2021 Fiscal Year Research-status Report
フランス革命前夜の外務卿ヴェルジェンヌとフランス外交政策に関する総合的研究
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20K01066
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
森原 隆 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (70183663)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | フランス革命 / 啓蒙思想 / パトリオット / 共和政 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、申請時の研究計画では、近世フランス外交の意味や意義を、とくにフランス革命前夜にあたるヴェルジェンヌ外務卿時代(1774年―1787年)に焦点をあて、仏・英・墺を中心にしたヨーロッパのみならずアメリカ、ロシア、オスマン帝国なども含めたグローバルな視点から捉えなおすものであり、また外務卿を中心とした外務卿府の実態を、外交書簡・司令書・認可書・会計文書などを基に、史料分析的な観点から検討する予定であった。この研究は、現地フランスでの史料調査を念頭に置いたものであるが、しかし、2021年度は、前年度に引き続いて、新型コロナ禍の問題で、フランスへの渡航が不可能となり、フランス外務省の外交文書館や国立古文書館の手稿史料を中心にした大量の外交文書史料調査や分析など実証的な研究はほとんどできなかった。ただ、ヴェルジェンヌ外務卿に関する研究文献やこの時期の政治史・思想史に関する研究文献を今年度も新たに多数入手し、研究テーマに関する総合的な研究に着手した。例えば、近年の啓蒙思想に関する研究や、アメリカ独立戦争に関する研究に注目し、分析を進めている。 また、この時期のアメリカの独立に関するヴェルジェンヌの外交政策や、オランダとの外交関係、特に、1780年代のオランダの革命運動との関係などに注目し、個別の考察を進めることができた。具体的には、1780年代のオランダのパトリオット革命との関係である。またヴェルジェンヌ個人の思想や活動について、とくにフランス革命の中核となる「共和政」や「パトリオット」との関係に注目し、この面での新たな研究分析に、ある程度の見通しを持つことができた。これらは、いずれもわがくにには、ほとんど本格的な研究がないテーマであり、研究価値が高いと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年度初頭から2022年5月現在に至るまで、コロナ禍により研究計画における、フランス現地における史料調査・分析による実証的な研究はできず、この面での研究課題の進捗状況は遅れているといわざるを得ない。本研究については、史料、とくに手稿史料に基づく調査分析が不可欠であるので、全体としては、研究状況はややあるいはかなり遅れた状況にある。 しかし、一方で、研究文献や史料データベースを利用した読解レベルの研究は、予定通り進めており、上記のようにある程度研究成果を獲得している。今年度は、18世紀後半から19世紀前半にいたる、「大西洋革命」「グランドナシオン」などあらたな世界観に基づく政治思想構想について検討を進め、フランス外交政策とりわけヴェルジェンヌ外交思想のもつ歴史的な意義について展望を拡大することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は、コロナ問題が収束すれば、フランスでの現地調査を行い、史料分析を本格的に開始したいと考えている。現在のところ、ヴェルジェンヌ個人に関する研究・分析については、研究文献等で充分解明できる見通しがついている。手稿分析によって、ルイ16世との情報交換や、外交官への通達などで、外交政策に関する実証的な分析は、今年度中にはある程度のめどがつけられるのではないかと考えている。それ以後は、ヴェルジェンヌを中心にしたフランス外交政策や政治理念が、この同時代の欧米世界において、いかなる意義や影響を持ったのか、またこのあとのフランス革命にいかなる影響を与えたのか、以下のような、個々のより具体的な研究テーマを設定して、分析・追究を継続して行う予定である。(1)ヴェルジェンヌ思想における「君主政」「共和政」理念の位置づけ、(2)ヴェルジェンヌ思想とフランス革命との関係、(3)アメリカ独立革命・オランダ愛国党革命・スイス革命運動とフランス外交との関係、などである。
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Causes of Carryover |
本年度は、コロナ禍により、現地フランスでの史料収集や調査が不可能となった。本研究は、現地での調査が不可欠な研究計画となっており、図書費や消耗品費などの支出により、充当することも考慮したが、2022年度、2023年度の研究調査に備えて、本年度は、研究費の繰り越しを申請することとした。
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