2021 Fiscal Year Research-status Report
遺伝子発現とアミノ酸動態の解析によるD-アミノ酸誘導性タンパク質発現の解明
Project/Area Number |
20K05729
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
川上 竜巳 徳島大学, 大学院社会産業理工学研究部(生物資源産業学域), 准教授 (90380120)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | D-アミノ酸 / 超好熱アーキア / アミノ酸ラセマーゼ / 遺伝子発現 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでに、超好熱アーキアPyrococcus horikoshii OT-3がD-アミノ酸資化性を示すことやPLP依存性の低基質特異性アミノ酸ラセマーゼ(BAR)を有することを明らかにしている。本菌をD-allo-Ileを用いて培養したとき、菌体内におけるBAR活性が顕著に高まることも見出しており、D-allo-IleがBAR遺伝子の発現を制御していることを示唆している。昨年度までの研究で、D-allo-Ile培養によってBARが高発現していることを遺伝子レベルで明らかにすることができた。本年度はBAR遺伝子(PH0138)や膜タンパク質遺伝子(PH0137)の発現とD-allo-Ile培養条件の関係をより詳細に明らかにするため、RT-qPCRによる解析を行った。 D-allo-Ile添加時間と発現量の関係を解析した結果、PH0138とPH0137の両遺伝子とも、0.5 hの誘導時間で発現量は約8倍に増加しており、8時間後も高発現が続いていた。しかし、D-allo-IleとL-Ileを同時添加したときやD-allo-Ile添加後にL-Ile添加したときは、両遺伝子の発現は認められなかった。このことは、L-Ileが遺伝子発現の抑制に寄与していることを示唆している。一方で、両遺伝子とクラスターを形成している転写調節タンパク質遺伝子(PH0140遺伝子)の発現量に変化は認められなかった。 転写調節タンパク質が遺伝子の発現に関与していることを明らかにするため、ゲルシフトアッセイによる解析を行った結果、L-Ile存在下で転写調節領域と結合し、D-allo-Ile存在下で解離することが分かった。これらのことからL-Ile/D-allo-Ileをファクターとして、PH0140タンパク質と転写領域が相互作用することにより、遺伝子発現が調節されていることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、RT-qPCRを用いて、D-allo-Ileが BAR遺伝子の発現にどのような影響を与えるかを分析する予定であった。D-allo-Ileによる遺伝子発現とともに、L-Ileがその発現を抑制することを遺伝子レベルで明らかにできており、遺伝子発現解析は順調に進行した。さらに、転写調節タンパク質PH0140の大腸菌発現や遺伝子発現にどのように関与するかも明らかにできたことから、本研究はおおむね順調に進行していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
転写調節因子とL-Ile/D-allo-Ileとの結合には構造変化を伴うことが予想できる。既に本タンパク質の結晶を調製することには成功しているので、その構造を明らかにする。ゲルシフトアッセイを利用して、PH0140タンパク質が他のアミノ酸とも結合できないかを解析するとともに、新たな培養条件でBARを過剰発現させることで、発現制御機構の理解を進める。
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Causes of Carryover |
前年度の結果が良好で、本年度に実施予定だった支出を行う必要がなくなったため、次年度に繰り越した。 次年度分と合わせて、遺伝子発現解析や結晶構造解析の費用として使用する予定である。
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Research Products
(4 results)