2022 Fiscal Year Research-status Report
Advanced Research for Establishing the Legal Theory of Ethics in Japan: Duty of Integrity for Third Parties
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20K01431
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
石田 京子 早稲田大学, 法学学術院(法務研究科・法務教育研究センター), 教授 (10453987)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 法曹倫理 / 弁護士倫理 / 誠実義務 / リーガルニーズ / 司法アクセス / 弁護士論 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和4(2022)年度は、2021年度までの考察を踏まえて、弁護士を中心とする法律専門職の第三者および社会に対する誠実義務の理論的根拠について、まとめと発信を行うことを予定していた。令和4年度は、コロナの制約も軽減しつつあったため、海外での学会報告4本(うち1本はオンライン参加)、国内での学術会議での報告を2本行うことができた。特に、2022年8月にUCLA(アメリカ)で開催された国際法曹倫理学会では、日本の令和3年4月14日最高裁判例をもとに、弁護士の移動が活発化する中での弁護士会の規律はいかにあるべきかを報告し、参加者からも貴重な意見を得ることができた。さらに、前年より執筆準備を行っていた、弁護士および隣接法律専門職を対象としたリーガル・カウンセリング技法に関する倫理的問題について執筆したものが、共著の著書として公表された(『リーガル・カウンセリングの理論と臨床技法』北大路書房(2022年))。 また、論文も順調に公表することができた。特に、早稲田大学法学会編『早稲田大学法学会百周年記念論文集第1巻 公法・基礎法編』に公表した「弁護士による調査と訴訟代理 : 大阪高等裁判所令和3年12月22日決定および最高裁判所令和4年6月27日を手掛りに」は、弁護士業務が多様化する中で、訴訟代理などの典型的な弁護士業務と、第三者委員会での調査などのそれ以外の業務の関係をどのように理解すべきかを検討したが、本論文は、まさに社会との関係で弁護士の規律はいかにあるべきかを論じたものであり、本研究プロジェクトの主要な成果の1つといえる。 もっとも、上に述べた国際会議での報告内容について、現在英語での論文公表を予定しており、未だ発信部分が完了していないことから、当初の予定よりも研究期間を1年延長することとした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度は、ようやくコロナの制約が緩和されたこともあり、海外出張も2回実施することが叶い、研究はおおむね順調に進展している。2022年度のみで、本研究の知見を基礎として7本の論文を公表し、さらに1本の共著の著書、6本の学会報告(うち4本は国際学術会議)を行うことが出来た。 特に、本科研研究の申請時に提示した2つの視点(タテの軸としての国際的視点、ヨコの軸としての隣接法律専門職も含めた視点)については常に意識した研究を推進してきた。司法書士については、昨年新たな行為規範である「司法書士行為規範」が制定されたが、この制定作業に嘱託委員として参加するのみならず、この過程を踏まえた論文「司法書士行為規範を読む」市民と法138号(2022年)を公表することができた。また、弁護士のみならず、他の隣接法律専門職も対象とした『リーガル・カウンセリングの理論と臨床技法』北大路書房(2022年)における執筆は、まさにリーガル・カウンセリングという場面におけるヨコの軸で専門職倫理を検討し公表する機会となった。 もっとも、懲戒事例の検討については、未だ研究結果を公表できていない。さらに、研究計画書に執筆した、国際的な基準制定への議論に参加し得るような海外での論文公表にはまだ至っておらず、この点が2023年度の課題である。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は延長申請を認めて頂き、本研究の最終年度となる。既に2022年度の海外での国際会議において報告した内容をまとめ、海外のロージャーナルへの論文公表を実現する。既に草稿は出来上がっており、今後これを投稿用に整える作業を行う。具体的には、論文投稿用の英文校正を業務委託し、英文の体裁を整える。 さらに、2023年12月にマレーシアで予定されているAsian Law and Society Associationの年次大会において、研究成果を公表する。 また、本研究企画の中で予定していた、弁護士懲戒事例の検討についても、まとめを行い、これについては適切な媒体での日本語の公表を目指す。 なお、本年より採択された基盤研究B(「DX時代のリーガルサービスとプロフェッション―その法的基盤・専門職倫理・養成」)は本研究の延長線上にあるものである。技術革新を受けて法律家の規律がいかに変更されるべきかの検討は、本研究成果である法律家の第三者や社会的役割を踏まえての検討が必要である。したがって、本研究成果を公表することを本年の優先事項とし、本研究における弁護士の第三者に対する誠実義務の理論化を踏まえて、2023年度後期および次年度以降の基盤研究Bプロジェクトの推進につなげたい。
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Causes of Carryover |
2022年度はコロナ禍における制約は軽減されたものの、それまでの2年間(2020年度、2021年度)は海外出張が全くできなかったことから、事実上の資料収集、学会報告などが当初よりやや遅れていた。2022年度については海外での口頭の学会報告はできたものの、未だこれを海外のジャーナルへの英語論文として整えて公表することができておらず、この部分を2023年度に繰り越した。 使用計画としては、以下の通りである。まず、既に学会報告の際に予め準備した英語論文の草稿があるため、これを海外のロー・ジャーナルへの投稿を視野に入れて英文校正にかける。さらに、資料の翻訳の必要性が生じる可能性が高いため、この部分についても外部への業務委託を利用する。これらの研究費使用により効率的に投稿のための準備をすすめていく。現時点においては、2本の論文の投稿を予定しており、鋭意投稿に向けた準備をすすめる。
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Research Products
(13 results)
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[Journal Article] 「ジェンダーの視点から見たトラブル経験」2023
Author(s)
石田 京子
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Journal Title
佐藤岩夫, 阿部昌樹, 太田勝造編『現代日本の紛争過程と司法政策 = Disputing Process and Judicial Policy in Contemporary Japan : 民事紛争全国調査2016-202』
Volume: -
Pages: 555-574
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