2021 Fiscal Year Research-status Report
Development of Instructional Methods for Improving Context-Constructional Skills to Enhance Children's Problem Finding Ability for Profound Learning
Project/Area Number |
20K03381
|
Research Institution | Beppu University Junior College |
Principal Investigator |
向井 隆久 別府大学短期大学部, その他部局等, 准教授 (30622237)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | 問い生成 / 小学生 / 社会科 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和3年度は,前年度の研究知見で明らかになったことをもとに,児童の問い生成力を高めるための支援策の開発に繋げるため,基礎的な問題として検証の必要があると思われるいくつかの基本的支援の効果について実証的に検証する研究を行なった。より具体的な研究目的は以下のとおりである。前年度までの研究において,児童は授業中に学びを深めるための「説明要求の問い」や「仮説・予測的な問い」「精緻化・発展的な問い(先行の問い・答えを受けて,さらに発展させる問い)」を生成することが難しいことが示された。この原因を検討するにあたり,そもそも子どもたちが上記の問いの具体的なイメージが持てていない,あるいは実際の授業場面で活用できる(問う意義がある)という認識が希薄であるという可能性が考えられた。したがって,今年度はこの可能性の是非について検討した。 小学4年生社会科の授業で88名の児童を対象とし,3つの条件群(1.統制群、2.タイプ説明群、3.タイプ・意義解説)を設定した。タイプ説明群は,「Yes-No型の問い」「事実・事例要求の問い(何?誰?いつ?等)」「説明要求の問い」「仮説・予測的問い」「精緻化・発展的な問い」の5つの問いについて,それぞれ問いの形式や一般的な具体例を示した。タイプ・意義解説は,問いの形式や具体例の解説に加えて,教師が授業中に発した問い(発問)を取り上げ,その問いのタイプや学びを深めるための効果(意義)について解説した。統制群は特別な介入は行わなかった。計4回の介入授業を行い,4回目の授業後の児童の問い生成数と事前授業(介入前)の問いの生成数を比較したところ,どのタイプの問いも条件群間で有意な差は示されなかった。この結果から,授業における児童の問い生成の困難さの原因は,問いのイメージが持てていないことや,問いの意義が理解できていないということではないことが示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画全体の主要な研究目的は,児童の問題発見力を高める支援法の開発に向けて,主に小学生を対象に(1)展望的な文脈構成課題の効果の検証,(2)授業における問い生成過程と日常生活における問い生成過程の違いの検討,(3)問い生成力の発達の調査を進めることであった。 ここまで,小学4年生が社会科と道徳科の授業において生成する問いの特徴や、問い生成における困難さに関する知見を得ることができ、さらに今年度は,小学4年生社会科において児童の問い生成の困難さの原因として考えられるいくつかの可能性について検証できた。これらの知見は、1つには児童が生成した問いの収集という意味で,上記の研究目的(2)と(3)の達成に、より直接的につながるものである。また分析の中で児童が問い生成の際に,教科(授業内容)の文脈に合わせて問う意義を考慮している可能性が推察されたことや,問い生成の困難さの原因について絞り込みにつながる検証を行えたことは,研究目的(1)を実施する根拠にもなり得る知見といえる。 一方、 研究目的(2)と(3)に直接関連してくる研究として,小学2年生、4年生、6年生を対象に、授業場面と日常場面のそれぞれで子どもたちが生成した問いを収集する調査や,幼児を対象とした園生活内での問い(質問)内容に関する調査が進行中である。音声データの書き起こし作業に関しては未完了であったものを完了させることができた。さらにこれらのデータ分析や追加のデータ取集を行う予定であったが,勤務先の変更が決まり,その準備などもあったことから,十分に作業を進めることができなかったため,こちらも次年度以降で積極的に進めていきたい。
|
Strategy for Future Research Activity |
令和3年度までに実施した研究で明らかになった知見に基づき,研究計画の主要目的(1)展望的な文脈構成課題の効果の検証,(2)授業における問い生成と日常生活における問い生成の違いの検討,(3)問い生成力の発達の調査をさらに進めていく。 目的(2)の授業場面と日常場面との比較は,予備調査からいくつかの手続き上の改善点が見えてきたため,改善策を考案し本調査実施を目指す。特に教科の違いによって問いの形式から違いが生じてくる可能性が明らかになったため,教科ごとの問いのデータを収集する必要がありそうである。これまで社会科や道徳で調査を行ない知見を得ているため,これらの教科に中心にデータ収集を行う。ただし,ここまでの研究で教科間での問いの比較から, 目的(1)を実施する根拠や,実施方法のヒントにつながる情報が得られつつあるため,この点にも留意して教科間比較も行なっていく。 この問題は目的(3)の問い生成力の発達を検討する際にもあてはまることである。園生活内での幼児の問いの調査は,予備調査で得られたデータを一度分析する。同時に目的(2)で得られている小学生の問いのデータ分析と合わせて,どういった類の問いが出現しているのかについてカテゴリー分けを検討し,年齢間で問いの特徴や出現頻度の違いなどを比較分析する。分析の結果からデータ収集に改善すべき点などが見つかれば,それを反映して追加調査を行なっていく。
|
Causes of Carryover |
今年度はコロナの影響もあり、小学校や幼稚園・保育所での調査が制限された。特に幼稚園・保育所で幼児の園生活内での問い(質問)の音声データの収集については、予定していたよりも実施の負担があり、多人数を調査することは難しい状況であった。また勤務先の変更が決まり,その対応・準備などで,それらの調査の大部分を次年度に引き継ぐかたちとなり、調査補助や音声データの書き起こし、データ入力・分析協力などの人件費・調査参加協力謝金を次年度に繰り越すこととなった。またそれに伴い、文字データを分析するテキストマイニングソフトの購入も次年度以降に見送ったことで、これらの物品費も次年度に繰り越すこととなった。 次年度以降、上記の調査を継続し、それに係る調査協力や音声データ書き起こし、データ分析協力などの人件費に充てたり、分析ソフトを購入し研究を進めていく予定である。
|