2020 Fiscal Year Research-status Report
戦後保健室の成立と機能拡大過程ー実践を創出する空間の重層性と多機能化ー
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20K02531
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
竹下 智美 茨城大学, 教育学部, 講師 (90735193)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 保健室 / 養護実践 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、1941(昭和16)年に制度化された「衛生室」から1958(昭和33)年の戦後学校保健法制定に伴って必置に至った「保健室」における機能的展開の過程を明らかにすることを目的とし研究を進めている。 令和2年度は、コロナウイルス感染症の影響もあり、史資料の収集が大幅に遅れていはいるものの、オンライン中心に戦前の史資料を入手し、これまで筑波大学図書館をはじめとした大学図書館および都道府県立公文書館および図書館で収集した戦後の保健室に関する史料と併せて時系列的に整理し、分析を行った。 具体的には、本研究の対象時期である戦前・戦中の学校衛生活動は、「空間」や「モノ」に規定されながら行われる活動が多いにも関わらず、空間や設備品についての整理がこれまでほとんどされてきていないことから、まず、1941(昭和16)年から1958(昭和33)年の衛生室(保健室)に設置されていた設置品の詳細とその配置、学校衛生施設(衛生室)の学校における位置を校舎図面から明らかにし、その変遷を時系列的整理を行った。 また、戦後の保健室の実際的機能においても子どもの健康問題とともに拡大しているにも関わらず、その基本的機能は、1941(昭和16)年の養護訓導制度にあわせて定められた「衛生室設備準則」以降、戦後教育改革においてもその制度的機能がほぼ変わることなく維持され、今日まで継続していることから、今一度、戦前・戦中・戦後にかけての子どもの健康問題の変遷を明らかにし、学校保健施設についても制度的整理を行った。 以上が、今年度の成果であるが、ただし、史料の収集が、予定していた半数ほどにとどまったため、令和3年度以降に、残りの史料の収集をし、分析結果をまとめていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
令和2年度は、コロナウイルス感染症の影響もあり、史料の収集が思うように進まなかったため。
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度も引き続き、学校衛生関係史料を中心とした学校衛生施設・設備品の第一次史料の収集を進め、体系的に整理していく。また、これまで収集した神奈川県立公文書館、東京都公文書館、群馬県立文書館、東京大学医学図書館等の各大学図書館、および国立公文書館、各県立図書館、野田市立中央学校史料館等に所蔵の学校衛生史料、筑波大学体育研究科所蔵野村良和蔵書史料についてもその整理を進めていく。その上で、とりわけ、保健室の設置品および設備品の配置の変化を学校衛生施設(衛生室)の設置位置や見取り図とそこに設置された設備品を時系列的に整理し、図像的(物理的)変化とその特徴を明らかにする。その際、当時の社会の健康問題および学校で注目された健康問題や疾病構造の変化についても同時に整理し、重ね合わせながら、分析を行っていく。令和4年度は、昭和16年に制度化された「衛生室」から1958(昭和33)年の戦後学校保健法制定に伴って必置に至った「保健室」における ソフト面、すなわち養護訓導から養護教諭へ保健室実戦の変化を明らかにしていく。その際、戦中から戦後にかけての子ども健康問題に関わった人々(学校関係職員、学校三師、PTA、民生委員、地区保健課、保健所、警察等)の学校保健実践をこれまでの研究で体系化された戦後の子どもの健康問題(栄養失調や結核問題、う歯問題等)への取り組みの詳細とその実態とともに明らかにするために今一度その詳細を整理する。また、学校のみならず、社会全体での子どもの健康問題への取り組みや対策とも重ね合わせながら、具体的に誰がどのように対応していたか明らかにしていく。その上で、それら取り組みにおいて「保健室(衛生室)」がどのように関わっていたか明らかにし、保健室機能の変化の特徴を明らかにする。
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Causes of Carryover |
令和2年度は、コロナウイルス感染症の影響により、史料収集を予定していて施設等の休館等により、次年度に計画を変更せざるを得なかったため、引き続き、史料収集のための旅費として使用を予定している。
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