2021 Fiscal Year Research-status Report
違憲審査における論証責任・論証度の役割と違憲審査基準論の再構築
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20K01272
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
土井 真一 京都大学, 法学研究科, 教授 (70243003)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岸野 薫 香川大学, 法学部, 准教授 (70432408)
伊藤 健 弘前大学, 人文社会科学部, 助教 (40849220)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 違憲審査基準論 / 違憲審査制 / 論証責任・論証度 / 立法事実 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和3年10月23日に第2回研究会を開催し、曽和俊文教授による「行政法学とレメディ論に関する覚書」と題する研究報告が行われた。その後、違憲審査においてレメディの意義、司法判断適合性、人権の保障内容、違憲審査基準とレメディの関係について有意義な意見交換を行った。 また、令和4年3月18日に第3回研究会を開催し、市川正人教授による「違憲審査基準の性格について―比例原則との対比から」と題する研究報告が行われた。その後、合憲性判断基準と違憲審査基準の関係、違憲審査基準論と比例原則論との比較について活発な意見交換が行われ、違憲審査基準の本質に関する解明に進展が見られた。 土井真一は、研究代表者として、研究全体を統括するとともに、Richard H. Fallon Jr.により違憲審査基準の位置づけに関する研究を進めた。また、具体的な課題として、夫婦同氏制に関する最高裁判例を取り上げて、婚姻制度の構築する立法者の裁量を統制する基準について論じた。その後、新たに、違憲審査基準に関する具体的課題として、政教分離違反の審査基準の検討に着手した。 岸野薫は、アメリカ合衆国における違憲審査基準の淵源を明らかにするために、James B.Thayerに関する文献の読解を本格的に進めている。 伊藤健は、違憲審査基準において、論証責任及び論証度をどのように位置づけるか、また具体的にどのように基準を設定するかという課題について、検討を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究全体について、土井の統括の下、各研究者が、それぞれが分担するテーマについて、その研究を着実に進めている。土井は、Fallonによる違憲審査基準の位置づけに関する研究を進め、違憲審査基準論が裁判所と議会などの政治部門との制度的・機能的役割分担に関する側面を有していることから、このような考慮を憲法理論の体系の中でどのように位置づけるべきかについて検討を進めている。また、違憲審査基準に関する具体的課題として、夫婦同氏制に関する最高裁判例を取り上げて、婚姻制度の構築する立法者の裁量を統制する基準について検討し、判例評釈を公表した。さらに、政教分離に関する違憲審査基準の検討を進めており、その成果を令和4年度中に公表する予定である。岸野は、James B.Thayerに関する文献の読解を本格的に進めており、アメリカ合衆国における違憲審査基準の淵源を明らかにする論文を令和4年度中に公表する予定である。伊藤は、違憲審査基準における論証責任及び論証度に関する論文をほぼ執筆しており、令和4年度中に公表する予定である。 このように国内における各研究者の研究は着実に進んでおり、また研究会を通じて視野を広げたり、問題を深めたりすることができている。ただ、コロナウィルスの感染拡大のため、昨年度に引き続いて、アメリカ合衆国を訪問して実施する文献調査及び研究者等へのインタビューの実施を断念せざるを得なかった。したがって、現在までの進捗状況を「おおむね順調に進展している」と評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
令和4年度も、研究の基本的視座及び研究の進捗状況について共有しつつ、各研究者の独自性を活かして、各テーマについて研究を進めて、研究成果を取りまとめる予定である。 まず令和4年度は、遠隔会議システム等を活用して、2回の全体会・研究会を開催する。第1回の研究会は5月に、第2回の研究会は8~10月に開催し、研究の進捗状況について調整を行い、土井が研究成果について報告するとともに、違憲審査基準論及び救済論を専門とするゲストスピーカーを招いて議論を行う。また、2~3月に研究報告会を開催し、各研究者が研究結果を報告し、他の参加者から得た意見を踏まえて、最終的な成果をまとめる予定である。 次に各研究者の個別の研究計画については、土井は、具体的課題として、政教分離に関する違憲審査基準を取り上げて、目的効果基準及びレモンテストを批判的に検討し、相当な限度を超えるかかわり合いの法理について、一般的な目的・手段審査の枠組みから再構成を行い、その成果を公表する。 岸野は、19世紀末から20世紀初頭におけるアメリカにおける最高裁判例の動向を踏まえて、James Thayerの違憲審査基準論に関する研究の成果を公表する。 伊藤は、近時の民事訴訟法学における規範的要件の証明責任に関する議論を踏まえて、違憲審査基準における論証責任及び論証度の意義に関する研究成果を公表する。 なお、令和4年度に、岸野及び伊藤により、アメリカ合衆国における研究者等へのインタビュー調査の実施を予定している。コロナウィルスの感染状況を踏まえて、場合によっては、代替手段による実施を検討する。
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Causes of Carryover |
(理由) コロナウィルスの感染拡大のため、アメリカ合衆国における文献調査及び研究者等へのインタビューが実施できず、また国内の移動にも制限が課されたため、遠方の研究者等との対面における意見交換の機会を設けることが困難であったことから、旅費を中心に次年度使用額が生じた。 (使用計画) 旅費については、コロナウィルスの感染状況を踏まえて、アメリカ合衆国における研究者等へのインタービュー調査の実施ができるように検討する。もし実施が困難である場合には、代替手段により調査等を実施することとし、研究会の開催回数を増やし、ゲストスピーカーへの謝金等に支出することにより、予定通りの額を執行する。
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Research Products
(1 results)