2021 Fiscal Year Research-status Report
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20K03862
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
俣野 和明 岡山大学, 自然科学学域, 助教 (70630945)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | トポロジカル超伝導 |
Outline of Annual Research Achievements |
トポロジカル超伝導体CuxBi2Se3の物性解明を目的として、試料作成および物性測定を行い超伝導対称性を議論した。これまでの研究でx=0.4程度を境にしてt超伝導対称性が変わり、x < 0.4の領域ではネマティック超伝導、x > 0.4の領域ではカイラル超伝導が出現することがわかっていた。一方で、xが低い領域では高品質の試料の作為の難しさから対称性がわかっていなかった。xの増加に伴ってフェルミ面の形状が変化することから、低x領域の測定も必要であった。今年度は低いx(=0.15)での高品質の試料の作成に成功し、その対称性がネマティック状態であることを発見した。 CuxBi2Se3はスピン三重項超伝導であるが、特異な点のひとつはスピン三重項超伝導を表すdベクトルが結晶の特定の方向にピン留めされていることである。ピン止め機構はCuxBi2Se3の超伝導を解明するためには重要な要素である。本年度は複数の試料を用い、面内で1度ごとに方向を変えて帯磁率を測定する装置を新たに開発し、対称性を詳細に議論した。通常超伝導は結晶の対称性のよい方向に実現するため、dベクトルはa軸などの面内対称性のよい方向に向くことが期待される。しかし実験の結果、dベクトルはa軸から数度ずれた方向に向くことを発見した。これはフォノンを介した機構で理解できる。 dペクトルのピン止め機構として、結晶の微細な歪みが提案されている。そこで、CuxBi2Se3に対し、一軸圧力実験を実施した。結果、圧力の印可にともなってtcが減少することを発見した。 以上の結果は日本物理学会第76回年次大会で発表した。また、現在論文を執筆中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
高品質の試料の合成に成功し測定が行えている。概要に示したとおり、いくつかの新しい発見に成功している。低x試料での測定に成功した。dベクトルが対称性のよい方向では無い方向にピン留めされることを発見した。また、新しい装置の開発に成功し、これは来年度の研究にもつながる成果である。面内の2回対称性の測定について、これまでは30度ごとにしか測定できていなかったが、角度を1度ごとに変えて帯磁率を測定する装置を新たに開発し、測定に成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は新たに開発した装置を用い、これまでに作成した複数の試料を測定することでより詳細な測定を行うよていである。具体的には、測定する磁場を変えながら、1度ごとに測定をすることで、ピン留めされたdベクトルと磁場の関係を明らかにする。dベクトルは高い磁場では印可する磁場の方向によって向きを変えることが期待される。 近年の研究で結晶中の微細な歪みがdベクトルのピン止めと関わっていることが指摘されている。この微細な歪みは放射光などの分解能の高い測定が必要になってくるため、放射光施設などでの結晶構造測定を予定している。
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Research Products
(3 results)