新型コロナ感染拡大やロシアによるウクライナ侵攻のため実施がきわめて困難なことから、これまでと同様、科研費での研究開始前にロシアやフィンランドで収集した史料や本科研費で購入した図書を活用して研究を実施する。北海道大学付属図書館など国内研究機関の利用が許可されるならば、研究環境はやや改善するだろう。海外調査については、フィンランド共和国(フィンランド国立図書館)などでの調査の可能性を模索してみたい。
なお、研究課題の実施と成果の公開が当初計画よりも遅れる場合は、研究期間の延長を検討する。

Causes of Carryover

当初の計画では、2020・ 2021年度の研究費を外国旅費(ロシア連邦サンクトペテルブルクでの文献調査)、国内旅費(国内研究機関での文献調査や研究成果発表)、ノートパソコンとコンパクトカメラの購入費、近現代ロシア社会史・ジェンダー史関係図書(洋書・和書)の整備費などとして使用する予定だった。しかし、新型コロナ感染拡大のため国内・国外出張が延期となったこと、またそれに伴い、文献調査で使用するコンパクトカメラの購入を見送ったことから残額が生じた。
残額は2022年度以降の外国・国内旅費、コンパクトカメラの購入費、近現代ロシア社会史・ジェンダー史関係図書(洋書・和書)の整備費に充てる。ただし、外国・国内出張については、2022年5月現在においても新型コロナ感染拡大やロシアによるウクライナ侵攻の影響から実施が困難な状況にある。海外調査については、フィンランド共和国(フィンランド国立図書館)などでの調査の可能性を模索してみたい。

  • Research Products

    (2 results)

All 2022 2021

All Journal Article (1 results) (of which Peer Reviewed: 1 results) Presentation (1 results)

  • [Journal Article] 書評 鈴木健夫『ロシアドイツ人――移動を強いられた苦難の歴史』亜紀書房、2021年。2022

    • Author(s)
      畠山禎
    • Journal Title

      西洋史学

      Volume: - Pages: -

    • Peer Reviewed
  • [Presentation] 帝政末期ロシアの家庭重視イデオロギーと女子職業教育2021

    • Author(s)
      畠山禎
    • Organizer
      「中央ユーラシアのムスリムと家族・規範」研究会

URL: 

Published: 2022-12-28  

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