2020 Fiscal Year Research-status Report
Research on the contemporary views of "Japan" in Japanese art exhibits at museums outside Japan
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20K01130
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Research Institution | Tokyo National Museum |
Principal Investigator |
鬼頭 智美 独立行政法人国立文化財機構東京国立博物館, 学芸企画部, 上席研究員 (80321553)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
Wozny Milosz 独立行政法人国立文化財機構東京国立博物館, 学芸企画部, 専門職 (20816813)
楊 鋭 独立行政法人国立文化財機構東京国立博物館, 学芸企画部, 室長 (00584476)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 博物館学 / 展示学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、海外の博物館・美術館(以下、博物館とする)が「日本」として紹介する展示および関連事業において、その範囲、内容、手法を調査、日本国外で博物館が一般に向けて何を「日本」として提示しているか、また誰によってどのようにそのストーリー作りがなされているかを調査し、そこにみられる「日本」観を研究、何がどのように伝わるのかを明らかにしたうえで、我が国の博物館における日本文化財展示の外国人向け英語解説作成のガイドラインを作成することを目的としている。 2020年度は、国内では福岡、国外では英国および米国での調査を予定していたが、コロナ禍による水際対策および国内の移動自粛要請により、海外・遠隔地での現地調査が不可能・困難となった。そのため、欧米主要博物館によるオンライン事業についての調査と、日本美術関係の展示やレクチャーなどの施策の調査を中心として行った。また、欧米の日本美術研究者より、現在の活動状況とオンラインでの一般および研究者向け事業の実施状況について、リモートで聞き取りを行った。 アジア・欧米を中心に、オンラインでの外国語による来館者への情報提供などのサービスの実施状況を調査、整理、現状母国語および英語での事業展開が中心となっていることが確認された。調査で得た情報を基に、展示室内ではなく、インターネット上での展示解説とともに、オンラインで提供される映像、アプリ提供などの実施状況、教育普及事業の種類と内容、特に、各館でのオンラインでの日本美術関係の情報提供の事例を集積、分析を進めている。 国内調査としては、京都において、新規開館やリニューアルした美術館を訪問、現状を視察するとともに、担当者への面談調査を行い、開館時の英語での情報提供の計画と、コロナ禍以降の実態について話しをきいた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
海外の博物館での現地調査を主軸として計画していたため、計画していた英国・米国での調査ができず、ウェブ上および関係者へのメールでの質問調査およびリモートインタビューのみとなっている。また、国内での感染予防対策として政府より他府県への移動自粛が要請されたので、国内調査も初年度の福岡県美術館での調査は実施しなかった。代わりに、京都市京セラ美術館等京都市内での調査に振り替え、関係資料の収集と関係者への面談調査は終了した。また、インターネット上で収集できる情報は収集・整理を進めており、サイト上の外国人向け対応の現状は継続調査中である。 一方、コロナ禍で、外国人観光客の比率がぐっと下がり、多言語での対応の優先順位がそもそも低くなっているところも多く、オンサイトでの母国語以外でのサービス提供が減っている実態が確認された。 欧米の博物館のうち、メトロポリタン美術館、サンフランシスコアジア美術館、シアトル美術館、チェスタービーティ、ハンブルク美術工芸博物館等数館の日本美術担当学芸員に対して、現在の活動状況についてヒアリングを行い、オンラインでのギャラリー・トークやデータベース拡充についての実施状況についての知見を得た。その結果は、東京国立博物館における外国語での情報発信業務の方針を定める資料として活用、調査結果のまとめは館内で共有し、一般向けの事業実施の検討に活用した。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウィルスの感染拡大状況をみつつ、引き続きウェブ上での情報収集とともに、各地の博物館へのメールやリモートインタビューを通じての情報交換・収集を図り、WEB上などで公表できるよう準備を進める。並行して、国内外の博物館における日本美術・文化についての英語での情報発信の現状を調査し、主にオンラインでの情報発信の内容、取り組みの現状と課題を考察する。これにより、英語での情報発信のガイドライン作成に向けて、方針を定めたい。 海外の博物館での現地調査については、政府による水際対策の状況を踏まえ、今年いっぱいは実施が極めて困難な状況が予想されるため、来年以降まで実施を見合わせる。現地調査が難しい間は、WEB上での情報収集と、担当者へのメールおよびリモートでの面談調査について、主に米国・英国・中国・韓国などの各博物館に対して実施、調査結果の整理・分析を進めるようにする。また、コロナ禍で各館のオンラインデータベース拡充への動きが加速したことが昨年度調査で明らかになったことを踏まえ、その進捗状況と課題について引き続き調査を進める。 国内の博物館・美術館については、移動自粛制限が解除となった時点から順次現地調査を実施、情報収集と整理・分析を行うものとする。特に、他府県への移動自粛が要請されている間は、アーティゾン美術館など都内各館での調査を進める予定である。 今年度中に、日本美術作品の収蔵品を持つ欧米およびアジアの各博物館における日本についての発信状況について現状をまとめ、主にどのような内容がどのようなメディアにおいて発信されているか、またその内容について整理・分析して、内容をWEB等で公開する準備を整える。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染拡大予防のための政府による水際対策により、海外への渡航が制限され、現地博物館での調査が不可能となった。また、同様に国内移動も自粛要請がありこれに従ったため、遠隔地での調査実施を見送った。 今年度、これらの制限が解除され次第、感染状況を確認しつつ、可能な国内の地域および渡航可能な国の博物館における現地調査を進める予定である。海外現地調査の実施について、当初計画は米国・英国での調査を予定していたが、新型コロナウィルスの感染拡大状況と予防対策を鑑み、より被害が少ない地域を選んで現地調査先を慎重に決定するとともに、最小人数での実施とする予定である。
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