2021 Fiscal Year Research-status Report
博物館と知的障害特別支援教育のアクセスコーディネートに関する実践研究
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20K01123
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
駒見 和夫 明治大学, 文学部, 専任教授 (20225577)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井上 由佳 明治大学, 文学部, 専任准教授 (90469594)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | インクルーシブミュージアム / ユニバーサルサービス / 博学連携 / 博物館出前プログラム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、博物館と知的障害の人たちを繋ぐシステムの構築である。東京都23区を対象にして、知的特別支援学校への博物館出前講座の実践と、情報発信等による博物館学習の方法と価値の提示、知的障害に適った教材やプログラムの開発と博物館への提供・アドバイスを核として進める。研究初年度の2020年に、知的特別支援学校への博物館出前講座プログラムの作成、障害のある人たちへの博物館の学習支援の実態調査とデータベースの構築、知的障害の子どもたちを対象とした博物館学習の教材とプログラムの作成をおこなった。 これらをもとに、2021年度には知的障害の子どもたちに適った博物館学習の教材とプログラムの作成を継続するとともに、(1)先進的な取り組みの博物館事例の実地調査、(2)知的障害特別支援学校やその子どもたちの家庭と博物館をつなぐウェブサイトの構築、(3)知的障害の子どもたちへの博物館出前講座、に取り組んだ。 (1)は知的障害だけではなく、障害のある人たちをひろく迎え入れようとするインクルーシブな展示やワークショップ、博物館教材を工夫する博物館を対象に進めた。(2)は、2020年度に構築したデータベースをもとに、博物館学習情報の発信と知的障害の子どもたちの利用相談の基盤とするものである。ウェブサイトのワイヤーフレームの制作を終え、動作検証等は次年度に継続する。あわせて情報と活用方法をまとめたパンフレット(手引書)の作成も進めた。(3)については2021年度の初めから取り組む計画であったが、新型コロナ感染症の影響で学校側の受け入れが難しく、年度末になってようやく知的障害児の日中一時支援施設で実施することができた。対象は小学部の低・中学年で、考古資料の勾玉を教材にしたプログラムを作成し、「“はくぶつかん”の たからものを たのしもう」のテーマで実践した。その成果の分析を現在進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナ感染症の影響で、初年度の2020年度に実施予定であった知的障害特別支援学校の実地調査、障害のある人たちを対象にした博物館の学習支援の実態把握の調査がほとんど着手できなかった。一部はオンラインを利用したインタビュー調査等に切り替えたが、遅れが生じた。 2021年度の前半もコロナ禍の影響で上記の取り組みが十分にできず、博物館出前講座の実践も年度の後半になってようやく進めることができるようになった。そのため初年度の遅れを取り戻すことができず、各種の実地調査や実践的取り組みをもとに2021年度に構築する計画であった学習支援のプログラムやデジタルコンテンツ教材の制作も、進捗が当初の予定よりも遅れた状況となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度には知的障害の児童生徒への博物館出前講座を継続し、その成果の分析をもとに、当該の児童生徒の実態に適した博物館学習教材とデジタルコンテンツを完成させ、学習支援のプログラムを整える。教材は子どもたちの興味を安全に引き出すもの、コンテンツは多様な場面での活用が可能で双方向性のコミュニケ-ションツールとなるものを、それぞれ目指す。 また、知的障害特別支援学校やその子どもたちの家庭と博物館をつなぐウェブサイトを完成させ、ウェブサイトの周知を図る情報と活用方法をまとめたパンフレット(手引書)も完成させ、関係機関に配布・配信する。そのうえで、知的特別支援学校の博物館利用相談をもとに、それぞれの目的やニーズに適った博物館への受け入れを調整して、博物館活用学習の推進を図る。調整に際しては、館内環境や対応等に関するアドバイス、それぞれの博物館の特徴に則した学習教材やワークショップに関するアドバイス、さらには教材とプログラムの提供をおこなう。 上記の手順を経て、受け入れた博物館へは事後に聞き取りをして成果と課題を検証し、見直しを加えて教材やプログラムを向上させ、アクセスコーディネートのシステムを完成させる計画である。しかし、コロナ禍の影響による研究遂行の遅れで、構築したプログラムの検証と見直しを最終年度の2022年度中に十分に実施することが難しい。そのため、本研究の1年延長を申請してこれを遂行し、2023年度に研究成果を総括してアクセスコーディネートのシステムを完成させる。
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Causes of Carryover |
新型コロナ感染症の影響により、本研究初年の2020年度に実施予定であった知的特別支援学校の訪問調査、博物館学習支援実態把握の実地調査ができなかった。博物館の学習支援の実態調査とそのデータ整理も、学生と大学院生の協力を得て実施する予定であったが、大学内での研究作業活動に制約が生じ、2020年度にはほとんどできなかった。また、研究の全般的な遅滞から、博物館学習教材のデジタルコンテンツの制作も着手までに至らなかった。そのため各費目の支出が計画通りに進められなかった。2021年度は一部が進捗して支出の状況は改善したが、コロナ禍の影響が大きく、2020年度の遅れを2021年にすべて取り戻すことはできなかった。 2022年度はデジタルコンテンツとウェブサイトが年度前半に完成する状況にある。また、博物館や特別支援学校の実態調査は感染症下でも進められる体制を2021年度に整え、博物館出前講座の実践も、当初に計画した規模ではないが進められる環境にある。新型コロナの災禍が悪化しないかぎり、研究を進捗させる見通しは立っている。 ただし、2022年度に研究の遅れをすべて取り戻すことは困難である。本研究期間の1年間の延長を申請し、現時点で残されている課題の7割程度を2022年度中に取り組み、経費を支出していきたいと考えている。
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Research Products
(2 results)