2022 Fiscal Year Research-status Report
New Aspects of Karl Marx's Theory of Traverse in MEGA
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20K01573
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
守 健二 東北大学, 経済学研究科, 教授 (20220006)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | マルクス / 新オーストリア学派 / トラヴァース / 恐慌 / MEGA |
Outline of Annual Research Achievements |
本申請研究の研究方法は、1)新オーストリア学派トラヴァース理論の理論的検討、2)マルクス経済学草稿におけるトラヴァース分析の発掘と理論的再構成、3)学会報告、論文投稿等による研究成果の発信と討論、4)英文出版Book Proposalの準備である。 研究方法1)に関して、マルクスのトラヴァース分析を理論化する試みとして、恐慌現象を不連続点として扱うことを可能にするために、超関数論、ラプラス変換を用いたモデル構築を行い、その研究結果を報告原稿としてまとめ、全国学会において報告した(下記3)参照)。研究方法2)に関しては、2021年度の「研究実績の概要」で述べたように、「新マルクスエンゲルス全集」(MEGA)第II/4.3巻の精査によって、マルクスの1867-68年利潤率草稿がリカード機械論の移行過程分析に影響を受けて構想されたことを確かめたが、2022年度に再度同草稿を吟味した結果、新たな理論的特徴を発見することができた。そこでは、「前貸資本利潤率」と「費用価格利潤率」を区別し、両利潤率の差異として資本回転を分析するのであるが、その分析が動学レオンチェフモデルにおける二つの投入係数行列(資本投入係数行列Bと経常投入係数行列A)の分析の原型をなすものとして再構成可能であるということである。併せて、数理マルクス経済理論及び動学レオンチェフモデルかんする研究動向を踏まえるために、関連の文献調査を行い、それに基づいて国内外の研究論文を精査した。研究方法3)については、上記1)に関する研究成果を経済理論学会第70回大会において報告を行い、コメンテーターによる論評および討議を通して彫琢を図った。さらに、数理マルクス経済学に関する新著について書評を執筆し、専門誌へ掲載した。研究方法4)については、英文書籍を国際出版する企画について、出版社の編集者と連絡を取り意見交換を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究方法1)に関しては、年度当初の計画(2021年度実施状況報告書「今後の研究の推進方策」)では研究結果をディスカッションペーパーとして公表するとしていたが、より直接的な論評および討論を要すると判断して、全国学会での発表へ切り替えて、期待された結果が得られたので順調な進捗と言える。研究方法2)については、年度当初の計画では、研究結果の国際誌への投稿を予定していたが、上記「研究実績の概要」で述べたように新たな発見により論文構想の再構成が必要になった。これは研究の深化による精緻化プロセスの発生であり、研究の単なる遅延とは区別されるべきであろう。研究方法3)についても、計画通り、研究成果の学会報告による公表と討論が期待通りの成果を得、また数理マルクス経済理論の新刊書の書評も公表を見たので順調に進捗したと言える。研究方法4)については、着実に情報収集が進捗していると言える。 ただし、研究方法2)に関する当初計画ではマルクスのオリジナル原稿ならびに関連史料の実見のためにアムステルダム社会史国際研究所ないし大英図書館への出張が予定されていたが、(2022年3月の福島県沖地震による講義室損壊に起因する)教育負担の増加等により実施が不可能になった。この点が、全体として進捗状況が「やや遅れている」と判断される理由である。
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Strategy for Future Research Activity |
研究方法1)に関して、2022年度の学会報告の成果を踏まえ、超関数論、ラプラス変換を用いた新オーストリア派モデルとスラッファ多部門モデルとを統合したモデルのさらなる彫琢を進め、そのモデルに基づく分析結果の国際誌への投稿を目指す。研究方法2)に関しては、これまで延期されてきた、マルクスのオリジナル原稿ならびに関連史料の実見のためのアムステルダム社会史国際研究所ないし大英図書館への出張を実施し、その成果と、2022年度に得られた新たな知見を含めたより拡充・精緻化した研究成果をまとめ、国際誌に投稿したい。研究方法3)については、上記知見(すなわち、マルクスの1867-68年利潤率草稿における「前貸資本利潤率」と「費用価格利潤率」の区別による資本回転分析と、動学レオンチェフモデルによるその再構成)に関する研究結果を2023年6月1-3日開催ヨーロッパ経済学史学会(ESHET)第26回大会で報告する。さらに、同6月21-23日開催のドイツ社会政策学会経済学史部会に出席し、その機会にスラッファモデルと新オーストリアモデルの統合に関して専門家と意見交換を行う。研究方法4)については、英文書籍を国際出版する企画について、さらに情報収集を進め、book proposalの執筆開始を目指す。
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Causes of Carryover |
次年度使用が生じた理由は、上記「現在までの進捗状況」において述べたように、やむを得ない事態により2022年度もマルクスのオリジナル原稿ならびに関連史料の実見のためのアムステルダム社会史国際研究所ないし大英図書館への出張を実施することができなかったが、事業補助期間延長が承認されたので、2023年度に上記の課題を実施するためである。具体的な使用計画としては、研究方法2)に関連して、マルクスのトラヴァース分析の理論的再構成を精緻に行っていくに当たり、MEGA第II/4.3巻に所収されたマルクスの1867-68年利潤率草稿が、錯綜した筆記状態として遺されているために、マルクスのオリジナル原稿ならびに関連史料を実見する必要があるが、そのために2023年度にアムステルダム社会史国際研究所へ出張を実施する。さらに、マルクスのトラヴァース分析の基になった1857年恐慌研究については、イギリスの工場監督官報告などの影響を精査する必要があり、その資料収集のため大英図書館への出張を実施する。併せて新たに、上記「今後の研究の推進方策」で述べたように、補助事業の目的をより精緻に達成するため海外の国際学会(ヨーロッパ学史学会およびドイツ社会政策学会経済学史部会)に参加する。
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Research Products
(2 results)