2020 Fiscal Year Research-status Report
Multi-Level Governance in Theory and Practice: Case Studies regarding Discretion
Project/Area Number |
20K01442
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
村上 裕一 北海道大学, 法学研究科, 准教授 (50647039)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | ルールメイキング / エンフォースメント / 条約レジーム / 民主的統制 / 委任 / 評価 / 調整 / 協働 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度の前半はボルドー政治学院にて、後半は在外研究期間満了のため帰国して、本研究に取り組んだ。今年度は下記の3観点から、マルチレベル・ガバナンス(MLG)を研究した。 (1) ルールメイキングの国際政治が注目されがちなワシントン条約レジームの、エンフォースメントを含む多層的・多元的な調整と協働を分析した。①SDGsを念頭に置いたCITESとWTOの調整・協働、②水産種の保護・保全に関するCITESとFAOの覚書締結、③COVID-19に対するCITESとWHO・OIE・FAOのワンヘルス・アプローチを事例に検討し、MLGが、条約レジームの環境適応・生存のための「戦略」とも捉えられると論じた(成果は『年報公共政策学』で発表予定)。 (2) 日本の研究開発費の政府負担割合が他の先進諸国よりも低水準にとどまっている原因と、日本で近年、科学技術基本計画の研究開発投資目標額が達成されていない原因を考察した上で、欧州連合のHorizon Europe策定の過程と理念、及び、スウェーデンのイノベーション行政推進の体制と理念を概観した。それを踏まえて、科技行政における民主的統制と委任(①財政当局等の事前統制の抑制、②予算調整と政策実施の関係整序、③科技・イノベ行政の区別)について提言した(成果は日本公共政策学会と『北大法学論集』で発表)。また、フランスの科技政策の評価制度史などについても情報収集した(成果は『日本評価研究』と『北海道自治研究』で発表)。 (3) 以前に実施した地方創生アンケートの結果を改めて分析し、フランスとの比較も交えて、「平成の大合併」と地方創生の政策手段・プロセスとしての市町村合併・連携を評価し、その条件や効果、自治体の思考様式の理論構築を試みた(成果は『日本評価研究』で発表)。また、フランスにおけるCOVID-19対応についても、中央地方関係や官民関係の観点から分析した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
MLGは、官・民の様々なアクターやルールがある組織・権限構造をなす空間において、人や組織、ルールの間にいかなる水平的・垂直的調整があるかに注目する。 本研究では、①MLG事例での裁量の態様の解明、②政策のインプットとアウトカムとを繋ぐことによる規範的研究、③成果の社会実装に向け望ましいMLGの条件抽出、を目的としている。 今年度は、特に上記①について、検討対象・事例の範囲をさらに広げた上で、discretionの態様を解明し理論に還元するということを計画していたところ、結果として、上記の通り、(1) 条約レジームのルールメイキングとエンフォースメントにおける調整と協働、(2) 科学技術行政における民主的統制・委任と評価、(3) 平時・有事の中央地方・官民関係、の3つに取り組むこととなった。 在外研究先のフランスで遭遇したパンデミックに伴う移動規制により、広範囲でのフィールドワークは困難になったが、その分、前半はフランスで、後半は日本で、文献調査と理論的検討、オンラインでの意見交換、成果の取りまとめといったことに注力することができ、成果発表やアウトリーチに繋げることができた。その間のフランスの共同研究者との意見交換にも、大きな意義があった。 以上を総合し、「おおむね順調に進展している」とした。
|
Strategy for Future Research Activity |
まず、今年度にやり残した成果報告とアウトリーチを行う予定である(地方公共交通とCOVID-19対応の日仏比較について)。 それと併行して、今年度の各論文で整理した今後の課題(例えば、①MLGにおける調整が進む条件の考察、②MLGが望ましいアウトプット・アウトカムに繋がる条件の考察、③条約レジーム自体の変容や社会変革と、そこでのMLGのさらなる追跡)に取り組む。 それとともに、次年度も引き続き、MLG事例での裁量の態様の解明に向けた調査研究を行う。その際、当初計画していた通り、インプットとしてのMLGがいかなるアウトプットやアウトカムに繋がったかという因果関係を捉え、ガバナンスを構成する様々な利害関係者がどのようにdiscretion(裁量)をshare(共有)したときにより望ましい政策的アウトプットがなされたか、を整理することにも努める。 そうすることで、「人や組織にどのようなdiscretion(裁量)(と権限)をどう配分すれば、民主的・公益的に望ましい政策を決定・実施できるか」を明らかにしていきたい。
|
Research Products
(11 results)