2023 Fiscal Year Research-status Report
盆踊りによるコミュニティ形成に関する地域社会学的研究
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20K02173
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Research Institution | Otemon Gakuin University |
Principal Investigator |
足立 重和 追手門学院大学, 社会学部, 教授 (80293736)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ポスト観光化の盆踊り / 人口減少社会 / 少子高齢化 / 若者 / U・Iターン |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の研究は、郡上おどりの新たな担い手となる若手のUターン者・Iターン者の生活実態に迫った。これまでのUターン・Iターン研究では、1990年代後半からの、地方に移り住んできた人々の新しい価値観と地元住民のそれとの対立関係をえがくものと、2000年以降にみられる、移住者が地元で信頼される「仲立ち」に導かれて地元のネットワークに入り込んでいくものの2つがあった。これら2つの研究史の流れはともに、Uターン・Iターン者の移住を起点にした地元住民―移住者関係の展開過程を追う傾向にあるが、そうしたU・Iターン者がともに「若者」であり、当該地域の移住以前にそのウチとソトで共通するドミナントなキャリア形成をモデルにしてきたことを分析に含み込めていない。 上記の点から郡上八幡のU・Iターン者へのインタビューをみていくと、郡上八幡に育ってきた若者も、それ以外の若者もともに、いったんは都市部で大学などの高等教育を受け、ホワイトカラーとして雇用されるというドミナントな共通体験をもっており、それへの疑問・抵抗・離脱から郡上八幡での暮らしに魅力を感じ、U・Iターンしてきている。この移住前のドミナントな経験を、調査対象者である若者たちは「主流の生き方」と呼ぶ。 しかしながら、いったんそうしたキャリアを歩んだ若者は、次の2つの点で、郡上八幡での生活にちょっとした違和感をもちつづけている。1つは、そのようなキャリアから郡上八幡での仕事に“やりがい”が見出せないことである。“やりがい”を見つけようとすれば、手に職をつけて店を開くか、高度な専門性をもつか、という独立の道しかない。もう1つは、地域コミュニティが共的なかかわりを知らず知らずにもとめるために、公私(あるいは公共私)の境界がはっきりしないことである。つまり、彼らにしてみれば、「オンとオフの切り替えができない」のである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年から始まる新型コロナウイルス感染拡大もようやく収まり、フィールドワーク先では、マスクせずとも気軽にインタビューなどに応じてもらえるようになった。そのせいもあり、過年度において遅れていた現地調査がようやく可能となり、郡上おどりに魅力を感じ移住を決めた若手のUターン者やIターン者の生活実態が明らかになったきた。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度のフィールドワークにて多くの若手U・Iターン者にインタビューすることで、郡上おどりの継承という点だけで研究を進めるのでなく、郡上おどりをふくめた郡上八幡でのライフスタイルをより包括的な視点で研究を進めていく必要があると実感した。そのうえで、本研究が“いかにして郡上八幡への若者の定住を促進していくのか”という実践性をより強めなければならないと感じている。以上の点から、引き続き、郡上八幡の若手移住者の意識に焦点をあてたインタビューを積み重ねたい。
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Causes of Carryover |
2023年度は新型コロナ禍がほぼ収束しフィールドワークが開始できたとはいえ、2020~2022年度の3年間まったくフィールドワークができなかったのが尾を引いており、やはり旅費が十分に使用できなかった。ただようやくデータが集まり始めたので、2024年度は資料整理のための人件費が必要となる。以上を考慮し、2024年度は、旅費に約5万円、人件費に約10万円を使用する計画である。
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Research Products
(3 results)