2021 Fiscal Year Research-status Report
原発事故に関する「記憶の文化」の形成構造の分析ードイツでの取り組みを参照して
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20K01119
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Research Institution | Fukushima University |
Principal Investigator |
後藤 忍 福島大学, 共生システム理工学類, 准教授 (70334000)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 福島第一原発事故 / 伝承施設 / 原子力・放射線教育 / 記憶の文化 / テキスト・マイニング / アンケート |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は,主に1)原発事故の教訓を伝えるための施設の展示内容の分析,2)原子力・放射線教育における教訓を伝えるためのパネル展の実施と来場者アンケートを行った。 1)原発事故の教訓を伝えるための施設の展示内容の分析については,福島県の東日本大震災・原子力災害伝承館を対象とし,2021年3月に追加された展示を含めて調査・分析を行うとともに,既存のチェルノブイリ博物館の展示内容に関する分析結果とを比較して,「The 11th World Environmental Education Congress」においてポスター発表した。 2)原子力・放射線教育における教訓を伝えるためのパネル展の実施と来場者アンケートについては,研究室の学生とともに,「“減思力”の教訓を学ぶためのパネル展」を開催し,来場者へのアンケートを実施して効果を把握した。パネル展は福島市(2021年12月3~5日)といわき市(2021年12月10~12日)の2カ所で開催した。福島会場は来場者数86名,アンケート回収数36票,いわき会場は来場者数75名,アンケート回収数は40票であった。主な結果は次の通りである。a)訪れた理由は「原子力・放射線教育に興味があったから」が最も多く5~6割程度で,「他の目的で施設に来たらたまたまやっていたから」は2~3割程度であった。b)パネル展の感想(5段階評価)は2会場の合計で「面白かった」が最も多く75%で,「やや面白かった」を合わせると95%を占めた。c)「面白かった理由」について,2会場ともに「“減思力”の教訓に共感し,伝えていきたいと思ったから」が最も多く,2会場の合計で約75%を占め,来場者の多くにはパネル展の趣旨を理解していただけた。主な調査・分析結果は,「第5回日本環境教育学会東北支部大会 東北地区環境教育研究・活動発表会」などで発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り,東日本大震災・原子力災害伝承館の展示内容について,2021年3月に追加された展示を対象に加えて分析を行い,既存のチェルノブイリ博物館との比較を行って,国際学会での発表を行った。論文については2022年度にまとめて投稿予定である。 また,コロナ禍により既存施設での来館者アンケートが難しいこともあり,独自に原子力・放射線教育に関する教訓を伝えるためのパネル展を開催して来場者にアンケートを実施する方法を採用した。福島市といわき市でパネル展を実施し,来場者へのアンケートを行って,国内での学会発表をすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
東日本大震災・原子力災害伝承館の展示内容の分析について2021年度に国際学会で発表した内容について,論文としてまとめ投稿する。 2021年度に実施した,原子力・放射線教育における教訓を伝えるためのパネル展について,2022年度でも別の地域で市民団体等との協力のもと開催し,来場者アンケートを実施して,追加の調査・分析を行う。 当初計画していた外国(ドイツ,ウクライナ)の現地調査については,コロナ禍に加えて,2022年2月に開始されたロシアによるウクライナへの侵攻により,残念ながら極めて困難な状況となった。「記憶の文化」の形成構造に関する考察部分については,文献調査や外国の研究者との共同研究を中心として進めたい。
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Causes of Carryover |
当初計画していた外国(ドイツ,ウクライナ)の現地調査について,コロナ禍に加えて,2022年2月に開始されたロシアによるウクライナへの侵攻により,極めて困難な状況が続いているため。
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