2020 Fiscal Year Research-status Report
写真測量による遺跡・遺構の3次元モデル取得・公開・活用に関する実践的研究
Project/Area Number |
20K01110
|
Research Institution | Tenri University |
Principal Investigator |
橋本 英将 天理大学, 文学部, 准教授 (80372168)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 写真測量 / 考古学 / 3Dモデル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題の目的は、発掘調査における写真測量による遺跡・遺構の3次元モデル取得と活用について、効率的かつ高精度な記録が実施されるための体制・条件を、実際の発掘調査における実践を通じて精査することである。 当初日本、イスラエル両国でのフィールド調査で実施を予定していたが、2020年度はCovid-19の影響で海外への渡航は不可能であった。このため国内における課題に重点を置いた。本研究課題の日本国内における主たる対象である、奈良県天理市、杣之内古墳群のうち、現在継続的に発掘調査を積み重ねている東乗鞍古墳に焦点をあて、発掘調査結果の写真測量による記録について、ドローン、一眼レフデジタルカメラ、コンパクトデジタルカメラそれぞれの場合に分けて検討した。 上空からほぼ俯瞰で調査区を見下ろすことができるドローンによる撮影と、地上からの目線での画角でしか撮影できないデジタルカメラそれぞれで撮影した場合に生成される3次元モデルの性質の違い、画像素子が大きいフルサイズ一眼レフデジタルカメラと、1インチサイズの画像素子のコンパクトデジタルカメラとでの3次元モデルの精度の違い、データそのものの取得にかかる時間や、並行して行われる発掘調査の他の作業の進捗への影響等について、基礎的なデータを取得した。上記で取得した記録から生成される3次元モデルを比較し、紙媒体の発掘調査報告書、web上で閲覧するPDF、ウェブサイト上での公開等、活用の場面ごとに、それぞれのモデルの優位性を検討中である。Covid-19の影響により、国内であってもフィールド調査に制約が生じ、国内での課題におけるもう一つの軸であった、横穴式石室の3次元モデルの記録条件の検討は、2020年度中は実施できなかった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
Covid-19の世界的流行のため、本研究課題の主たる対象の一つである、イスラエル国、テル・レヘシュにおけるフィールド調査は、2020年度は一切実施できなかった。2021年度も発掘調査の目途はたっておらず、海外調査時における3次元モデル取得に関する記録条件の検討については、ほとんど実施できていない。ただし、イスラエルにおけるフィールド調査にかかわる写真測量データについては、2017年および2019年の発掘調査時に取得したものが存在する。本研究課題の趣旨に即した、同一対象を異なる条件で記録し比較する、というものではないが、当面それら過去のデータも参照しつつ、フィールド調査再開に向けて準備をおこないたい。 日本国内における対象の一つである、奈良県天理市東乗鞍古墳については、発掘調査を実施した時期である2021年2月における、奈良県内のCovid-19感染状況が小康状態であったため実施が可能となり、ほぼ当初想定していた発掘調査現場の記録を実施することができたが、2020年夏に予定していた横穴式石室に関する3次元モデル取得のマニュアル化については、当該時期の時点で、大学内における、教員・学生の活動のガイドライン整備が模索段階であったこともあり、実施に至らなかった。
|
Strategy for Future Research Activity |
海外における調査対象地であるイスラエルでは、ワクチンの急速な普及によりCovid-19の蔓延が急速におさまっている。このため2021年度は、夏の時期の発掘調査は困難であるが、年度後半に予備調査に現地をおとずれ、過去の調査区を対象に、記録条件検討を目的とした、実験的な3次元モデル取得を予定している。2022年8月には再開が予定される発掘調査区を対象として、並行しておこなわれる発掘調査のプロセスと調和した本格的なデータ取得の在り方を実践を通じて検討する。 日本国内においては、東乗鞍古墳の発掘調査の進行にあわせたデータ取得・活用の実践を継続するとともに、杣之内古墳群内の主要な横穴式石室である、塚穴山古墳・峯塚古墳等、使用石材の大きさ、加工度が異なる事例を対象として、カメラ・撮影方法の条件設定と合わせ、最適な撮影条件の検討を進める予定である。
|
Causes of Carryover |
2020年夏に予定していたイスラエルにおける発掘調査が中止となったため、海外旅費として予定した費用を支出しなかった。また、2020年に予定されていた国際学会が1年延期となり(2021年にオンラインで実施)、その旅費も支出の必要がなくなった。 海外調査時に取得したデータを整理するためにアルバイトを雇用する予定であったが、調査自体が中止となったため、支出しなかった。 2021年度は年度後半にイスラエルでの現地予備調査を追加で予定しており、2020年度に支出しなかった海外旅費を充てる。また、2021年11月にアメリカで開催される国際学会に、Covid-19の感染状況の収まりによっては現地での参加を検討しており、その場合、同じく前年度支出しなかった海外旅費の残りと、2021年度予定の海外旅費を支出する予定である。 2021年度分の海外旅費については、当初は主に8月に予定していた現地での発掘調査として計上していたものであるが、夏の現地調査を見合わせたため、感染状況を見極めたうえで、イスラエル国へ文献収集に訪れるための費用として支出する予定である。
|
Research Products
(3 results)