2020 Fiscal Year Research-status Report
IoTの本格普及に向けた、衝突した端末信号の分離・復調技術の開発
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20K04465
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
上原 一浩 岡山大学, 自然科学研究科, 教授 (10221798)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
冨里 繁 岡山大学, 自然科学研究科, 准教授 (60362951)
田野 哲 岡山大学, 自然科学研究科, 教授 (80378835)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 蓄積一括無線信号処理 / 信号分離 / IoT / 無線アクセス |
Outline of Annual Research Achievements |
身の回りの殆どのデバイスに無線機能が搭載され、5Gも実用化されつつあり、IoTの本格普及が間近である。しかし数百億個のIoT端末が世界中に偏在し、限られた周波数資源の中でセンサ端末等の低機能の無線端末が無秩序に通信し、衝突や干渉により従来の受信機ではデータが受信出来なくなり、時に人々の安心安全をも脅かすという課題がある。本研究では、広帯域受信スペクトルを一旦クラウドに蓄積し、過去・現在・未来のデータを用いて一括信号処理することにより、従来の受信機では実現できない、衝突した信号や干渉を受けたIoT/M2M端末信号の分離・復調技術の確立を目指す。抜本的な周波数有効利用実現の可能性を秘めた本技術の確立により、今後のIoTの本格普及に対応可能な次世代の無線通信インフラの実現に貢献していく。本年度は、提案した特徴量復調方式について検討を進め、様々な条件における信号分離・復調性能と適用領域を明らかにし、研究目的の達成を目指した。 先ず、基本的な変調方式(BPSK、QPSK、8PSK、16QAM、64QAM)について、短時間フーリエ変換(STFT)の窓関数を変えた場合の性能評価を行い、矩形、ハニング、ハミング、ブラックマンについて各特性を明らかにした。1シンポル内に連続して位相が変化する変調方式としてGMSKについて、また1シンポル内に位相遷移が加えられる変調方式としてπ/4シフトQPSKについて性能評価を行い基本性能を示し、提案した特徴量復調方式により、これらの変調方式についても分離・復調が可能であることを明らかにした。3つの信号が衝突した場合の分離・復調性能について評価を行い、基本性能を明らかにした。更に、分離・復調性能の向上を実現するための、深層ニューラルネットワークを用いた変調方式識別技術について検討を行い、基本性能を明らかにした。これらの成果を2件の論文にまとめ、採録された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は、当初計画に従い、提案した特徴量復調方式について検討を進め、様々な条件における信号分離・復調性能と適用領域を明らかにし、研究目的の達成を目指した。新規購入した任意信号発生器を用い、実証実験プラットフォームを構築した。 分離・復調アルゴリズムの検討と性能評価に関しては、先ず、基本的な変調方式(BPSK、QPSK、8PSK、16QAM、64QAM)について、短時間フーリエ変換(STFT)の窓関数を変えた場合の性能評価を行い、矩形、ハニング、ハミング、ブラックマンについて各特性を明らかにした。また複数信号のスペクトルの重畳度、1ビット当たりの信号電力対雑音電力密度比(Eb/N0)、及び希望波と不要波の電力比(D/U)を各々変化した場合の分離・復調性能を明らかにした。次に、1シンポル内に連続して位相が変化する変調方式としてGMSKについて、また1シンポル内に位相遷移が加えられる変調方式としてπ/4シフトQPSKについて性能評価を行い基本性能を示し、提案した特徴量復調方式により、分離・復調した信号の符号誤り率(BER)が10-3以下となり、これらの変調方式についても分離・復調が可能であることを明らかにした。また2信号の分離・復調の検討を発展させ、3つの信号が衝突した場合の分離・復調性能についても評価を行い、基本性能を明らかにした。更に、分離・復調性能の向上を実現するための、深層ニューラルネットワークを用いた変調方式識別技術について検討を行った。従来技術ではEb/N0が0dB以下の場合は識別が出来なかったが、提案したCNNモデルを用いて、Eb/N0が-5dB以下の場合でも、BPSK、QPSK、8PSK、16QAM、64QAMの5つの変調方式を識別率約90%以上で識別できることを示した。これらの研究成果を学会発表すると共に、2件の論文にまとめて投稿し、採録された(8月発刊予定)。
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Strategy for Future Research Activity |
基本的に当初の研究実施計画に沿って研究を推進していく。分離・復調アルゴリズムの検討と性能評価に関し、2020年度は基本性能を明らかにしたが、今後は更に多面的・多角的に詳細なパラメータスタディを行い、様々な条件における性能評価を進め、分離・復調アルゴリズムにフィードバックし、実用化に向けて、提案技術の有効性と適用限界を明らかにしていく。特に、実際の伝搬路における、マルチパス・フェージング、ドップラーシフト等の影響を受けた場合について、また、実際の送受信機特性の不完全性に起因する振幅偏差や位相変移等の影響を明らかにしていく。更に、マルチキャリア信号に対する分離・復調性能を明らかにするために、OFDMについての評価評価を行う。引き続き得られた研究成果の外部発表を精力的に行っていく。
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Causes of Carryover |
旅費の支出について計画額との差分が生じた。次年度の旅費の一部として使用する。
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Research Products
(13 results)