2021 Fiscal Year Research-status Report
電子記録移転権利がもたらす資本会計上の課題に関する研究
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20K02007
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
野口 晃弘 名古屋大学, 経済学研究科, 教授 (90208314)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 電子記録移転権利 / 分散型台帳技術 / 資本会計 / エクイティ・トークン / ブロックチェーン |
Outline of Annual Research Achievements |
電子記録移転権利での活用が想定されるブロックチェーンについて,情報システムの観点から先行研究のレビューを行った。 1980年代から発展したREA会計モデルが,情報システム構築のためのオントロジーとして発展し,電子商取引を支えるオープンEDIを構築するためのフレームワークとして標準化された経緯についてまとめた。REA会計モデルは,従来の会計理論そのものに置き換わるものではなかったが,会計情報システムを設計するための事象の捉え方として発展し,電子商取引を支えるオープンEDIを構築するためのフレームワークとして標準化された(ISO/IEC15944-4:2007)。なお,REA会計モデルでは,資本会計で必要とされる仕訳を説明する上で,課題が残されている。 取引記録に関する証憑の置き場所としてのブロックチェーンの可能性について,実用化されているブロックチェーンの事例とブロックチェーン上の記録を活用した付加的な会計情報システムの事例を組み合わせて,将来のブロックチェーンと会計情報システムの組み合わせに関するイメージ図を作成した。ブロックチェーンは当初,暗号資産の実用化により注目された技術ではあったが,記録システムとしての活用の範囲は広く,会計処理の対象となる取引記録の保管方法を大きく変革する可能性があり,既にその実用化も進められている。 実用化されている暗号資産の中に,単純に無形の投機対象としてだけでは捉えきれないものが含まれていることが,オンラインで開催された研究会における報告の内容から明らかとなった。事業を担う主体が,株式会社であるとは限らないことも視野に入れる必要がある。 なお,これまでの研究成果については,「DX時代の会計学」と題した研究動向にまとめ,公表している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナ禍に伴って海外渡航及び海外からの招聘が困難となり,当初の研究実施計画で予定していた海外の研究者との交流が,オンラインのみという形で著しく制約されてしまっている。2020年度は文献研究やウェビナー等からの資料収集を前倒しして実施することにより,影響を最小限にとどめることができたものの,2年連続して,国内出張でさえ制約される状況が続いたため,研究の推進にやや遅れが生じている。 参加することを予定していたAccounting Blockchain Coalitionの研究集会は,会場がニューヨークということもあり,この間,2年連続で開催されておらず,ブロックチェーンの専門家の集まる機会がまだ復活していない。 加えて,2020年7月の時点では,2020年9月に公表を目標とされていた電子記録移転権利の会計処理に関連した公開草案及び論点整理が,実際に公表されたのは2022年3月15日であった。国内における発行事例の停滞だけではなく,基準整備も進んでいない。
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Strategy for Future Research Activity |
3月に電子記録移転権利の会計処理に関連した公開草案及び論点整理が公表されたことから,まず,それらの内容について研究を進め,制度会計上の課題を明らかにするとともに,特に論点整理に関連して,ガバナンス・トークンのような新しい発想に基づくトークンの会計問題に関する論文をまとめる。 研究計画のうち,文献研究については,公開草案等の公表の遅れに伴う影響はあるものの,今年度その遅れを取り戻すことができると考えられる。研究を遂行する上での大きな課題は,海外の研究者との対面での意見交換の機会が,渡航制限等により制約されてしまっていることにある。コロナ禍の影響で,ブロックチェーンに特化した研究団体(Accounting Blockchain Coalition)の研究集会が2020年,2021年,は開催されておらず,情報収集及び人脈開拓の場が失われたままの状況にある。 オンライン開催の国内外の研究集会に引き続き参加し,情報収集及び人脈開拓を続けることによって対応するものの,withコロナ政策を打ち出した地域においては,対面による学会開催に回帰し,オンラインでアクセス可能な範囲が限定され始めている。そのためオンライン併用での開催に力を入れている国際研究集会を探す必要がある。
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Causes of Carryover |
コロナ禍の影響で国内外への出張及び招聘が困難となり,旅費や謝金の繰越が発生している。対面での国際学会・国際研究集会が開催されるようになり,かつ,水際対策措置が緩和され,自由な海外渡航が可能になり次第,海外で開催される情報技術及びブロックチェーンに関する国際学会・国際研究集会に参加し,対面での研究活動の遅れを取り戻す。
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Research Products
(3 results)