2020 Fiscal Year Research-status Report
Resilient disaster management to promote evacuation behavior
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20K03321
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
元吉 忠寛 関西大学, 社会安全学部, 教授 (70362217)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 避難行動 / 災害自己効力感 / 防災教育 / レジリエンス / シナリオ実験 |
Outline of Annual Research Achievements |
災害の発生が予測される状況で避難指示などの情報が出されても、住民が適切な避難行動を行っていないことは繰り返し指摘されている。本研究では、災害のリスクではなく、対策行動のポジティブな側面に着目した三つの研究によって避難行動を促進する方策を見つけ出すことを目的としている。具体的には、(1)快適な避難施設が整っている地域における住民の避難に対する意識と行動の実態把握のためのインタビュー調査、(2) 避難行動を予め時系列で決めておくタイムラインを使った防災教育が災害自己効力感を高める効果の検証、(3)シナリオ実験による避難行動意図に与えるポジティブ情報の影響の検討を行うことを予定していた。しかし、新型コロナウイルス感染症の影響で災害時の避難に関する社会的状況は、大きく変化したため研究計画の変更が必要と考えている。 新型コロナウイルス感染症対策を踏まえた災害対応として、避難所に避難するだけではなく、親戚・知人宅、ホテルなどへの分散避難が推進されるようになった。このような社会の変化は、本研究で検討している快適な避難施設に大きく関わるものである。そのような中、2020年9月には台風10号が九州地方に接近し、特別警報の発表も予想され、九州では大きな被害が出ることが心配された。そこで、快適な避難施設が整っている地域における住民のインタビュー調査に変えて、九州の住民の避難行動の実態と避難に関する意識調査をインターネットで行った。回答した者の中には、実際にホテルや旅館に避難したとか、親戚の家に避難したという者も確認され、避難先の快適性が避難行動に影響を与えている実態を把握することができた。 また、今年度は学校の都合により、タイムラインを使った防災教育を行うことができなかったため、安全マップの作成や災害時のストレスの理解についての防災教育を実施した上で、中学生版災害自己効力感尺度の作成を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルス感染症の流行により、県域を越えた出張が制限されている中では、被災地や快適な避難施設が整っている地域における住民へのインタビュー調査の実施が困難になった。次年度以降に、インタビュー調査などが可能な状況になれば、調査を実施したいと考えている。 また防災教育を実施した中学校の災害リスクを考慮し、担当教員と相談した結果、台風などの事前に対応準備が可能なタイムラインを使った防災教育を実施するよりも、校区の安全マップの作成や災害時のストレスの理解についての心理教育を行うことが適切だとの結論に行った。このため、今年度は中学生版の災害自己効力感尺度の作成を目的とした防災教育プログラムの実践とアンケート調査を行った。 シナリオ実験については、上記二つの研究を中心に進めたため、今年度は準備をする段階にとどまり、実験の実施はできなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウイルス感染症対策を踏まえた災害対応として、分散避難が推進されるようになったという社会的な変化は本研究の進捗状況に対して大きな影響を与えている。社会状況の変化を踏まえつつ、災害リスクではなく、防災対策行動のポジティブな側面に着目するという本研究の目的に沿った実証的な検討を進めていく必要があると考えている。 昨年度の調査によって、災害時の避難所の快適性が人々の避難行動に影響を与えているという実態が把握できたことから、次年度以降は、避難所となったホテルや旅館などの施設側の視点から、災害時の避難の利点や問題点について調査を行い実態について把握したい。また、分散避難が推奨されるようになり、快適な避難施設が整っている地域は全国的にもかなり広まってきた。そこで、新聞記事データベースなどで、そのような協定を自治体と結んでいる施設などを把握し、当該施設などに調査を行いたい。 防災教育が災害自己効力感を高める効果の検証については、タイムラインを用いた防災教育だけでなく、心理教育やストレスマネジメントなどのこころの防災教育を含めた効果について検証していきたい。ただし、一度限りや短期的な防災教育では、災害自己効力感を高めることが困難であることが予想される。このため、児童生徒だけではなく、実際に防災教育を担当する教職員を対象とした防災教育や災害自己効力感の理解と普及を目的とした実践的活動を行うことも検討している。 シナリオ実験についても、災害時避難に関する社会的状況の変化に即したシナリオの策定を行い、ポジティブ情報が避難行動に与える影響について検討していく予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の拡大により調査旅費や研究発表旅費が支出できなかったため、残金は次年度に繰越し、シナリオ実験や調査費用に充てる。
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