2021 Fiscal Year Research-status Report
China's demographic change and its impact on the bilateral US current account balance with China: Theory and Empirics
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20K01760
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Research Institution | Nanzan University |
Principal Investigator |
稲垣 一之 南山大学, 経済学部, 准教授 (70508233)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 経常収支 / 平均寿命 / 国際資本移動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は人口動態によって米中二国間経常収支を分析する点に特徴があるが、その中で注目する人口変数は、(1)高齢者の数、(2)子供の数、(3)高齢者の就業期間、(4)人々の寿命の長さ、である。このうち(1)から(3)については前年度に2本の論文が出版済みであるため、今年度は(4)に基づいた研究を完成させた。 本研究が計画の段階で仮説として提案した「平均寿命ギャップと経常収支のU字型関係」の存在について、アメリカと中国のデータによって立証することに成功した。利用可能な全ての期間(2003年から2019年)の時系列データを使用し、非線形共和分の手法に基づいて130通りの分析結果を出したが、その全てで仮説通りの関係性が支持された。そのため、本研究の仮説を支持する十分な証拠が確認された。この結果は、当初は悪化したアメリカの対中国経常収支が、中国の平均寿命の更なる上昇によって、今後は改善することを意味する。 また、上述した実証分析の結果に対して理論的な解釈を与えるために、新たな経済モデルを開発した。米中の最新のデータに基づいたパラメータを使用し、当初は平均寿命が低い外国の人々の寿命が上昇し、自国の平均寿命との差が小さくなる過程で、自国の経常収支が最初は悪化するが、その後は改善することを示した。これは実証分析の結果と整合的であり(自国=アメリカ、外国=中国)、平均寿命ギャップに重きを置いた経済モデルによって米中経常収支の変動を理論的に再現することに成功した。 中国の平均寿命が急速に上昇していることを前提とすれば、以上の分析結果は、アメリカの対中国経常赤字が今後は改善することを意味する。そのため、米中貿易摩擦に対して重要な示唆を与える研究成果となることが期待される。 この研究成果は、査読付きジャーナルに投稿中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究は人口動態によって米中二国間経常収支を分析する点に特徴があるが、その中で注目する人口変数は、(1)高齢者の数、(2)子供の数、(3)高齢者の就業期間、(4)人々の寿命の長さ、である。このうち(1)から(3)については前年度に2本の論文が出版済みであり、今年度は(4)に基づいた研究内容をまとめて、査読付きジャーナルに投稿することが出来た。残りの研究期間は1年であるが、この間に当該論文が学術ジャーナルに採択されれば、当初に計画した全ての分析が出版という形での成果となる。
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Strategy for Future Research Activity |
学術ジャーナルに投稿中の論文について、審査結果が出され次第、追加的な分析を含む論文の修正を行う予定である。また、これまで使用したデータベースのライセンスを1年間延長したため、新たな分析を開始する予定である。具体的には、中国では少子化による労働力不足を機械(特にロボット)で補う傾向があるため、本研究の拡張としてオートメーション技術に注目した経常収支の分析を行う。この研究が具体的な形になった場合には、学会報告を積極的にこなす予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染拡大に伴い対面形式での出張がなくなったため、旅費に充てる予定であった経費の多くを次年度に繰り越すこととなった。次年度の使用計画として、既に高額のデータベースのライセンスを1年分購入しており、助成金のほとんどを使用することが決まっている。対面での出張は予定されていないため、残りの助成金は英文校閲などで使用することを計画している。
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