2020 Fiscal Year Research-status Report
高大連携による情報科の「モデル化とシミュレーション」教育のデザインに関する研究
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20K03125
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Research Institution | Iwate Prefectural University |
Principal Investigator |
市川 尚 岩手県立大学, ソフトウェア情報学部, 准教授 (40305313)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
後藤 裕介 岩手県立大学, ソフトウェア情報学部, 准教授 (40454037)
高木 正則 岩手県立大学, ソフトウェア情報学部, 准教授 (80460088)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 情報教育 / モデル化とシミュレーション / 高大連携 / 情報科 / 社会シミュレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
新学習指導要領では高等学校情報科の内容が高度化し,すべての高校生がモデル化とシミュレーションについて学習することになった.本研究は,実質的な高大連携による情報科のモデル化とシミュレーションの教育を中心として,デザイン原則の創出と学習環境の要件の整理を目的とした教育実践研究である.1年目は教授法の検討を中心に進め,学習者による仮説・モデルの検討や実装・評価という改善サイクルに焦点をあて,モデリングサイクルシートを開発し,2種類の実践に導入した. まず,専門学科「情報科」を有する3つの高校との高大連携として,遠隔による課題研究の実践を行った.学校での感染防止をテーマとし,エージェントベースのシミュレーションを構築した.シミュレータはs4 simulation systemを利用した.各校でのグループ活動を中心に,3校参加のWeb会議やslack上での報告を行ってもらいながら進めた.サイクルは多いところで合計10程度になり,自分たちの教室環境や休み時間の動きを再現しながら,教室を出入りする方向を限定する方策など,シミュレーション結果を提示しながら,感染防止について提案を行なった.うち1校のグループは,学外のシミュレーション関連のセミナーで成果発表するに至った. また,普通高校の理数科の生徒に対して,COVID-19における客船の感染データを用いたモデル化とシミュレーションの実践を行い,感染の広がりと収束について理解を深める実践を行なった.感染のモデルをPythonで構築し,実データへのモデルの当てはまりの確認と調整を行う実践とした.高校生たちがサイクルを経るごとにモデルを改善していった様子が観察された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定した1年目の計画は,文献調査により本研究の位置付けを明確にし,採択前の準備段階における試行を踏まえながら,教授法の検討と評価方法の検討を進めることであった. 専門学科「情報科」を有する3つの高校に協力をいただきながら,テーマを感染対策とし,専門教科情報科の課題研究における実践と評価を行うことができた.コロナ禍のため,特に専門高校との実践については対面による集中研修の機会をもつことはできなかったが,遠隔での実践のみで行うことができた.特にモデル化の教授法に焦点をあてて,文献調査の結果からモデルの改善サイクルに着目してモデリングサイクルシートを開発し,学習プロセスを記録して振り返りを行えるようにした.また,当初計画を前倒しして,共通教科情報科での実施を見据えて,COVID-19の感染をテーマに,実データを用いた,現象の理解を中心とした実践を行うことができた.当初予定していたデザイン原則の十分な検討には至っていないが,2種類の実践を行うことができたことは,1年目として計画に照らしても十分な進捗であったと言える. 一方で,実践を通して,モデリングサイクルシートへの記録の質,作成したプログラムとサイクルを対応づけての記録の困難さ,シミュレータへの教室環境などの再現の作業時間の多さなど,課題が明らかとなった.
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Strategy for Future Research Activity |
1年目で明らかとなった課題を踏まえながら,専門学科情報科の実践内容について改善し,2年目は高校2校を対象として遠隔での実践を行う.課題研究の枠組みで,題材は引き続き学校環境における感染防止とし,学習者は事前にプログラミング言語のPythonを学習した後に,エージェントベースのシミュレーションを用いて問題解決に取り組む.1年目はシミュレータ上の教室環境の再現に時間を要したので,より本質的な内容に思考の焦点をあてられるような方向づけを検討する.たとえば,1年目の成果を利用してあらかじめ教室環境をある程度準備しておいたり,検討すべき事項をある程度明示したりすることなどが考えられる.また,モデル改善サイクルのプロセスを蓄積する方法を検討し,教員と学習者がモデル化とシミュレーションの行程を容易に振り返ることができるようなシステムや,あるいは既存ツールの組み合わせを検討していく. また,専門学科情報科の実践内容を踏まえて,共通教科情報科用のデザインについて検討し,試行を行う.すべての高校の授業で行えるようなものとするために,身につけるべき能力の整理と,専門学科よりも内容をより簡略化するとともに,プログラミングスキルのばらつきにも配慮する.そのために誰もが容易に扱えるブロック型のプログラミングインタフェースの採用も検討しながら,数時間程度でエージェントベースシミュレーションの体験と学習プロセスの蓄積を行えるようなシステムの設計・開発を進めていく.
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Causes of Carryover |
1年目はCOVID-19感染拡大により出張が制限され,実践も遠隔を中心としたため,旅費の支出が当初の予定より少なくなったことにより,次年度使用額が生じた.今後,課題研究の実践で活用するシミュレータのライセンス料や遠隔実施のための環境整備等の費用に充当する予定である.次年度も引き続き旅費支出が少なくなることが予想されるが,一方で,実践を支援するシステムを開発することにしたため,追加でその費用の支出が想定される.
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Research Products
(2 results)