2020 Fiscal Year Research-status Report
遺伝子発現とアミノ酸動態の解析によるD-アミノ酸誘導性タンパク質発現の解明
Project/Area Number |
20K05729
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
川上 竜巳 徳島大学, 大学院社会産業理工学研究部(生物資源産業学域), 准教授 (90380120)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 超好熱アーキア / D-アミノ酸 / アミノ酸ラセマーゼ / 遺伝子発現 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでに、超好熱アーキアPyrococcus horikoshii OT-3がD-アミノ酸資化性を示すことやPLP依存性の低基質特異性アミノ酸ラセマーゼ(BAR)を有することを明らかにしている。本菌をD-allo-Ileを用いて培養したとき、菌体内におけるBAR活性が顕著に高まることも見出しており、D-allo-IleがBAR遺伝子の発現を制御していることを示唆している。本研究ではまず、Metラセマーゼ活性を指標として、D-allo-Ileによる BAR遺伝子の発現の詳細な条件を検討した。BAR遺伝子の発現はD-allo-Ile添加1時間後には2倍に増加し、12時間後には10倍に達した。その一方で、一定量のD-allo-Ile存在下でL-Ileを共存させるとBAR発現が抑制されることも分かった。D-allo-IleによるBAR以外の発現遺伝子をスクリーニングするためRNAseq解析を行った。これまでの活性測定の結果と一致して、BAR遺伝子(PH0138)の発現が確認できたとともに、ゲノム上でクラスターを形成しているPH0137(膜タンパク質)、PH0140(転写因子様タンパク質)遺伝子も高発現していることが分かった。 また、P. horikoshiiにはPH0138を含めて4種類のGABA-AT遺伝子(PH0782、PH1423、PH1501)が存在する。既に、PH0782がAla/Serラセマーゼ(ASR)、PH1423がオルニチンアミノトランスフェラーゼ(OrnAT)であることを明らかにしている。本研究で、PH1501はMet、Leu、Pheに対してアミノ酸ラセマーゼ活性を示し、他の酵素と基質特異性が異なることを明らかにできた。各酵素の結晶化も試み、BAR、ASR、OrnATの結晶化及び構造解析に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、BAR遺伝子の発現に与えるD-allo-Ileの影響を酵素活性レベルとRNAレベルで分析する予定であった。D-allo-Ile添加培養によって、BAR遺伝子とともにPH0137、PH0140遺伝子も過剰発現することを確認できたことや、L-IleがBAR発現の抑制的な作用を示すことを明らかにできており、遺伝子発現解析は順調に進行している。BARを含めたGABA-ATホモログ酵素の機能・構造解析についても、4種類のGABA-ATホモログの酵素機能を明らかにできたこと、それらの結晶構造解析に成功していることなどから、本研究はおおむね順調に進行していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
RNAseqによる遺伝子発現解析により、D-allo-Ile添加で発現する遺伝子を同定できたので、リアルタイムPCRなどにより個別の遺伝子発現解析を進める。同定できたPH0137やPH0140を大腸菌で発現させ、タンパク質としての機能を明らかにするとともに、転写因子と予想されるPH0140に関してはD-allo-Ile有無でのDNA結合能をゲルシフトアッセイなどで確認する予定である。BAR過剰発現時の菌体内アミノ酸動態についても分析を進める予定である。 GABA-ATホモログの機能構造解析については、BAR、ASR、OrnATの基質との共結晶作成とその構造解析、アミノ酸変異体の作製による基質特異性に関わる残基の同定などを進める予定である。
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Causes of Carryover |
本年度の残額344,893円のうち、342,870円は3月に納品となり、支払いが完了していないが、4月に支払いが完了する予定である。実質的な残額は2,023円であり、この繰越金は物品費に計上し、適切に執行する。
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