2022 Fiscal Year Annual Research Report
絶滅したニホンオオカミの遺伝的変遷と移動を探る動物考古学的研究
Project/Area Number |
20K01104
|
Research Institution | The Graduate University for Advanced Studies |
Principal Investigator |
石黒 直隆 総合研究大学院大学, 先導科学研究科, 客員研究員 (00109521)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
本郷 一美 総合研究大学院大学, 先導科学研究科, 准教授 (20303919)
寺井 洋平 総合研究大学院大学, 先導科学研究科, 助教 (30432016)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | ニホンオオカミ / オオカミ / イヌ / ミトコンドリアDNA / 系統解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
絶滅したニホンオオカミは謎の多い動物である。解析する資料が少ないこともその原因の一つである。石黒らのグループはニホンオオカミの遺伝的な解析を長年続けてきている。その結果、ニホンオオカミはミトコンドリアDNAのDループ領域の8塩基挿入と欠失により2群に分かれることが明らかとなった。特に8塩基挿入のグループAは西日本に、8塩基欠失のグループBは東日本に分布していた。この8塩基の挿入と欠失の変異はニホンオオカミに特有であることから、ニホンオオカミの起源や進化を知る有用な情報である。しかし、これまで解析したニホンオオカミの骨資料は中世から近世に至る比較的新しい骨資料であり、ニホンオオカミの起源や進化を解析するには十分ではない。本研究ではニホンオオカミの起源と変遷を知る目的で、より古い時代の骨資料の解析を行った。令和4年度は、後期更新世から縄文時代に至るオオカミの骨資料について遺伝的解析を行った。 後期更新世のオオカミの骨資料として、愛媛県大洲市埋蔵文化財センターに保存されているオオカミの切歯と長野県北相木村考古博物物館に保管されているオオカミの下顎M1の歯根からDNAを分離してミトコンドリアDNAを通常のPCRで解析した。その結果、北相木村村考古博物館の下顎資料からDNAが分離されたが、ニホンオオカミではない大陸系のオオカミの配列を示した。 縄文時代のニホンオオカミとして鹿児島県の黒川洞穴と市来遺跡から出土した骨資料を解析した結果、黒川洞穴の骨資料からニホンオオカミのミトコンドリアDNAの配列を確認した。この資料の配列は、8塩基を欠失したグループBの配列であることから、日本列島には縄文時代からグループAとグループBのニホンオオカミが広く分布していたことが明らかとなった。DNAが分離された資料については、現在核ゲノム解析を進めている。
|
Research Products
(1 results)