2023 Fiscal Year Research-status Report
Development of Instructional Methods for Improving Context-Constructional Skills to Enhance Children's Problem Finding Ability for Profound Learning
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20K03381
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
向井 隆久 大分大学, 教育学部, 准教授 (30622237)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 問い生成 / 幼児 / 発達 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度までの研究において,児童の問い生成力を高めるための支援策の開発に繋げるため,基礎的な問題の検討・検証を行ってきた。その成果の1つとして,児童は授業中に学びを深めるための「説明要求の問い」や「仮説・予測的な問い」「精緻化・発展的な問い」を生成することが難しいことが示された。また子どもたちに,問いのタイプや学びを深めるための効果(意義)について具体的模範の提示や解説を提供しても,その効果は低いことが明らかになった。こうした知見などを踏まえつつ,文献研究も行い,問い生成に関する理論的考察を進めている。 今年度は,特に幼児120名(3歳児29名,4歳児41名, 5歳児50名)を対象とし,幼稚園での生活や遊びの状況で,幼児の発話や保育事例を音声記録とビデオ記録によって収集し,幼児が日頃どのような問いを発しているのかについて,調査を行った。現在,文字起こしなどの分析作業の途中段階ではあるが,暫定的な分析も進めており,どの年齢児の問いも当該活動との関連性が強いが,問うている内容の明確性に発達的な違いがあることや,多様な答えが可能な問いについては,各年齢とも少ない可能性があること,発展性のある問いは加齢に伴い増加することなどが示されつつある。その他にも年齢の違いによる問いの種類や機能の違いなどの情報が収集されてきている。今後さらにサンプル数や調査回数を増やしながら,言語学的分析も視野に入れて問いの発達的研究を進めていく予定である。 また,小学生を対象とした授業と日常生活での問いの違いに関する予備調査の分析によって,低学年から高学年まで,授業内での問いよりも,日常生活での問いの方が生成数が多いことが示された。さらに授業内での問いについては,高学年児は,記憶の方法など認知過程に関する問いが見られるようになるなど,同じ授業内での問いでも,学年間での違いも分析が進んできている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究計画全体の主要な研究目的は,児童の問題発見力を高める支援法の開発に向けて,主に小学生を対象に(1)展望的な文脈構成課題の効果の検証,(2)授業における問い生成過程と日常生活における問い生成過程の違いの検討,(3)問い生成力の発達の調査を進めることであった。 ここまで,小学4年生が社会科と道徳科の授業において生成する問いの特徴や、問い生成における困難さに関する知見を得ることができ,さらに児童の問い生成の困難さの原因として考えられるいくつかの可能性について検証できた。また今年度,幼児が生成する問いのデータの収集・分析を進められ,小学生の授業における問いと日常生活における問いの分析も進んできている。これらの知見は、1つには児童・幼児が生成した問いの収集や発達的な変化の分析という意味で,上記の研究目的(2)と(3)の達成に、より直接的につながるものである。また分析の中で児童が問い生成の際に,教科(授業内容)の文脈に合わせて問う意義を考慮している可能性が推察されたことや,問い生成の困難さの原因について絞り込みにつながる検証を行えたことは,研究目的(1)を実施する根拠にもなり得る知見といえる。 一方、 研究目的(2)と(3)に直接関連してくる研究として,幼児を対象とした園生活内での問い(質問)内容に関する調査については,調査対象児の人数が大幅に増えたことにより,調査に伴う配慮事項への対応に,想定していたよりも時間や人員を必要とすることになった。また分析においても,幼児の発話は不明瞭なものも多く,音声記録から問いを抽出することに想定以上に時間を要したり,問いの意味(意図)を理解するため,限られたビデオ記録から可能な限りで状況などを把握しつつ分析を進めることにも時間がかかっている。
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Strategy for Future Research Activity |
令和5年度までに実施した研究で明らかになった知見に基づき,研究計画の主要目的(1)展望的な文脈構成課題の効果の検証,(2)授業における問い生成と日常生活における問い生成の違いの検討,(3)問い生成力の発達の調査をさらに進めていく。 ここまでの研究により,児童の問い生成の困難さの特徴や,その原因の絞り込みに関するデータ,問い生成における認知プロセスに関する理論的仮説など,部分的ではあるが,目的(1)の展望的な文脈構成課題を実施する根拠ともなる知見が得られてきているため,展望的文脈構成課題を実施し,その効果の検証を進めたい。 目的(2)の授業場面と日常場面との比較は,新たな調査フィールドの調整もできつつあるため,ここまでの分析結果も踏まえながら,これまで調査した社会科や道徳科を中心に,サンプル数を増やしデータ収集・分析を進める。 目的(3)の問い生成力の発達の検討については,現在進行中の幼稚園での幼児の問いの調査を続行し,異なる時期でのデータ収集回数を増やし,データの妥当性を高めつつ,今年度は実施できなかった分析に関しても進める。同時に目的(2)で得られる小学生の問いのデータ分析と合わせて,発達的変化の様相を明らかにしつつ,なぜ授業内での(教科に関する学びを深める)問い生成が難しいのか,その対策についても理論的に検討していく予定である。最終的に,目的(1)の文脈構成課題の効果検証と合わせて,児童の問題発見力(問う力)を高める支援法の開発に繋げる知見を得ることを目指す。
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Causes of Carryover |
今年度は,これまで収集したデータの分析や予定していた調査の準備などに時間を要し,これまでの成果を学会などで発表するまでに至らなかったため,出張費は次年度に繰り越すこととした。また幼児の園生活や遊び場面での問いに関する本調査を開始できたが,予定していた音声データの文字起こしについても,計画していたアルバイトや業者発注のやり方では,金額が高額になりすぎ,大幅に予算超過する可能性が高まったため,当初予定の方法以外の代替策を講じる必要があり,一旦,データ分析用の予算を保留し次年度に繰り越すこととなった。さらに計画時より調査対象者数が大幅に増加したことで,必要機材費が予定より高くなったり,メインで使用していたパソコンの故障などもあり,上記の事情とも合わせて物品購入計画を大きく再調整する必要が生じたため,予定どおりの予算執行を見合わせ,一部を次年度に繰り越すこととした。
次年度使用計画 現在の研究環境に必要なパソコンなどの物品購入を行い研究環境をしっかり整えるとともに,計画している調査を継続し,音声データ書き起こしや,データ分析の方法を考えつつ必要な予算を調整する。できるだけ効果的に人件費・謝金・物品費として使用しながら,次年度は研究発表にも予算を充て,研究を進めていく予定である。
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