2021 Fiscal Year Research-status Report
Photocatalytic activity of titanium oxide nanoparticles treated by heat-assisted atmospheric pressure oxygen plasma
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20K03917
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
川上 烈生 徳島大学, 大学院社会産業理工学研究部(理工学域), 講師 (30314842)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 熱アシスト大気圧酸素プラズマ / アナターゼ/ルチル混晶型酸化チタン / 光触媒ナノ粒子 / 分解/殺菌性 / 紫外線LED照射 / 可視光LED照射 / 酸素空孔 / 酸素関連基吸着 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は熱アシスト大気圧酸素プラズマ処理により,紫外線照射下でアナターゼ型酸化チタンナノ粒子の光活性が優位的に向上する機構を明らかにしてきた.しかしながら,結晶性の異なる他の酸化チタンナノ粒子にも優位的に処理効果があるのかわかっていない. 本年度,アナターゼ/ルチル混晶型酸化チタンナノ粒子においても,熱アシスト大気圧酸素プラズマ処理効果により,紫外光照射だけでなく可視光照射下でも光分解力と光殺菌力が優位的に向上することを見出した.熱アシスト大気圧酸素プラズマ処理により,アナターゼ結晶数の増加,酸化チタンナノ粒子の凝集体サイズの縮小化,酸化チタン表面上に吸着した架橋酸素関連基数および末端酸素関連基数の増加,格子酸素欠損数の増加を齎すことがX線や電子線分析からわかった.光学と電気分析から,紫外光と可視光照射下での光吸収量や光励起電気導電率も増加することもわかった.これらの結果から,熱アシスト大気圧酸素プラズマ処理法による光触媒活性化機構は,紫外光と可視光照射下での光励起キャリア濃度の増加が主要因であることがわかる.これらの光励起キャリア濃度増加は,吸着した多くの架橋酸素関連基数および末端酸素関連基数により引き起こされる表面近傍での空乏層幅拡大とupward band bendingによる電荷分離効果の促進と考える.特に可視光照射下では,この表面近傍でのバンド構造変化に伴うルチル相からアナターゼ相への電荷移動による光励起キャリア濃度の増加も寄与すると考える. これらの知見は,酸化チタンナノ粒子の可視光照射下での活性化機構の理解において学術的に極めて重要である.電気炉処理したアナターゼ/ルチル混晶型酸化チタンナノ粒子は,紫外光照射下では光触媒活性が全く向上しないことを考慮すると,熱アシスト大気圧酸素プラズマ処理法は光活性増強化に新たな展望をもたらす画期的なポスト処理法であるといえる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
熱アシスト大気圧酸素プラズマ処理したアナターゼ/ルチル混晶型酸化チタンナノ粒子の紫外光および可視光照射下での光触媒活性化機構の全貌が明らかになりつつある.その成果の一部をPhysica Status Solidi A: Applications and Materials Science 218 (2021) 2100536にて報告することができた.世界的に知られている電気炉処理は,紫外光照射下での光触媒活性の向上に効かない事実を踏まえると,紫外光照射下だけでなく可視光照射下での酸化チタンナノ粒子の光分解と光殺菌を劇的に向上させた機構が学術的に興味深いと考える.特に,可視光照射下において,光分解だけでなく光殺菌も向上した事実は想像を絶する成果であると考える.この成果は可視光照射下での光触媒活性を向上させるための極めて重要な知見である.室内光照射下での光触媒活性化増加にも役立つと考え,現在,白色蛍光灯照射下で高い光活性を示す白金ドープルチル型酸化チタンナノ粒子への熱アシスト大気圧酸素プラズマ処理効果について研究を進めている.
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Strategy for Future Research Activity |
白色蛍光灯照射下で高い光触媒活性を示す白金ドープルチル型酸化チタンナノ粒子を用いて,熱アシスト大気圧酸素プラズマにより導入される表面格子酸素欠損がどう変化し,白色光照射下での光触媒活性の向上に寄与するのかその機構を明らかにする.初年度と同様に,未処理サンプル,熱アシスト大気圧酸素プラズマ処理サンプル,熱処理サンプル,大気圧酸素プラズマ処理サンプルを準備する.X線光電子分光法により得られた4つのサンプル間の表面格子酸素量を比較分析する.エネルギー分散型X線分光器により,表面元素マッピング分析の比較も行う.他方,紫外可視分光光度計や過渡吸収分光法によりサンプル間の吸光度を比較分析する.これらデータの相関性を考察することで,チタンナノ島に起因するプラズモン効果による光吸収量増加現象の関与が明確になる.また,熱アシスト大気圧酸素プラズマにより,どういった酸素空孔欠陥が導入され光触媒活性の向上に与するのか明らかにする.フォトルミネッセンス法と過渡光容量スペクトル法により,これらサンプル間の酸素空孔欠陥準位密度を比較分析する.このデータと初年度に得られたサンプル導電率の変化量の相関性を考察することで,どのような酸素空孔欠陥準位密度が光励起キャリア密度増加に寄与するのか明らかとなる.研究体制や役割分担は初年度と同じである.
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Causes of Carryover |
本年度の研究に必要なミニスターラーが予定より少額で賄えたため,次年度使用額が生じた.次年度は,熱アシスト大気圧低温プラズマ装置メインテナンスのための物品費が多く必要になると予想されるため,次年度研究費(物品費)と合わせて使用する計画である.
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Research Products
(12 results)