2020 Fiscal Year Research-status Report
鑑賞支援サービス充実のための、学芸員向け映像自作ワークショップの開発
Project/Area Number |
20K01120
|
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
西岡 貞一 筑波大学, 図書館情報メディア系(名誉教授), 名誉教授 (60436285)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 佳苗 筑波大学, 図書館情報メディア系, 教授 (60334570)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 映像制作 / 博物館 / 美術館 / 鑑賞支援 / オンラインギャラリートーク / ワークショップ / メディア教育 / 博物館情報・メディア論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では博物館における鑑賞支援サービスの充実を目的として、展示映像を自作するためのスキルと知識を修得するための映像自作ワークショップの開発を目指している。しかし2020年春以来のコロナ禍により研究環境ならびに研究の社会的意義に変化が生じた。 当初本研究では初年度に博物館を対象としたフィールド調査ならびに学芸員を対象とした対面型のワークショップの試行を計画していたが、感染対策上実施が困難となった。一方、博物館における映像活用については、館内での鑑賞支援サービスに止まらず、非来館者に対する博物館サービス(ギャラリートーク、講演会、ワークショップ)のオンライン化へのニーズが急速かつ全世界的に広がった。そこで研究計画を一部拡大し、博物館における映像発信のための映像制作ワークショップの開発を目指すこととした。すなわち映像の使用目的を鑑賞支援ならびに非来館者向け博物館サービス、対象とする学習者を学芸員に加え普及支援担当者と広報担当者とした。ワークショプの実施形態についても、対面型に加えオンラインによるワークショップを研究対象とした。2020年春以降、各地の博物館は休館と入場制限を繰り返す一方、映像発信の試行錯誤を続けている。本研究では当初「歴史系博物館の取材と、100本程度の歴史系教養番組の分析を通じ」解説映像の共通点を抽出を目指していたが、各館が発信するオンライン上の映像を対象として、共通点の抽出を目指した。成果の汎用性を担保するため国立・都立といった大規模博物館から区立美術館や区立資料館を分析対象として、映像の収集、視聴、分析項目の選定をす進めた。 並行してオンラインワークショップの開発に向け、オンラインワークショップを設計・試行し、対面型ワークショップとの比較を行い、その有効性を実証した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
【事例分析】東京23区内にある42の公立博物館(歴史系、美術系)のWebサイトのリンクやYouTubeチャンネルなどを対象として、2020/3/1から2021/4/30の間に公開が始まった517本の映像を分析した。その内容により、8つにジャンル分類した。(①ギャラリートーク、②ワークショップ、③講座、④講演・シンポジウム、⑤学校教育対応、⑥インタビュー、⑦展覧会・博物館紹介PV、⑧その他。制作体制を自作、内作、二次利用の3つに分類した。その結果1)映像の用途はギャラリートーク(36%)、展覧会や博物館の紹介(20%)、アーティストインタビュー(13%)が上位。2)制作体制は自作278本(54%)、内作214本(41%)、放送番組等の二次利用25本(5%)等が明らからかになった。 【オンラインワークショップの試行】2020年6月3日~7月29日に51名の大学生を対象として、ルーブリックを用いて、従来の対面授業によって制作された映像と、オンライン授業によって制作した映像の比較を行なった。その結果、制作実習授業においては、「信用性」と「説得力」において、対面型授業に比べて評価が低いことが示唆された。一方、「映像特性」「カットの理解」「映像文法」「ストーリー性」の学習効果については、差が示されなかった。また、オンライン授業の履修学生を対象にした調査により、相互講評などにおけるオンライン・コミュニケーションの課題が指摘された。一方、オンライン授業のメリットとしてオンライン授業における、映像の繰り返し視聴性が評価された。作品分析、相互講評においては、何度も映像を見返すことができるため、オンライン授業では精緻な分析が可能になる。このことは授業中に全員で一回だけ視聴することが一般的な対面型授業にはないメリットである。
|
Strategy for Future Research Activity |
2021年度も引き続きオンライン形式での研究を続ける計画である。 2020年度東京23区内で映像発信を行った公立博物館(歴史系、美術系)30館を対象にオンラインでのアンケート・インタビュー調査を実施し、映像発信における課題や学習内容の抽出を行う予定である。同成果を日本展示学会(2021.6.13)にて発表の予定である。西岡貞一、鈴木佳苗「博物館における映像発信の現状と課題」 博物館が発信した映像の分析を通じ、ジャンル別基本構成パターンの抽出を行う。これまでの調査を通じて得られた人的ネットワークを中心に、博物館における映像発信についてのコミュニティを構築する。コミュニティと共同で、ジャンル別基本構成モデルの提案を行う予定である。
|
Causes of Carryover |
コロナ禍により、研究計画の変更を行った。映像発信のオンライン化やオンラインギャラリートークの調査研究を重点的に実施し、対面でのワークショップの試行を2021年度以降に延期した、そのため実験謝金や交通費の予算執行も2021年度に繰り越すこととなった。
|
Research Products
(1 results)