2021 Fiscal Year Research-status Report
Preparation of new biodegradable polymeric materials with polysaccharide aerogels
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20K05105
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
青柳 隆夫 日本大学, 理工学部, 教授 (40277132)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
星 徹 日本大学, 理工学部, 准教授 (30513973)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 生分解性 / バイオマス / 多糖類 / 複合材料 / ポリカプロラクトン / アガロース / グルコマンナン |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度に引き続き、アガロースエアロゲルを用いて、ポリカプロラクトンのグラフト化、解繊操作、および材料化の検討を行った。解繊溶媒として、ポリカプロラクトンに対しての両溶媒であるクロロホルムを用いると、完全には解繊しきれなかったが、水素結合を切断する能力が知られているジメチルホルムアミドまたはヘキサフルオロイソプロパノールを用いることで、解繊がスムーズに進行することがわかった。得られたアガロースーポリカプロラクトンの元素分析測定を行なった結果、アガロースエアロゲルの調製時の濃度が、3wt%のものを用いると、ポリカプロラクトンが53.6%、5wt%のものでは76.6%含有していることがわかった。 ヘキサフルオロイソプロパノール分散液を用いて、電界紡糸法によりナノファイバーの調製を検討した。電界紡糸においては、ポリマーの構造の違いによって、紡糸条件が異なることから、印加する電圧、供給流速、ポリマーの濃度をパラメータとして変化させて最適条件を探索した。その結果、アガロースーポリカプロラクトン単独では、ナノファイバーの形成が困難であったが、分子量が80,000のポリカプロラクトンと混合させて防止することにより、数百ナノメートル径のナノファイバーが調製できることがわかった。その際、印加電圧は10kVまたは13kV、供給流速は0.5mL/h、ポリマー濃度としては1.5wt%が最適であった。 得られたナノファイバーシート(アガロースーポリカプロラクトンとポリカプロラクトン が1:1で混合している)表面の接触角測定をおこなったところ、ポリカプロラクトン 単独では130.6±3.9度であったのに対し、アガロースを含むサンプルでは71.9±1.8度と、ほぼ半分の角度となったことから、親水性が大幅に向上したことがわかった。今後、この性質が生分解性に及ぼす影響を調査する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
我々が開発した、多糖類のエアロゲルを用いることによるポリカプロラクトンのグラフト化の汎用性を検証するために、多糖類としてアガロースを用いて研究を重点的に遂行している。解繊溶媒としてヘキサフルオロイソプロパノールを用いることにより、解繊に成功し、さらにポリカプロラクトンと混合することにより、ナノファイバーの調製に成功した。得られたナノファイバーシートの表面は、期待以上に親水性を示した。様々な脂肪族ポリエステルと比較して、生分解性の遅さがポリカプロラクトンの欠点であった。今回得られた材料は、親水性が大幅に向上し、例えば海洋中では海水に、土中ではバクテリアと接触が容易になり、分解性が向上すると期待された。さらに、本年度は、グルコマンナンを別種類の多糖類の候補として選択し、同様の研究を開始した。現在まで、アガロースと同じようなエアロゲルの調製、グラフト重合、さらに解繊操作を行なっている。この系に関しては、アガロースの場合と比較して、やや時間を要することがわかった。 以上より、概ね研究は予定通り進行しており、セルロース以外の多糖類を用いても同様の操作が適用でき、簡便に複合材料が調製できると考えられた。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度では、アガロースを用いた複合材料の生分解性を定量的に評価する。具体的には、pHが調製されたリン酸緩衝液または、模擬海水などを用いて材料の重量減少を追跡することにより生分解性の評価を行う。また、材料表面を走査型電子顕微鏡で観察し、分解の様子を視覚化する。また引っ張り試験機を用いて材料の機械的な強度を測定する。 前年度からの継続としてグルコマンナンを用いた複合材料の調製と、ナノファイバーなどの材料化を検討する。フィルム化や粒子化、スプレードライによる薄膜化なども検討項目とする。これらの成果に基づいて、学会発表、論文投稿を通じて、新規複合材料の調製法としてのエアロゲルの有効利用を発表する。 これらの成果をさらに展開するために、ポリカプロラクトンではなく、他の生分解性材料、例えばポリ乳酸への展開を図るという内容で、さらに科学研究費補助金への応募も検討する。ポリ乳酸の場合、原料が固体であるために、溶媒を用いるか、加熱融解の条件をとらざるを得ない。しかし生分解性を考慮すると、最終生成物が乳酸であり、環境中での分解というよりも、生体応用が期待できる。 本研究の有効性をさらに高めるためにも、ポリ乳酸への応用へチャレンジしたい。
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Causes of Carryover |
予定していた国際学会などがキャンセルされ、旅費が支出されなかったために次年度使用額が生じた。最終年度では、海外での国際学会に出席し研究成果を公表予定であり、そのために充当する。コロナ禍で海外渡航が困難な場合は、溶媒や試薬などの物品購入に充当し、研究の充実を図る予定である。
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Research Products
(1 results)