2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
20K05763
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
丸山 隼人 北海道大学, 農学研究院, 助教 (10633951)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | トランスクリプトーム / リン酸輸送体 / AM菌根共生 / ミナトカモジグサ |
Outline of Annual Research Achievements |
ミナトカモジグサを供試作物として、土壌中の施肥条件をリン2処理、窒素3処理の計6処理設け、ポットに移植後40、60、80日後にサンプリングを行った。収穫したサンプルの生育と根のトランスクリプトームを調査し、各養分条件における生育期間中のリン獲得機構を遺伝子発現レベルで調査した。発現変動遺伝子の抽出および共発現ネットワーク解析を実施したところ、菌根形成特異的なリン酸輸送体の遺伝子と強く共発現をする遺伝子群が存在した。それら遺伝子はリン酸欠乏だけではなく、窒素の欠乏にも応答した発現を示しており、窒素条件が菌根形成時のリン獲得の制御機構にも強く関わることが示唆された。また、転写因子や機能未知遺伝子も多く含まれており、これら遺伝子群の中に菌根形成時のリン獲得を制御する新規機構に関わる候補遺伝子が存在している可能性がある。次に、2種類のAM菌Rhizophagus irregularis、R. clarusを接種したミナトカモジグサを栽培し、25、40日後にサンプリングした。地上部および根を収穫し、根はトランスクリプトーム解析のためにRNAの抽出を実施した。これまでに得られた結果では、生育後期40日目にはAM菌の接種効果がバイオマスとして確認され、AM菌種間の差も観察された。今後、AM菌の接種によるミナトカモジグサの生育促進と土壌中のリンの獲得能の違いを評価し、トランスクリプトームから分子機構の詳細を明らかにする予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度である本年度は、菌根形成時のリン酸獲得を制御する分子機構についての網羅的解析を実施し、候補となる遺伝子の探索を目指した。本年度はこれらについて順調に進めることができた。また、菌根形成植物体のリン獲得を制御するポットでのメッシュおよびポーラスチューブを用いた栽培系による実験も実施することができた。一方で、候補遺伝子の逆遺伝学的な解析をすすめる材料についての作成およびデータベースからの利用については進めることができておらず、次年度から早急に進める必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに得られている菌根形成時のリン獲得機構を制御する可能性が考えられるとされた候補遺伝子について、逆遺伝学的な手法を用いた表現型の調査を行う準備を実施する。具体的には、候補遺伝子のクローニング、および形質転換用ベクターの構築、および形質転換体の作出を進める。形質転換植物体がT2世代が得られ次第、表現型の確認のための栽培を実施する。同時に、これまでに得ている網羅的遺伝子発現の結果を早急にまとめ、論文として公表することを進める。さらに、現在先端ゲノム支援によるRNA-Seq解析支援を実施いただけることとなっており、菌根感染非感染の植物体および接種AM菌の違いによるリン酸獲得制御機構について、植物側だけでなく菌根菌側の遺伝子発現もあわせた解析を実施する。
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Research Products
(3 results)