2020 Fiscal Year Research-status Report
盆踊りによるコミュニティ形成に関する地域社会学的研究
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20K02173
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Research Institution | Otemon Gakuin University |
Principal Investigator |
足立 重和 追手門学院大学, 社会学部, 教授 (80293736)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ポスト観光化の盆踊り / コミュニティ / 生活環境主義 / 経験論 / 言い分の重層性 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は、本研究を推し進めるための認識論・方法論の整備に注力した。“ポスト観光化の盆踊り”によるコミュニティ形成にアプローチする社会学理論として最有力なのは、1980年代に登場した生活環境主義なのだが、2000年代に入って、生活環境主義は政策論的には陳腐化しており、そのバージョンアップが叫ばれるようになった。 だが、このような批判に対し、研究代表者は、2000年代に入った新自由主義の潮流においても、大枠では生活環境主義がいまだ有効であると主張した。というのも、「生活」をトータルにとらえることで、現代の人びとの生活全体が、その一部である「仕事」や「経済」に浸食されているさまを分析し、そのうえで地域生活において何が必要かを提言することができるからである。このような利点を活かしつつ、本年度の研究では、少子高齢化と新自由主義化のなか、一枚岩ではない地元住民の生活に迫る、新たな生活環境主義理論を模索した。 そのために、研究代表者は、これまでの生活環境主義を可能にした日本民俗学をはじめとするわが国独自の生活論の伝統に立ち返りながら、現行の生活環境主義が核とする経験論を再考した。そこから見えてきたのは、経験論の主要な概念である「言い分」「説得と納得の言説」に対して、生活環境主義者たちは、そこに暮らす「人びとの心」を仮託してきたのだが、その両者がズレる可能性をうまく理論化できていないことであった。そこで、研究代表者は、「言い分」と「人びとの心」がズレる戦略的な言い分を「表層的な言い分」とし、両者が一致するときに伝わる、未だ語りえない心的事実を「深層的な言い分」とし、言い分が重層化するという、新たな生活環境主義を仮説的に提示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2020年度は、申請時には予想だにしなかった、新型コロナウィルスの感染拡大によって、フィールドである岐阜県郡上市八幡町にてフィールドワークをすることがほとんどできなかった。第1波が比較的収まった6・7月には現地に行って、新型コロナ禍の現地の状況を知ることができた。ところがその後、第2、3、4波と立て続けに感染拡大が起こり、夏に開催される郡上おどりも中止された。また、聞き取り調査にかんしても、郡上おどりの継承を担っている地元住民は高齢者が多く、聞き取り時の感染リスクが懸念されるだけでなく、そもそも大阪という都市部の感染蔓延地域から比較的感染が穏やかな現地に入ること自体、はばかられる状況であった。そのため、本研究の中心であるフィールド研究が立ち遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度も新型コロナ禍が続くことを前提に、今後の研究の推進方策としては、現地で長年付き合いのある地元住民と頻繁に連絡を取りながら、現地でのワクチン接種や地元外の人びとの滞在などの状況を見極めつつ、現地に入る機会を窺う。そのうえで、もし現地に入ることができれば、感染対策を徹底した独自のガイドラインを作成し、それに同意いただいた方々からインタビュー調査を再開していく予定である。 また、2020年度は、フィールド調査を断念せざるをえない状況のため、理論研究のほうに注力してきたが、2021年度も引き続き、理論研究を重点的に実施していくものとする。
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Causes of Carryover |
2020年度は、新型コロナウィルス感染拡大により、フィールドである岐阜県郡上市八幡町での現地調査ができなかったため、その分が次年度使用額として生じた。2021年度は、翌年度分として請求した助成金と合わせて、感染対策を徹底したガイドラインを設けたうえで、現地調査を再開すべく、その交通費および滞在費で使用する。また、2020年度から継続してきた理論研究を、2021年度もさらに発展させるため、地域社会学、民俗学、文化人類学の専門書の図書費に充てる。
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Research Products
(3 results)
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[Book] Community sustainability and resilience: Life-environmentalist perspective2021
Author(s)
Daisaku YAMAMOTO, Hiroyuki TORIGOE, Takehito NODA, Yusuke HIRAI, Shusuke MURATA, Rie MATSUI, Shigekazu ADACHI, Kyoko UEDA, Atsushi YAMAMURO, Hiroyuki KANEKO, Meifang YAN, Kiyoshi KANEBESHI, Tomonori ISHIOKA, Kazunori MATSUMURA, Masaharu MATSUMURA, Yumiko YAMAMOTO, Motoji MATSUDA
Total Pages
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Publisher
Routledge