2020 Fiscal Year Research-status Report
磁気ヒステリシスを定量化した,加速器用電磁石の高速かつ高精度な制御方法の研究
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20K04454
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
菅原 賢悟 近畿大学, 理工学部, 准教授 (50718963)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石 禎浩 京都大学, 複合原子力科学研究所, 准教授 (00525834)
藤原 耕二 同志社大学, 理工学部, 教授 (20190093)
中村 健二 東北大学, 工学研究科, 教授 (70323061)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 電磁石 / 加速器 / 磁気ヒステリシス / 磁気余効 / プレイモデル / 電磁界解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
加速器電磁石の磁気ヒステリシスを定量化しその影響を取り込んだ制御を行うため,以下の3ステップで研究を行うことを計画している。1) 近畿大学で保有しているバイポーラ電源(最大出力電流±20A)で実験が可能なロの字型の小型電磁石(ロの字型電磁石)を用いた実験,2) 東北大学で保有している直流電源(最大出力電流450A)で実験が可能な,加速器用四極電磁石を用いた実験,および 3) 京都大学複合原子力科学研究所が保有しているFFAG加速器を用いた実験 研究の初年度である令和2年度には,1)のロの字型電磁石および,2)の加速器用四極電磁石の実験準備を主に行った。 (1),磁気ヒステリシスのモデルの一つであるプレイモデルを用いて電磁石の磁場シミュレーションを行う事ができることを検証するため,有限要素法(FEM)によるシミュレーション結果と電磁石の磁場測定結果を比較した。電磁石は近畿大学内で実感可能な大きさ・形状にするため,ロの字型電磁石を用いて磁場測定を行った。ロの字型電磁石の中心磁場を測定したところ,ロの字型電磁石の場合には磁気余効の影響は少ないため,実測とシミュレーションにある程度の一致が見られた。これにより,プレイモデル方式を用いることで磁気ヒステリシスのシミュレーションを行うことができる可能性が見いだせた。検討結果に関しては電気学会が主催の研究会にて発表した。 (2),当初,ロの字型電磁石の他に新たに設計した大型の電磁石を用いる予定であったが,予算の制限により「京都大学複合原子力科学研究所」が保有している四極電磁石を用いた実験を行うこととした。四極電磁石を励磁するためには,水冷施設や電源装置が必要となるため,その環境がすでにある東北大学で実験を行なっている。現状は,東北大学にて測定実験に必要な環境構築及び四極電磁石の設置を行い,測定できる環境がほぼ準備できたところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究を遂行するにあたって, (1),近畿大学で行なっているロの字型電磁石の実験については,当初の計画通り順調に進めることができている しかし,同志社大学で検討を行なっている鉄心の測定については,藤原教授がご病気のためデータが不足しており,この点を補うために,新たにLaudau-Lifshiz-Gilbert方程式によるBHカーブ同定技術を用いて不足データを補うことを新規に追加したため,若干の工程遅れが発生している。ロの字型電磁石での検討結果では,実機レベルの加速器で知られている磁気余効に比べ,その時定数がはるかに短いことが観測された。このことは有意義な知見であるが,同時にロの字型電磁石では磁気余効の影響の検討は十分に行うことができないことが示唆された。 (2),東北大学で行なっている四極磁石の実験については,コロナウイルスによる影響により出張が制限されてしまい,計画していた通りの回数出張ができておらず,進捗の遅れが発生している。
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Strategy for Future Research Activity |
(1),近畿大学での実験:Laudau-Lifshiz-Gilbert方程式によるBHカーブ同定技術を用いて不足している鉄心のデータを補う。ロの字型電磁石の磁場分布を測定し,FEMによるシミュレーション結果と比較する。 (2),東北大学の実験:電磁石のギャップ部の平面磁場を測定するためローテーティングコイルを作製し,磁場分布の測定環境の構築を行う。加えて,四極電磁石において磁気余効と磁気ヒステリシスの結合は無視できなかったため,FEMでは高速・高精度なシミュレーションを行うことは困難であり,リラクタンスネットワーク解析(RNA)にてシミュレーションを行うためのデータ取得を行う。 (3),(1)(2)の実験から磁場シミュレーションの環境を構築したあと,京都大学にてFFAG加速器用電磁石を用いた磁場測定実験を行う。
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Causes of Carryover |
コロナ禍の影響で出張が延期,または中止となり,予定していた回数の出張ができず,実験準備が当初の計画より多くの時間を必要した。そのため,実測データ取得開始が遅れている。
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Research Products
(4 results)