2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
20K05763
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
丸山 隼人 北海道大学, 農学研究院, 助教 (10633951)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 菌根形成 / リン獲得 / トランスクリプトーム / 遺伝子共発現ネットワーク |
Outline of Annual Research Achievements |
アーバスキュラー菌根(AM)菌と共生した植物(菌根形成植物)は植物自身による直接経路とAM菌を介した菌根経路からリン酸を吸収するが、その経路の制御およびリン獲得への寄与に関しては不明である。本研究では、菌根共生機能を活用したリン資源の効率的な利用に資する分子基盤を明らかにすることを目指す。本年度は、昨年度実施した2種類のAM菌Rhizophagus irregularis(Ri区), Rhizophagus clarus(Rc区)を接種したミナトカモジグサにおける根と内生菌糸のトランスクリプトームを解析し、生育期間中における植物体とAM菌の相互作用を遺伝子発現レベルで調査した。根の遺伝子発現量に対し共発現ネットワークを実施したところ、AM菌感染に関わる遺伝子群(AMモジュール)を同定した。これらモジュールの中には、菌根形成特異的なリン酸輸送体や脂質合成・輸送関連遺伝子が含まれていた。AMモジュール中の遺伝子プロファイルはRc区とRi区でその多くが共通していたが、Alkaloid合成やCaroten合成に関わる遺伝子が特異的にRc区に多く含まれており、AM菌感染に関わる植物ホルモンの制御が異なることが示唆された。 次に、根を2つの区画に分けてミナトカモジグサを栽培し、片方の区画にAM菌 R. irregularisを3段階(0, 100, 300 spores)で接種した。20日, 27日後にサンプリングを行い、地上部および根を収穫した。20日後には接種の有無による差は確認できなかったが、27日後にはバイオマスとリン濃度が300spores接種区で顕著に改善された。今後は感染個体の非感染根と非感染個体の非感染根のトランスクリプトーム比較およびそれぞれの区画における土壌リン可溶化に関わる形質評価を実施し、菌根形成が直接経路のリン獲得能に与える影響を評価する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、昨年度に実施した菌根形成時のリン酸獲得を制御する分子機構についての網羅的解析から得た候補遺伝子の機能解析を実施することを目標としていた。しかしながら、海外からの候補遺伝子の変異体入手に時間を要し、詳細な解析を実施するまでには至らなかった。変異体は近く入手できる目処は立っており、次年度早急に進める必要がある。一方で、本年度は本科研費に関連して先端ゲノム支援によるRNA-Seq解析を実施することができ、菌根菌株の違いによるリンの獲得能の違いが分子レベルで明らかにすることができた。また、菌根形成が及ぼす影響を評価するに当たり、二次的な要因(感染することで植物体の栄養状態変化)を考慮する必要があるが、根分けによる実験系を確立することができたのは大きな進展だと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
逆遺伝学的手法をもちいた表現型の調査を早急に進める。T-DNA挿入変異体を用いてこれまでに構築した根分け栽培法により、候補遺伝子の欠損による形質評価を遺伝子発現並びに土壌中リン可給化に関わる根分泌物の調査、土壌中のリン形態分析を実施する。同時に、これまでに本研究費並びに先端ゲノム支援により実施した網羅的遺伝子発現の結果を2報の投稿論文として早急にまとめ公表する。
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Causes of Carryover |
国外からの変異体の入手に想定以上の時間がかかり、研究計画に遅れが生じたため使用できなかった分が生じた。遅れている試験は次年度早急に実施予定であり、その際に差額分を使用予定である。
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