2022 Fiscal Year Research-status Report
アルゴリズム取引の進展による意思決定プロセスの変容と会計情報の役割
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20K02024
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Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
石光 裕 京都産業大学, 経営学部, 教授 (90449504)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | アルゴリズム取引 / 有価証券報告書 |
Outline of Annual Research Achievements |
アルゴリズム取引は、PC上などで動くプログラムを用いて行う取引であり、企業に関連する情報を入手し、その情報に基づいて証券投資を行う。近年のアルゴリズム取引は拡大の一途をたどっており、それに伴い使用される情報の範囲や形式にもさまざまなものが出てきている。ただしプログラム上でこれら情報を取り扱うためには、PCが利用可能な形式に変換する必要があり、動画、音声など多種多様な情報をそのまま取り入れることができるわけではない。投資家が利用する重要な情報源の1つとして企業活動の様子や財務情報などが記載されている有価証券報告書がある。有価証券報告書はXBRL形式というPCが取り扱いやすいかたちで記述されており、そこからのデータ利用も比較的容易に行うことができる。そのため、現状においてアルゴリズム取引に利用可能な情報といえ、有価証券報告書データの取り扱いに焦点を絞って研究を行った。 具体的には、有価証券報告書データを対象に,どのような技術をもちい、どのような情報を取り扱うことができるのかを、経営学以外の分野の先行研究も交えて検討を行った。その成果は、近藤隆史・石光裕(2023)「有価証券報告書へのテキストマイニングの適用に関する文献レビュー」『京都マネジメント・レビュー』第 42 号に取りまとめられている。検討の結果、工学分野での知見(機械学習・ディープラーニングを用いた特徴語・特徴文を抽出するための学習モデルの構築とその手順の提案)は、会計やファイナンス分野でより高度な分析を行う上では不可欠であるにも関わらず、ほとんど応用できていない現状を確認することができた。これらの実際の活用については、今後の研究課題としたいと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
先にも触れたように、今後の分析を進めていくうえで必要となるテキストマイニングを適用した先行研究のレビューを終えており、さらに検証に用いる基本的なデータセットも準備(直近の有価証券報告書のデータセットの取得と整備)している。現在、複数ある検証課題の絞り込みを行っている段階である。進捗がやや遅れているのは、検証課題の設定、使用する検証方法について、できるだけ多くの候補の中から適切なものを選択しようと考えたためである。
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Strategy for Future Research Activity |
先行研究のレビューから、工学分野での知見(機械学習・ディープラーニングを用いた特徴語・特徴文を抽出するための学習モデルの構築とその手順の提案)は、会計研究にほとんど応用できていない状況であった。そこで検証課題が設定され次第、追加で必要となるデータセットの整備および使用する特徴語・特徴文の具体的な抽出方法の検討を行っていき、検証を進めたいと考えている。
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Causes of Carryover |
特徴語および特徴量の抽出に関して、予想以上に多くの選択肢があることが判明したため、これらを実際に検証に用いた研究者とディスカッションを行う機会を設けることが有用となる。また本年度に行う予定であったインタビューも数件残されている。これら結果もふまえて、研究成果を取りまとめたいと考えたためである。
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