2022 Fiscal Year Research-status Report
盆踊りによるコミュニティ形成に関する地域社会学的研究
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20K02173
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Research Institution | Otemon Gakuin University |
Principal Investigator |
足立 重和 追手門学院大学, 社会学部, 教授 (80293736)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ポスト観光化の盆踊り / 人口減少社会 / 少子高齢化 / 地元住民のコミュニケーション / 交流 |
Outline of Annual Research Achievements |
事例である「郡上おどり」の継承は、現在「郡上おどり保存会」という地元有志団体が一手に引き受けてきた。ところが、少子高齢化のなか、保存会も高齢化していくため、このままでは毎シーズン約30日間もの公式日程を踊り継ぐことが厳しくなりつつあった。そこで、本年度は、人口減少社会における“ポスト観光化”の盆踊りの継承として、保存会だけでなく、様々な団体に分担してもらう可能性を検討した。具体的に言えば、公式日程のおはやしを、保存会だけでなく、保存会以外の各団体の責任で一晩任せるのである。現在、保存会以外にも、「郡上おどり保存会ジュニアクラブ」やそのOB・OGの会、各地区の「おはやしクラブ」がすでに結成されている。これらの団体にゆくゆくは一晩中おはやしを担当してもらい、そのような日を30数日のうちの何日か割り当てるのである。そうすることで、保存会を含めた各団体が切磋琢磨しあい、おはやしのレベルアップにつながるだろう。 では、このような分担のなかで、保存会の役割はどうなるのか。これからの保存会は、歴史ある民間の技術集団として、30数夜の公式日程の「実演」から各団体のおはやしの「指導」へ軸足を移すことがもとめられている。ただしその指導とは、「師匠―弟子関係」のような厳しく、効率的な技術習得ではなく、ゆったりとした人びとの「交流」を主目的にすべきである。というのも、そもそも郡上おどりのような民俗芸能は、地元住民自らが演じて自らが楽しむものなので、地元住民のコミュニケーションを活性化して、最終的には地元コミュニティ全体を盛り上げる目的をもつからだ。とくに、「交流」ベースの指導は、郡上八幡の子どもや若者、さらにIターンなどの移住者にとって、郡上おどりをより身近にするだけでなく、郡上八幡というコミュニティへの帰属意識を高めるであろう。そうすることで、人口減少社会のなかでも継承の永続性が高まるであろう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2022年度も、2020年から始まる新型コロナウイルス感染拡大の影響で、郡上おどりの公式日程約30日のうち17日しか開催されず、相変わらず高齢者への対面でのインタビュー調査ははばかられる状況が続いた。こちらが思うようなインタビュー調査はできていない。だが、過去2年とは異なり、地元住民も、コロナ対応にも慣れてきたせいか、徐々にではあるが、地元住民の集まりが再開していき、参与観察を中心にした調査は比較的スムーズに行えるようになった。そのなかで、ポストコロナ時代を見据えた郡上おどりのあり方が地元でも議論されるようになっており、その糸口が掴めたように思う。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年3月13日よりマスクの着脱が個人判断に任されるようになり、また5月8日からは5類感染症に引き下げられたことで、新型コロナウイルスに関しては、ほぼ収束したとみてよい。ただ、事例地である郡上八幡は高齢者が多く暮らしているため、引き続き感染対策を徹底しながら、本格的にインタビュー調査を再開していきたい。また、郡上おどりの公式日程も、コロナ前の30日に戻る予定であるので、シーズン中の踊り会場の参与観察も実施し、これまでの研究の遅れを取り戻すつもりである。
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Causes of Carryover |
2020~2022年度において、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、フィールドワークが実施できず、それにともない、旅費が十分に使用できなかった。また、現地調査が制限されたため、資料整理のためのアルバイトの雇用が不必要だった。2023年度は、旅費に約32万円、物品費に約10万円、人件費に約10万円を使用する計画である。
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Research Products
(5 results)
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[Book] Community sustainability and resilience: Life-environmentalist perspective2023
Author(s)
Daisaku YAMAMOTO, Hiroyuki TORIGOE, Takehito NODA, Yusuke HIRAI, Shusuke MURATA, Rie MATSUI, Shigekazu ADACHI, Kyoko UEDA, Atsushi YAMAMURO, Hiroyuki KANEKO, Meifang YAN, Kiyoshi KANEBESHI, Tomonori ISHIOKA, Kazunori MATSUMURA, Masaharu MATSUMURA, Yumiko YAMAMOTO, Motoji MATSUDA
Total Pages
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Publisher
Routledge
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