2022 Fiscal Year Research-status Report
トレハロース含浸処理法を用いた草原地帯出土彩色木製文化財の保存研究
Project/Area Number |
20K01114
|
Research Institution | Osaka City Cultural Properties Association |
Principal Investigator |
藤田 浩明 一般財団法人大阪市文化財協会, 学芸部門, 室長 (50344403)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | トレハロース / 彩色木製文化財 / 草原地帯 / 保存処理 / 技術移転 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、草原地帯で出土する広範な有機質遺物、とりわけ彩色の施された遺物に対するトレハロース法の有効性を検証し、適正な保存処理方法の確立を目指している。さらに、現地保存科学者との研究協力・技術移転を図ることで、同地域における文化財保存の礎を築き、保存処理が永続的に行なわれるようになることを目的としている。 新型コロナウイルスの影響により、2020および2021年度に予定していたモンゴルでの資料調査を行なうことができなかったが、2022年度に実資料の状態把握のための現地調査を行なうことができた。また、モンゴルの研究者を招聘し、実資料への保存処理方法について、実験結果等を踏まえ、協議、検討した。 並行して彩色木材サンプルを用いた実験を進めた。具体的には、出土資料で確認されている顔料を用意し、それらの成分分析、塗布した木材サンプルを作成、各保存処理方法で使用される薬剤による彩色部分への影響の有無を確認するための実験を進めた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
新型コロナウイルスの感染拡大により、2年にわたり現地調査を実施することができなかったことが最大の理由である。また、予定していた実験機器の導入も、資材確保が困難であったことから遅れていたが、最終年度にようやくモンゴルでの資料調査および機器の導入を行なうことができた。現地資料の状態把握やサンプリングを実施し、実資料についての知見を得ることができた。よって今後、得られた知見を基にした研究を進めていく予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
1.トレハロース法の適応研究 彩色木材サンプルを作成し、保存処理使用薬剤による彩色部分への影響評価を行なう。彩色部分の評価としては、小型分光測色計を用いて、彩色部分の変色等の有無を調査する。また現地調査において得られた知見をもとに、彩色木製文化財に対する最適な保存処理方法の確立を目指す。 2.彩色文化財の劣化状態の把握と技術移転 現地担当者を招聘することで、当方の保存処理技術を伝え、今後の研究交流基盤を確立することができている。今後は現地担当者とwebを活用して作業を進める。現地では文化遺産センターが設立され、保存処理実施環境も整ってきていることから、現地での処理設備や処理状況を確認し、可能な範囲での技術協力を進めていく。
|
Causes of Carryover |
予定していた現地調査や実験機器の導入が遅れたため、研究成果の総括にまで至っていない。よって研究成果報告書作成費を、補助事業期間の延長により繰り越し、次年度に使用予定である。
|
Research Products
(1 results)