2023 Fiscal Year Research-status Report
Study of gravitational nonlinear phenomena by the use of exact solutions of gravitational equations
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20K03977
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
三島 隆 日本大学, 理工学部, 教授 (70222320)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | Einsstein-Maxwell方程式 / 重力波と電磁波の厳密解 / 重力波の非線形現象 / 重力波電磁波モード間の転換現象 |
Outline of Annual Research Achievements |
2023年度は研究の遅れを完全に取り戻すまでには至らなかった。しかし、研究は新たな興味深い進展を見せており2024年度は実りあるものになると考える。以下本研究に係る2023年度に実施した三つの研究について説明する。 一つ目のこれまで行ってきた調和写像法によって生成したアインシュタイン方程式系の厳密解を基にした重力波・電磁波間の転換現象の探求については、本年度の初めに論文出版として実を結んだ。この成果と関連した研究は6月の立教大学の理論物理学コロキウム、3月の日大文理で開催されたブラックホール研究会にて共に招待講演として発表された。その折いくつか興味深い問題を示唆してもらったが、特に立教大学で示唆された転換現象の履歴が残るかどうかという問題については興味深い結果を得ることが出来たので上記ブラックホール研究会で紹介した。この結果は、現在フルペ-パ-として執筆中であり次年度初頭には投稿する予定である。 二つ目の前年度着手した強磁場中の重力波・電磁波の伝播現象の解析に関しては、最も単純な設定であるアインシュタイン-ローゼン波とメルビン磁場宇宙の重ね合わせ解による解析を、本年度では重力波や電磁波の自由度を増やしてより一般化し、重力波・電磁波のモード転換現象がどのように生じるかを詳しく調べた。その一端は9月の日本物理学会と11月終わりに開催されたJGRG32において発表された。 三つ目の研究テーマは当該年度11月から開始した。これまでの解生成を主眼としたものと異なり重力波が伝播する時空中での粒子の運動を通して重力波の非線形現象を探る試みである。手始めに最も単純な重力波解を用いて解析を行うと予想以上に新奇な振舞いを示すことが分かったので、2月のJGRG32の場で幾人かの研究者と議論し興味深い現象と考えられたので、その結果を3月の物理学会において発表をした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
進捗状況はやや遅れた。遅延の外的要因としては、やはり社会情勢の影響と個人的事情のため思うように時間が取れなかったことによる。特に論文出版が遅れてしまったが、その研究上の理由と経緯を以下に記す。なお、本年度は遅れを取り戻すため重力波に関連した研究に専念した。 本年度初めは、年度初頭に出版した学術論文の詳述と補完を主目的とした本論文を速やかに出版する予定であった。しかし6月に立教大学で本研究を発表した際、主催者から「入射波に対して強重力場中で生じた電磁波・重力波間の転換は反射波として遠方に戻った時に保持されるか」という非常に興味深い問いかけがなされた。実はこの時点で得られた解の範囲内では結果は否定的であることは明らかであった。そこで研究をより新規性のあるものへ発展させるため肯定的結果を与える解の探索を行いその結果を作成中の論文に盛り込むことにした。この探索には予想以上に時間がかかり結果的に執筆が遅れることとなった。最終的には、この探索が実を結び2月にソリトン的手法によって上記問いに対する肯定的回答を得ることが出来た。この成果は、3月の日大文理で開催された研究会において発表され、すぐに本論文の執筆を再開したが、結果的に完成は年度をまたぐことになってしまった。 また、二番目のテーマのメルビン磁場宇宙を伝播する重力波・電磁波の振舞いを調べる研究は、対応する時空を表す厳密解はすでに構成済みであり、ある程度解析も進んでいる。物理的考察を行い速やかに論文作成へ進む予定である。最近着想を得た三番目のテーマについては、得られた結果は予想以上に画期的な現象ではないかと考える。直近の春の学会で発表したように、最も単純なモデルを用いた解析によると重力波によって粒子が強く引き摺られ非常に大きく加速される可能性が見出された。この現象の解析は重力波物理の解明に大きな役割を果たすものと期待している。
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Strategy for Future Research Activity |
再延長申請が認められた次年度(2024年度)は、研究成果の取りまとめ、そして論文執筆に全力で取り組む。研究実績・進捗状況に記したように、本研究に関連して具体的に三つのテーマに現在取り組んでおり、すでに研究成果は上がってきている。 一番目のテーマである重力場方程式の力学的非線形効果による電磁波・重力波間のモード転換現象については、成果の収穫期に入っており次年度初頭には本論文の作成を終了し学術誌に投稿する予定である。この方向の次の展開としてはアインシュタインの重力理論を越えた様々な重力理論の系(カルーザ・クライン理論を含む高次元重力系、スカラー・テンソル系等)に対して本研究の手法を適用して重力理論毎の非線形効果による重力物理の違いを明らかにしたい。 二番目のテーマである一様磁場等の外場が存在する時空中の重力波・電磁波の伝播の仕方についての探求では、用いる厳密解の構成や物理現象を調べる手立てについては、学会等で発表したようにすでに準備が完了している。すでに当該年度において、重力場・電磁場間の転換現象等については興味深い知見も得られている。例えば外部磁場自体が重力波や電磁波と力学的な非線形相互作用をすることによってエネルギーをやり取りする様子が観察できる。次年度では、当該年度の基礎研究の上により体系的な解析を展開しその結果を速やかに論文にまとめる。 三番目の研究については手法的な点については基本的な困難はない。実際3月の学会では最も単純な例について発表したが、この扱いを伝播する重力波を持つより一般的な円筒対称時空の場合にそのまま適用することは可能である。結果は速やかにまとめ年度内の出版を目指す。 以上の研究遂行のため、次年度も豊田工大の富沢真也氏のグループと連携して研究を進める。また、得られた結果の物理的意義等を深めるため様々な研究者との議論を行う予定である。
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Causes of Carryover |
2023年度はコロナ禍の影響は大分緩和されたので学会・研究会への出席・発表、コロキウム等での発表等、研究交流を前年度までと比較して活発化させたが、開催場所の多くが東京だったことや学会(春季学会)がオンライン開催であったことなどから旅費等に係る経費が少なくなった。また、当該年度の1月以降に幾つかの興味深い研究会等が開催されたが、本課題の研究の推進が急務であると判断し参加を見合わせたことにより残額が生じた。 再延長が認められた次年度は、より積極的に学会・研究会への参加・発表、あるいは連携している豊田工大の富沢真也氏のグループとの打ち合わせ、また関西方面の相対論グループとの研究交流を行うことを考えている。そのため主に助成金は旅費の補助として使用する。また、状況によるが、科学計算ソフトのMathematicaの保守の費用や基礎文献の資料代などにも充てたい。
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Remarks |
「円筒対称時空における電磁波-重力波の厳密解を用いた重力的非線形現象の解析」:2023年6月立教大学理論物理学コロキウムにおいて口頭発表(招待講演) 「厳密解を用いた重力的波動現象における非線形効果の探求」:2024年3月日大文理学部キャンパスで開催された研究会「ブラックホール研究会」において口頭発表(招待講演)
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Research Products
(4 results)