2020 Fiscal Year Research-status Report
Oscillation mechanism elucidation and practical use elemental technology research on noise-like pulse laser that develops new processing and measurement region
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20K05370
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
吉田 実 近畿大学, 理工学部, 教授 (50388493)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 光ファイバ / ファイバレーザー / パルスレーザー / 雑音状パルス / パルス群 / フェムト秒パルス / 光帯域光源 / 非線形光学効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
光ファイバが低損失である特長を生かし、長尺のファイバ型レーザー共振器を構築し、積極的に非線形光学現象を生じさせることにより電気的な光学変調素子では得られない高速現象を引き出し、それにより短時間に多くのパルスを発生させる新規な雑音状パルスを発生されるレーザー装置の研究を進めている。 雑音状パルスは、オシロスコープなどを利用して時間的な光の強度変化を観測すると単一のパルスのように見えるが、それは電気的な評価方法では時間分解能が不足しているために無数のパルスの包絡線しか見ることができないためである。この雑音状パルスの内部にはパルスの数に相当する光強度の勾配が存在しているため、通常のフェムト秒単パルスと異なり、パルス一つ一つの波形変化に依存しない、平均化した非線形生が極めて安定に得られる長所が予想できる。 令和2年度は、光学素子を試作し、ファイバの条件を決定し、光学系の構築を進めた。また、ここで作成した光学系を用いてパルス発生に成功し、そのパルスの評価を進めた。波長は1550nm帯であるが、単パルスと雑音状パルスの遷移条件なども明らかになりつつあり、今後の特性向上に寄与するデータが得られている。 遷移条件がわかり始めたことにより、パルスの発生効率を高められると共に、安定な雑音状パルスの生成が可能になるものと考えており、実用的かつ高度な計測用光源装置の開発に必要となる設計指標に近づいている。一方で、当初予想していないなかったパルス発振の自己始動に困難さが有ることも明らかになり、新しい研究課題が見えてきた。 これらのデータを元に、発振波長を他の波長に拡張し、特に従来のNdあるいはYb系のレーザーとして広く利用されてきた1μm帯に展開することにより、応用範囲の広い雑音状パルス源を構築し、さらにその応用として高くかつ安定な非線形生を利用した広帯域な光源の開発を進める予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた計画として、令和2年度には ①雑音状パルスの得られる条件を探り出し、レーザー共振器に求められる基本的な「仕組み」を明らかにすること、ならびに ②ファイバ光学系の条件をマッピングする作業を予定していた。 ①に相当する雑音状パルス発生の仕組みに解明に関する研究は、比較対象として従来のフェムト秒の単パルスを発生させるパルス発振光学系との違いを明らかにすることにある。雑音状パルスは、フェムト秒単パルスレーザーを発生させる研究を進めている過程で発見した現象であり、その光学系は外見的にほぼ同一である。雑音状パルス発振は、ファイバレーザー共振器の光学系を、レーザーの閉じ込めを極めて困難な条件とすることによって得られる強い非線形生が生じなければ共振器を構成できないような条件下において発生することが明らかになった。これは、従来の共振器構成では条件が限られており、科研費応募時に説明を行った、これまでの知識ではほぼレーザー発振が不可能な条件を意図的に作りだす事によって得られる。さらに、従来技術では、ねじりや曲げ応力により発生する複屈折とその変動を補償するための偏波制御装置が必要になるが、偏波補償機能を必要としない自動的に偏波補償が可能な受動的光学系構築にもほぼ目処が立っており、研究計画と比較して十分に進捗していると言える。 ②に関しては、共振器の詳細な条件を探索している。令和2年度に得られた成果より、非線形生を発生させるファイバの長とファイバ中を伝搬する光の実効的な直径であるモードフィールド径ならびに光の波長によって屈折率が変化する波長分散を変化させた際の発振状況の変化のマッピングを進めており、これらの数値のバランスによって、雑音状パルスを発生するか単パルスを発生するかの境界が存在することが明らかになった。 これらの理由により、当初の予定を超えた進捗が得られていると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度の成果を基に、令和3年度以降に予定していた研究は大きく以下の4項目である。 ①発振機序の解明において、雑音状パルスを選択的に発振できるパルスファレーザー光学系を開発できたが、自発的なパルス発振が困難であること、およびパルスが閉じ込められる条件を多少発生させても雑音状パルスが発生すること等である。自発的にパルスが発振しない条件の存在することは、製品として出荷した後にその状態が発生すると望ましくないため実用上の課題となる。 ②共振器内の条件に関しては、昨年度の報告において記載をしたが、条件の範囲が限定されていることは明らかになっている。多次元のマッピングとなるので、来年度に掛けデータの採取を進める。これにより、共振器の構成が変化しても発振可能な条件の予想ができるようになることが目標である。 ③広帯域光源装置として利用する場合も、加工用光源して利用する場合も、パルスの高エネルギー化が望まれる。雑音状パルスが内包するパルス群は、恐らくフェムト秒領域であり、各パルスがそれぞれ広い周波数帯域を発生させている可能性が高い。この特性を利用すれば、ファイバ増幅器を用いた増幅過程において発生する非線形生を抑制でき、高出力化できる可能性がある。また、当研究室が独自に進めていたコヒーレント加算の技術は複数の光波の位相を完全に一致できるため、本研究でも適用できる可能性がある。 ④応用分野に関しては、二つの可能性を考えている。一つは内包するパルスが持つ多様性を利用した、オクターブ程度に広がる光源の開発である。単パルスの非線形光学効果から得られる結果よりも高効率かつ安定であることが予想される。また前記③に示したパルスの高エネルギー化を進め、加工やレンジファインダーをはじめとする各種計測分野にも利用できる可能性を探る。 前年度の研究が順調であったため、令和3年度もほぼ計画通りに進められる予定である。
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Causes of Carryover |
当初の予定よりも研究データが順調に採取できたため、必要となるファイバなどの実験用試料の調達量が少なくて済み、令和2年度に残額が発生しました。 繰り越しによる次年度使用額は、高精度かつ高出力なパルス発生条件においてデータ取得に必要となる、高出力励起用半導体レーザーのドライブおよび保護に係わる部品(光アイソレータ)の購入に充当を予定しています。
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Research Products
(8 results)